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特集 松山耳鼻咽喉科会イネ科花粉症の知識
5月16日現在、市の住宅地域、田園地域はイネ科雑草が花盛りです。空き地・土手・路傍・畦畔、休耕地・住宅予定地etc.。特に空港のフェンス付近、中央分離帯に繁茂しています。種類は自家受精で花粉飛散の少ないイネムギが終わりに近づき、抗原性の強い花粉が多いネズミムギ、ホツムギが開葯して黄色い花粉を飛散させ始めました。犬の散歩、新学期の遠足、草刈りなどではご注意ください。
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イネ科の花粉症の症状
アレルギー性鼻炎の三主徴は、スギ花粉と同じ程度に激しいです。花粉の飛散距離がせいぜい200m程度で、スギ花粉のように長距離選手ではありませんので、よく問診すると、何か接触の機会を知ることが多いです。若い人では眼症状が強く、先行するようです。皮膚に直接触れると赤い発疹が出るときもあります。イネ科特有のするどい葉端で擦り傷を作るのが、増悪の原因かも・・・・。なお因果関係は不明ですが、外耳道の掻痒(そうよう)感を訴える方もおられます。咽頭・喉頭・気管粘膜のイガイガ感(エヘン虫感)を訴えられる患者さんもおられます(咽喉頭アレルギーを提唱される医師もおられますが、医療保険ではまだ認められません)。
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イネ科花粉症の疫学
現在、花粉症はヨーロッパでイネ科、アメリカではブタクサ(キク科)、日本ではスギ花粉が主です。最も古い記録はイネ科科花粉症で、牧草を刈り入れの時に発生するので、枯草熱(Hey Fever)、また夏に発生するので「夏かぜ」と呼ばれていましたが、19世紀の始め頃に牧草の花粉が原因と認められるようになりました。(Elliostom,1851)
我国の花粉症患者はスギ花粉症が全人口の17%程度、其の他の花粉症が10%程度と推定されています(2002・鼻アレルギー診療ガイドライン)、そのうちイネ科花粉症は8〜9%程度と言われています。
松山附近では現在カモガヤ(オーチャード・グラス)、ネズミムギ(イタリアン・ライグラス)、オソムギ(ネアール・アイグラズ)、オオアワガエリ(チモシー)etcのような牧草系の雑草がイネ科花粉症の主役を占めています。これらの植物は明治以后に牧草として輸入され、栄養価の高い牧草でしたが逸脱して野草化しました。繁殖力強く排気ガス、大気汚染に頑強に耐えて、在来種を圧迫しています。スギ花粉症と異なり、局地的な発症ですが、苦しむ患者さんは増加して来ています。
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6月になり、天候良好。松山付近では抗原性の強いホソムギ、イタリアンーライグラスの花粉が主に飛散しています。イネ科を代表するカモガヤは山間部では繁茂しているそうです。これ等、牧草系のイネ科植物は強靱で、開花期間も長く、晩春から夏にかけて刈り取っても刈り取っても再生して来ます。従って、現在、外来に駆け込む患者さんは、長期の抗原曝露によって症状が激しくなり、ステロイドの内服を必要とする例が多いです。とりわけHouse dust allergyを合併している方は鼻腔所見が一層複雑になっています。今後の治療計画の貴重な資料になるので、自分の症状経過をよく注意するように説明しています。
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前回、松山近辺で花粉症を起こすイネ科植物としてホソムギ(Perennial rye grasse)とネズミムギ(Italian rye grasse)を取り上げて来ました。恐らく実物を御覧になった方も多いと思います。両者ともにLolium属(ドクムギ属)で、ほそ長い1本の主軸に小穂が2列に配列し、非常によく似ており容易に判別出来ません。愛媛新聞社発行の「愛媛の人里野草図鑑」によると、ネズミムギでは小穂を形成する小花のそれぞれに、のぎ(ノギ)と呼ばれる棘のような物がある点が異なるのみで、またこの属は自然交配や人為交配による雑種が多く、愛媛県内には両種の雑種であるネズミホソムギが多いそうです。長田武正氏(1989)は「日本には純粋のホソムギはめったにない」と言っておられます。次回述べますように、両者の花粉抗原は全く共通しており、強い抗原性を示しています。
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イネ科花粉は共通抗原が強く、族・属・種 と分類学的に近縁関係にある程強くなります。外来臨床で、皮内テストでもCAP RASTでも、イネ科代表として使用されているのは、もっぱらカモガヤですが、松山近辺でこの時季に最も繁茂しているホソムギ(ネズミムギも含めて)との共通抗原性を知るために、イネ科花粉症患者さん22例についてカモガヤとホソムギのIGE抗体価を測定し相関係数を求めました。その結果、R =0.985 P=3.44 E-17となり、殆ど100%に近い共通抗原性を得ました。カモガヤ陽性の人はホソムギ花粉でもカモガヤ花粉と同じ程度に症状を起こす可能性がありますし、逆の場合も起こります。
参考までに、スギ花粉症の患者さん25例に、ヒノキとの相関を求めました結果は、
R =0.676 P=0.0001となり、イネ科と比較してはるかに低い共通抗原性でした。スギでは起こるがヒノキでは起こらない人が多いのは、そのためです。
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イネ科草木花粉の抗原分析
前回、ホソムギ(イタリアン・ライスグラスも含めて)とカモガヤのIGE抗体につき臨床例を挙げました。このIGE抗体に対する種々のイネ科花粉抗原については多くの分析が報告されています。特にホソムギの抗原(アレルゲン)につき、我が国では詳細な分析がおこなはれ、臨床応用されています。
 表は信太隆先生の論文「アレルゲンを識る。カモガヤ(イネ科草木)鼻アレルギー・フロンティア・Vol,2.No,4.2002.10によるものですが、これら抗原の類似分子は、カモガヤ、オオアワガエリ、ナガバグサ、etc、さらにギョウギシバ等にも存在し、強い免疫学的交差性を持っている事が知られております。特に、グループ(Lol p1)、グループ(Lol p2)は重要なMajor Allerginとされており、その強い交差性のために、唯1種のカモガヤ花粉だけで、イネ科花粉症患者の90%以上が診断され、カモガヤ花粉がイネ科代表になっているようです。
WHO名 一般名 分子量(kD)
Lol p 1 grass group T 27〜35
Lol p 2    −    U 11
Lol p 3    −    V 11
Lol p 4    −    W 57
Lol p 5    −    X 25〜30
Lol p 9    −    \ 31〜35
Lol p10 チトクロームC 12
Lol p11 大豆トリプシンインヒビター 16
  プロフィリン 15
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