あなたはパソコンで何をしますか?

           松山市医師会医療情報委員会
           委員
           末光 清貞

 この15年間にパソコンほど進歩した"道具”はないのではなかろうか。
 登場した時は単なる好き者(おたく)の趣味の対象として利用されるにすぎず、いわゆる仕事の”道具”にはなり得なかった。
ところがあっという間に機能は数千倍に上がり、逆に値段は数千分の一に下がった。
いろいろ意見はあろうがビル・ゲイツ率いるマイクロソフト社の果たした貢献は大である。
 私自身15年前にパソコンとはいかなるものか、という興味でNECのパソコンを買って、いろいろ遊んでみたが、その当時は明らかに趣味のレベルで、機械が正確に計算したり、文字を表示するだけで大いに満足したものである。
 パソコンの流れを大きく変化させたのはやはりインターネットであろう。
パソコンが手をつなぎあい、それが一気に世界中の情報が取れる、一大革命といってもいい。
ものの本には、明治維新に匹敵する文化革命である、とまで書いている。
 10数年前には既にパソコン通信といわれる分野は利用され始めており、Nifty Serveがマニアの間では話題になっていた。
私もNifty Serveの当初からの会員であるが、当時は1200ボーレートというスピードで文字情報のやり取りにわくわくしたものである。
医療に関する情報のやり取りも始まっていた。
メールの送受信もパソコン通信で既に始っていた。
 ちょうどそのころアメリカでインターネットが、それまで軍事目的だったのが民間に開放された。日本にも接続され、とりあえず各大学が接続された、との話を聞き、興味はつのるばかりであった。
愛媛大学が接続されたと聞いたのはついまだ10年ほど前である。
さっそくアカウントをいただいたが、接続する方法は唯一、Nifty Serveからテルネットでコマンドを打ち込んでメールを読むしかなかった。
まだ世の中には民間のプロバイダーも存在しなかったのである。
 次に松山大学が試験的にアカウントを発行してくれた。
今度は電話を使ってダイヤルアップできる。
ところが当時はまだMS-DOSからWindows3.1への移行時期。
Windowsで接続するにはまだまだ難しく、しぶしぶMachintoshを買い込み、初めてWWWの世界をかいま見ることになった。
これはまさに文化大革命で、世界中の情報が画面に写しだされる。
ものすごいカルチャーショックであった。
 平成7年に松山で全国医療情報システム連絡者協議会が開催されることになった。
当時担当の委員であったので企画をいろいろ考えることになった。
時あたかもインターネットの大ブレーク直前の頃である。
メインテーマをインターネットにするしかない、かつ医師会員で利用できるようにするためにはどうすればいいか、などと考えた。
四国ガンセンターの秋山先生から、四国ガンセンターと接続する方法がある、との情報もあり、あとはお金を出してくれる県医師会長にひたすらお願いするばかりだった。
そしてその年春の代議員会で何とか予算確保の了承を得たのである。
そしてその秋口には、全国ではじめて愛媛県医師会がインターネットサーバーを持つにいたる。
まだ民間プロバイダーが松山に存在する前に愛媛県医師会員は無料でインターネットが利用できるようになったのである。
 その11月にはWindows95が発売になりインターネットの大爆発につながっていったわけである。
アプリケーションといわれるソフトも続々と発売され始める。
ワープロで文章を作ってプリンターで印刷する。
年賀状を作る。
表計算で家計簿を作ったり、FAXだって手書きではなくパソコンから直接送れる。
スケジュール表を作って、アドレス帖や電話帖もパソコンで作成。
パソコンが”道具”として稼動し始めたのである。
すべてにチャレンジしてきた私として、次に考えたのは自分のインターネットサーバーを持つことであった。
電話でつないでもインターネットは非常に遅い。
自分のホームページもプロバイダーに置いていたのでは面白くない。
ちょうど月に10数万円する常時接続の専用線代をNTTがOCNエコノミーという月々3万8千円でのサービスを始めた。
さっそく飛びついてしまった。
 機器をそろえ、ソフトをそろえ、院内、自宅にLANをはりめぐらした。
本もいっぱい買い込んだ。
チャレンジはしたもののかなりな専門知識を要する。
難しい単語の羅列で、ネットワークの基礎知識、インターネット特有の諸設定。
孤軍奮闘約1週間で初めて私のサーバーから世界中へホームページが発信され、メールが送受信できたときの喜びはなんとも言いがたい快感であった。
現在パソコン6台がLANでつながれ稼動している。
 最近行ったチャレンジはパソコンを自分で組み立ててビデオ録画マシンを作成したことであった。
ビデオレコーダーの代わりにパソコンでテレビや映画の録画する方法で、初期設定には多少苦労したが、現在は順調に動いている。
これからのビデオ録画はこのようにパソコンで行ったり、DVDといわれるデジタル化が主流になる。
 次なるチャレンジは電子カルテの採用で、いろいろと考えをめぐらせている昨今である。
医療ほどパソコンの利用が遅れている分野はないのではなかろうか。
それはいろいろな規制があることやパソコンなしで仕事ができる、と思われているからである。
しかしそれは間違いで、医療においても大いに利用すべきである、と考えている。
私方のように無床で、耳鼻咽喉科という単科では診療内容も限られるので電子カルテ化し易いと考えられる。
平成13年度には保険証もカード化される(?)はずだし、レセプトも電算化されるので、一気に電子カルテ化が進むと思われる。
電子カルテになれば受付でのカルテ探しも必要なく、カルテ棚も消える。診療行為の入力も一箇所で、画像や検査データもいっしょに保存される。
レセプト作成の手間もなく、フロッピーや伝送で提出され、大いに省力化にもつながる。
パソコンのモニターを患者さんと眺めながら、マウスで操作しながらの診療風景ももうそこまで来ているのである。
 パソコンの進歩は、ハードの面ではほぼ行き着いた感があるが、これからはソフトの面で、どのように使うかが課題となる。
生活に、仕事に、あらゆる面で"道具”として入り込んでいくに違いない。
 さて、あなたはどのようにパソコンを使いますか?

2000年10月記