8月18,19,20日の3日間、「今治ジャズタウン」が繰り広げられた。昨年しまなみ海道開通イベントのひとつとして誕生した「今治ジャズタウン」、今年は今治市主催で開催された。同市出身のミュージシャンの出演が多くのが特徴だ。村上俊二(P)、長野幸雄(P)、谷本久美子(Vo)、藤元忍(Tp)、それぞれ故郷で開かれるジャズフェティバルに胸躍らせての出演だったに違いない。
皮切りは室屋町のかねと食堂でサンシップのライブ。明治30年から現在までに頑固なまでに昔のままのスタイルで続けているかねと食堂に、彼らのうなる、叫ぶ、怒るジャズが合っていた。彼らには、あくまで自分たちのジャズを表現しようとする頑固な姿勢を感じる。2つの頑固が融合していい空間が創られていた。
2日目は今治市公会堂で8グループが出演した。30分はジャズをするにはちょっと物足りない。少しずつ延びて時間が押すところだが、なんとオンタイムで終了した。これは素晴らしい。しかもリハーサルが長引いて、開演が15分ほど遅れたにもかかわらず。実行委員の方々の適切な判断、強いリード、そして出演者の協力の気持ちが感じられた。結果、つい長くなりがちなアドリブが凝縮されていいものになった。
最終日は、いよいよ「ザ・キング」の登場だ。私は司会のお手伝いを仰せつかり、舞台袖(今治公会堂)で聴いた。50年代、日本のジャズ黄金期にスターを経験したメンバーの姿はダンディーで、音は美しく艶がある。長年の演奏経験から、とろけたり、引きつけられたり、ワクワクする音のつぼを知り尽くしている人たちだ。リーダーの猪俣猛さん(Dr)が「聴いて下さっている皆さんには申し訳ないが、皆さんより演奏している私達の方が楽しんでいますと話された通り、猪俣さんにはこのメンバーと共に演奏する喜びが溢れ輝いていた。
一番の感動はコンサート最後の曲だった。猪俣さんがジャズに取りつかれることになった「シング・シング・シング」。そして、猪俣さんがカーネギーホールで演るという夢をずっと持ち続けた曲。この夢は5年前に果たされた。思いのこもった、力みなぎるドラムソロを聴いているうちに胸がジーンとしてきた。ドラムソロで泣けるなんて、今だかってあっただろうか?。ドラムソロが終わり全員の音がガッと入ってきた瞬間に、堰を切ったように涙が流れ落ちた。 |