未来の診察室
         末光清貞

 パソコンと呼ばれるコンピュータの進化には目をみはるものがあります。
これからはファミコンで育った若い世代は一人一台以上のパソコンを自由
自在にあやつり、出遅れた一世代前の人々はどんどんと取り残されていく
可能性があります。
すでに他業界ではほとんどの仕事、特に事務系ではパソコン中心の作業
に移行しています。
もっとも出遅れているのが我々医者の仕事でしょう。
この分野でも開発は進んでいますが、法的な規制を中心に、医療システム
の難しさに加えて医者のわがままなども重なり、その速度は圧倒的に遅い
ものです。 
それらを克服して、将来の我々のクリニックを想像してみましょう。
 患者さんがクリニックへやってきました。
受け付けには人はいません。
モニター画面のついた機械があります。
患者さんは持っている医療カードを挿入します。
カードには顔写真があり、IDカードでもあり、保険証でもあり、診察カードでも
あり、クレジットカード機能もついています。
「しばらくお待ちください」とのメッセージがモニターに出ます。
 呼ばれて診察室へ入ります。
ドクターの前にはモニターがあり、紙のカルテはありません。
全てのデータはコンピュータの中にあり、ドクターは以前のデータをキーボード
やマウスを使って把握します。
 問診データを入力していきます。
 ドクターの額帯鏡のライトには小型のCCDカメラが付いており、鼓膜や鼻、咽
頭内をドクターが見るのと同時にスイッチを足で押すと所見写真としてコンピュ
ータに入力されます。
ファイバーを使うときも同じで画像がコンピュータへ入ります。
レントゲンをとりましょう。
フィルムレスで、撮影と同時に画像はドクターの前のモニターに出ます。
現像する必要はありません。
画像の上に所見を書き込むこともできます。
血液検査のデータは、あらかじめインターネットを使って電子カルテの中へデー
タが入力されています。
 処置が終わって処方をドクターが入力します。
患者さんのカードを挿入して処方内容が記録されます。
一部負担金はクレジット機能で後日口座からおちます。
診療は終わり患者さんは受け付けを素通りして薬局へむかい、カードを提示して
お薬をもらいます。
 クリニックではその日の診療データが、24時間つながっているインターネットを
通じて計算センターへ自動で送られます。
月々のレセプト作成は必要ありません。
保険上のミスはその都度クリニックのコンピュータでも計算センターでもチェックさ
れます。
診療報酬の振込は2カ月後ではなくもっと早く振り込まれます。
 紹介状や医師会からのお知らせはインターネットを通して電子メールで送られ
てきます。
メールが届くとドクターの前のモニターにメール着信のお知らせが出ます。 
クリニックのスタッフはドクター以外は受け付けはゼロ。
ナースが二人、もしくは多くても三人で充分になるでしょう。
 以上のことは全て今でもまったく可能なことです。
ただ法的な規制の緩和、ドクターの頭の切り替えも必要です。
しかし少なくとも10年後には必ずこれに近い形になるはずです。
現在進みつつある医療費抑制政策に対応するには現実にはこの方法しかありません。
そのためには我々の心の準備が今必要で、是非ともパソコンの購入とインター
ネットの利用をお勧めいたします。
愛媛県医師会では医師会員専用のインターネットサーバーを運用し、会員は電話
回線料のみでインターネットが利用できます。
このシステムは医師会としては全国でも最先端です。
皆さんの電脳生活が一気に広がると思います。