2007 蒲谷敏彦CHINA REPOR 
蒲谷敏彦
(ぶたに・としひこ)

 今年4月から3度目の海外勤務。中国蘇州に赴任したビシネスマンの中国レポート。駐在員ならではの現地レポート。
松山では、MPRO、シンシアに乗るヨットマン



蘇州 Map


中国 Map


 

CHINA REPORT (2007年号)
        ―― 太湖に浸かる ――

 

 残暑お見舞い申し上げます。

今年の夏は中国でも日本でもとんでもなく暑いですね。日本は史上最高の40℃超えを数日続けているとか。ここ、蘇州では35℃を超える猛暑日は2ヶ月くらい続くので珍しくもないのですが、40℃を超えるとさすがに堪えます。江蘇省では40℃を超えると会社は休まないといけない規則があるそうで、かといって毎日休むと中国の経済活動が停まるので、公式発表では39.2℃などと微妙なところで寒暖計の読みのほうがとまったりします。ということで、蘇州では40℃を建て前上は超えてはいませんが、体感温度は充分40代の毎日です。ですから北極海の氷まで異常に溶ける地球温暖化も納得です。

 

さて、またまたご無沙汰しています。月刊CHINA REPORTのはずが、かれこれ年刊CHINA REPORTになっていますので、今回は2007年号にしてみました。2005年号では、当社の若い社員と一緒に太湖に行って反日デモの向こうを張って石投げをし、2006年号では、太湖の畔のマリーナでサッカーW杯の向こうを張って国際ドラゴンボートレースを観戦しました。3年目の今年はあまりの暑さに、禁断の海水浴に行ってみました。

中国で海水浴なら、大連か青島。来年の北京オリンピックのヨット競技会場は青島なので、今行くなら青島。でも、刺身やお鮨は大連に限る。そんなことを考えていたら、夏も終わり。

『蒲谷さん、スイミングは強いですか?』

当社の購買担当の羅君が週末に泳ぎに行こうと誘ってくれました。もちろん、大連でも青島でもないよね。どこのプール?

 

バスを乗り継いで2時間かかるという遊泳場は、昨年ドラゴンレースが開催されたマーキュリーマリーナの次のバス停(小木橋駅)にありました。太湖のほとりに60m*20mほどの池を掘って遊泳場にしてあります。その名も『太湖夏威夷』です。

『夏威夷ってなあに?』

『夏威夷(シャーウイー)って、アメリカの島ですよ。太平洋の真ん中にあるでしょう。常夏のほら!』

『それって、ハワイのこと!』

 

蘇州市のお隣の無錫市では今夏の初め雨不足で異常渇水になり、太湖の水位が下がってアオコが異常発生。そこへもって湖畔の工場群から汚染された排水が流れ込んで、太湖を源泉とする水道水は完全に飲めなくなりました。住民はスーパーにミネラルウォーターを買いに走ったのでした。その後大雨が降ったり、無錫市政府は湖水の汚染対策に周辺の工場を急遽操業停止にしたりしましたが、いっこうに湖水がきれいになったとは聞きません。太湖は琵琶湖の3倍の広さで中国第3位の大きさなので、無錫市側の水は汚いけど蘇州市側(の源泉も太湖)は比較的きれいな水で水道水も飲めるというのですけど・・・

 

一人40元(約600円)の入場料を払って太湖ハワイに入ると、そこは常夏の楽園。黒い砂浜、脱衣場、真水シャワー、ビーチパラソルや日よけの大きなテントまであって、なかなか海の家以上の設備です。遊泳場にはビニールでできたシーソーや丸木渡りやらクライミング用の氷山、バナナボートまで準備しています。子供連れの家族(おじいちゃん、おばあちゃんまで一緒)、アベックや若者のグループが思い思いに水遊びを楽しんでいます。

 

中国の人は泳げない人が多いとはほんとうのようで、クロールや平泳ぎで真剣に泳いでいる人がいません。そのかわりにみんなライフジャケットを着て水に入っています。確かに浮き輪で泳ぐより実用的で間違いないんですが、きれいな妙齢のお嬢さんがビキニにオレンジ色のライフジャケットでは、せっかくのスタイルが惜しいと思うのですが。岸辺にはライフセーバーのお兄さんまで控えています。赤黒く焼けた肌、精悍な半裸の体つき。偏見ではないのですが、悲しいかなどうみても日雇いの労働者にしか見えません。やはりハワイと夏威夷(シャーウイー)の違いでしょうか。

早速、水着に着替えた羅君は水に飛び込んでゆきました。彼の田舎は山奥ですが、夏になると渓谷の急流で毎日泳いでいたそうです。この太湖ハワイで数少ない泳者です。あとで聞いたところでは、水泳場の一番深いところでは3mくらいだったそうです。(実際に潜ってみたとか) 私は念のため水に入る前に遊泳場の周りを一巡りしてみました。湖水と連結している葦が生い茂る風下側は、よく見ると風のためでもなく、白い泡がたっています。なぜか洗濯機の排水が集まっているように見えます。小さい魚や大きな魚が泳いでいるのが見えますから、死ぬほどではないでしょうが幼少の頃から泳ぐといえば、カルキの効いたプールか、海、そうでなければきれいな透き通った川で育った小心者の私は、ビキニのお姉さんの近くで膝まで浸かるのが精一杯でした。トホホ

 

それでも、これは世界中どこでも同じ真夏の太陽をわずかに遮るビーチパラソルの下で、水着にライフジャケットの若い男女や子供たちの嬌声を聞いていると海水浴気分も盛り上がってきます。灼熱の太陽が西に少し傾く頃、羅君が注文してくれた炭火焼のえびや牛肉やかぼちゃや芋のバーベキューで缶ビールを傾けると、先ほど見た白く泡立つ太湖の汚水も夏の夜のビールの泡に代わってゆくのでした。

 

まだまだ暑い日が続きますが、どなた様もお元気で。CHINA REPORTはまた来月(来年)のこころです。

 

                    蘇州より 蒲谷敏彦でした。


第8回:

 
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