いまだにアナログの保険証                 末光清貞 生活していく上で切っても切れない必需品の健康保険証。 幸いに諸外国と違って国民皆保険制度の日本では、国民すべてが何らかの医療保険制度に加入しており、いつでも、どこでも医療を受けることができるようになっている。 その際に絶対必要なのが健康保険証である。 その保険証は日本では身分証明書としても認められているものであるが、いまだに全くのアナログであることはご存知でしょうか。 今の健康保険証はひとりひとりのカード型になってる場合と、松山市国保などいまだに一家に一枚の旧態然の紙の保険証の場合が混在している。 一人1枚のカード型であれば持ち歩くにしても便利であるが、一家に一枚の旧型の保険証では、持ち歩くわけにはいかないし、家族の誰かが持って出ている場合など、他の家族が実施には使えないなどの不便性がある。 医療機関では初めてかかる場合はもちろんのこと、通院している場合でも毎月月初めには提出をしないといけない規則になっている。 カードといえば他に思いつくのはクレジットカード、銀行のカード、電車に乗るためのカードなど色々なカードをお持ちだと思うが、その殆どがデジタル化されており、読み込み機械に通すとか、ICカードであればピッとかざすだけで必要なデータは読み込まれるシステムになっている。 ところが今の健康保険証は、旧来型の紙の保険証はもちろんのこと、プラスチックのカード型になっている保険証でも磁気ストライプも入っていないし、まったくそういった読み取りの機能がついていない。 現実にはすべて医療機関の窓口でその記載してある小さい文字を目で読み取って氏名や生年月日、保険者番号などを手入力しているのだ。 当然そこにはミスの生じる機会も増えてしまうのが現状である。 医療機関は保険で行った医療費をレセプトといわれる請求書にして各保険者に請求事務を行う。 以前はレセプトは一枚一枚の紙の状態で提出されていたが、最近はデジタル化されつつあり、例外を除いてデジタル状態での請求を本年7月には全ての医療機関は義務化される事になっている。 ところがそのレセプトの入口であるデータの保険証がデジタル化される予定も見込も全くないのが現状なのだ。 ではどうして保険証だけがデジタル化されないのであろうか。 厚労省ではお金がかかるから、とかの説明をするが全く理由にはなっていない。 実は自民党の政権下では、年金手帳と保険証を一緒にした社会保障カードというものにする計画が進められていた。 しかし年金制度の今の混沌とした状態もあって遅遅として進まず、民主党への政権交代でこの計画は無くなってしまった。 一生で数回しか使わない年金手帳と、毎月使用する保険証といっしょにするという事自体に無理が有ったのは明白なことではあるのだが。 また日本ではいろいろな番号制度が混在しており、それらが全く連動していないのも統一した保険証ができない一因でもある。 保険証の番号、年金の番号、住民台帳の番号(住基カード)など皆番号がふられているが全く連動はしていない。 そのために年金の不記載とか不払いとかミスが生じた原因の一つでもあるのだが。 しかし国民に番号をふること自体に反対をするムードが確かにあり、いつも問題になる。 すでに番号はふられており、その番号がなければ現実には生活は成り立たないのであるが。 各医療機関では患者さんにそれぞれに独自の診察カードを発行する。 違うところにかかる度に診察カードが増えていく。 実はこれは保険証がデジタル化されていないからである。 保険証がデジタル化されれば保険証と医療機関独自のデータの突き合わせが瞬時にできるようになり、保険証一枚を持っていくだけで受診できるようになる。 1日も早く保険証のデジタル化が進むことを望んでやまない。 2010年5月記