−−−KOREA REPORT（師走号）−−−
−‐‐ 安定と変革 −‐‐
お寒うございます。
韓国は本格的な冬を迎え、先週は一日中氷点下という
真冬日が続きましたが、今週になって寒さも
少し緩んで＋にもなりました。
２００２年の年の瀬皆様いかがお過ごしでしょうか？
今年もいろいろありましたが、押し迫った韓国では５年に一度の
大選挙、大統領選挙の投票、即日開票がありました。
投票のために１２月１９日（木）韓国はお休みでした。
中田英寿が世界選抜チームでシュートを蹴り損ねた、
レアルマドリード（１２月３日に横浜で行われたトヨタカップで
パラグアイのオリンピアを２−０で破って世界一になった
スペインのクラブチーム）創立１００周年記念サッカー試合
の様子をBSの録画放送で見ていたら、
後半から韓国代表だったチャ・ドリ選手がピッチに入ってきました。
アジアからの世界選抜チームへの参加は２人だけだそうです。
２００２年W杯をつい思い出してしまいました。
12月のソウル市庁前はろうそく反米集会（中央日報より）
W杯といえば、ソウル市庁前の赤い街頭応援がまだ記憶に
新しいのですが、先週の土曜日には手に手にロウソクを
持った数万の人々が夕方から集まってきました。
今年６月に友人の誕生日会に出席するために歩いていた
女子中学生２人が米軍の装甲車に轢かれて死亡し、米軍の
運転者らが軍事法廷で無罪になったことに
抗議する史上最大の反米集会が行われたのです。
１２月の市庁前は赤Ｔシャツではなく、冬の夜にきらめくロウソクの
灯火で覆われたのでした。この集会はインターネットで呼びかけられた
若者が中心で、大統領選挙にも少なからず影響を与えたようです。
映画００７『ダイ・アナザーデイ』の記事（中央日報）
北朝鮮が核開発の再開を宣言したと思ったら、今度はハリウッド
映画にクレームをつけてきました。
００７シリーズの最新作『ダイ・アナザーデイ』は北朝鮮人らしき軍人が
悪役で、大量破壊兵器を巡ってジェームス・ボンドと争うんですね。
北朝鮮はアメリカの悪の枢軸発言の映画版だと、上映禁止を訴えた
訳です。韓国でもこの映画を観ない運動が始まっています。
悪役の着ている軍服が一部韓国軍のものと似ているとか、韓国のことは
何も出てこないとか、いろいろ韓国人の感情を逆撫でしたようです。
ＫＣＩＡでも出てきて、ボンドと一緒に活躍するとか、ボンド・ガールが
韓国美女だったらと、私は思うんですがどうでしょう？
ともあれ、北朝鮮・米国との関係は今回の大統領選挙の大きな
ポイントでした。
ＢＳ・NHKでレアルマドリードＶＳ世界選抜が３−３で引き分けたあと、
韓国大統領選挙特集をしています。
与党の盧武鉉（ノ・ムヒョン）候補は、釜山の農村生まれの５７歳で
人権派の弁護士出身です。一方事実上の一騎打ちの相手、野党の李会昌
（イ・フェチャン）候補は中部出身の６７歳、最高裁判事や首相経験者
で、前回大統領選挙で金大中氏に僅差で敗れての再挑戦です。
経験豊富、実績と安定の李会昌か、誠実、若さと変革の盧武鉉か？
与野党対決というより世代対決といわれ、５０代・６０代は
李会昌氏支持、２０代・３０代は盧武鉉氏支持で、４０代は
迷える世代だということです。
大統領選挙立候補者は７人でしたが、投票日前日に１人は辞退しました。
立候補するには、５億Ｗ（約５千万円）を預託金として出さなければなら
ないそうで、得票率が２％未満だと返ってこないんだそうです。
３番人気の候補がこの２％を超えるかどうかが、興味の対象でも
ありました。
『誰に投票しますか？ １番(イルボン）？ ２番(イーボン）？』
（候補者は１番から７番まで番号がついています。）
投票日の前日、アルタン（明太子の辛子鍋）で昼食を取りながら
個人的に事前調査してみました。
（韓国では選挙運動中はマスコミがこの手のアンケートなどの
調査結果を公表することが禁じられています。
噂では１番と２番の競い合いのようですが。）
『１番李会昌（イ・フェチャン）です』
生産部の羅次長も資材部の柳次長も工場長の南理事も
そう答えてくれました。
『誰に投票しますか？ １番？ ２番？』
夕食にしゃぶしゃぶを食べながらまた尋ねてみました。
『２番盧武鉉（ノ・ムヒョン）です』
業務推進部の文代理も、当社の電算システム開発をしている
韓国フジツーの盧課長も申次長もそう答えてくれました。
飲み屋のお姉さんにも聞いてみましたが、盧武鉉氏でした。
若い人たちは盧武鉉派というのは本当のようで、
オジ調査でも判り易い構図が浮かび上がってきました。
投票日は朝６時から投票所（日本のように小学校や中学校だけ
でなく、銀行の地下室やアパートの管理棟などいろいろです。）
に行ってそれから遊びに行こうと、皆思うようで朝が一番混雑するそうです。
早朝の行列を嫌って、遊びに行った後に帰ってきて投票しようと思ったら
午後６時の投票締め切り時間に遅れたということも多々あるようです。
それでも投票率は前回まで８０％強、今回も悪いとは言っても７０％。
どこかの国に比べて、韓国国民の選挙意識は非常に高いようです。
投票所では住民登録証と選挙台帳とを照合して、投票用紙を渡されます。
投票用紙には候補者の名前と四角い枠があって、記載台にある竹で
できた丸印に朱印をつけて、選択した候補者の枠内に印を付けます。
もちろん２人に印を付けると無効です。投票箱に折りたたんで入れるときに
朱印が折った方についても無効になるそうで、折りたたみ方にも
ノウハウがありそうです。
日本では名前を鉛筆で書くんだと言ったら、名前間違えたりしませんか？
と不思議がってました。自分の名前を書いたりするともちろん無効だと
言ったら、韓国では自分の名前を書いて印を付けたことが判ると、
逮捕されるそうです。
午後７時から開票が始まりましたが、予想通りの大接戦で当初は
李会昌候補が一歩リードしていましたが、午後８時頃逆転し午後
１０時には早々と盧武鉉候補に当確がでました。
安定の李会昌氏より変革の盧武鉉氏が頭ひとつリードしたようです。
盧武鉉氏の選挙公約の中に首都移転があります。
政治・経済・教育何でも一点集中しているソウルは経済の中心として、
政治の中心は大田にするというわけです。
ニューヨークとワシントン、オークランドとウェリントンなど
世界には中心都市と首都が分離されている例が多いのですが、
何でも大きくて一番が大好きな韓国人が変われるのでしょうか？
変われるかといえば、当社天安工場の創立２０周年記念樹
が夏の姿から、この冬にはきれいなクリスマスのデコレーション
とイルミミネーションを身に纏い、ロマンティックに変身をして
いる姿をみながら、来年からの新しい韓国に思いを馳せるのでした。
天安工場のクリスマス・ツリー
さて、今年のKOREA REPORTはこれ以上の大事件が無ければ、
終わりにします。また来年お話しましょう。
世界的な師走の中、皆様お体大切に。
セーヘ ポン マニ パドゥセヨ
（良いお年をお迎えください。）
ソウルより 蒲谷敏彦
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