蒲谷敏彦KOREA REPORT  新春特大号

KOREA REPORT (初春特大号・ソウルな女性達合併号)

――― サトミ&セリナ ―――

 

今年の旧正月は2月1日。日本のテレビ放送50周年記念日と一緒らしい。あらためて、明けましておめでとうございます。本年もKOREA REPORTよろしくお願い致します。読者の皆様と世界中の人々の健康で平穏な生活をお祈り致します。

 

 さて、近くの床屋に行って今年初めて髪をカットした後、薬局で風邪薬を買って来ました。こちらは医薬分業が早くから進んでおり、少しの病気なら皆薬屋さんで治します。白衣を着た薬剤師の先生が居て、

『どんな症状ですか?』

『喉(モク)が痛くて、咳(キッチム)がでます。熱は少しです。』

『鼻水(コッムル)はどうですか?』

『少し(チョックン)です。』

咳止め、解熱剤、鎮痛剤、3種類の錠剤をくれました。2tabs*3timesなどと箱に直接書いてくれます。

 


エメラルドグリーンのが咳止め、水色は解熱剤

白いのは鎮痛剤(なんか米国っぽいが全て韓国製)

 

これで7500W(約750円)。安くて親切で簡便でいいんだけど、この薬が日本人には、というか私には強烈で咳はすぐ止まるけど、頭がフラフラしだすという代物でよほど症状が重くならないと薬局に寄りません。ということで今年は1月3日の大雪から喉が痛くて咳が止まらず、とうとう薬屋さんのご厄介になることを決めたのでした。

 

アパートの集合郵便受けに年賀状が今日も沢山届いていました。今年の郵便事情は例年になく悪くて、クリスマス頃ソウルから出した年賀状が正月7日につくような状況でした。日本からの年賀状は最速が1229日に到着して、最も沢山着いたのはやはり7日くらいでした。中には《転居先不明で配達できません》と《GONE AWAY》の判子を押されてソウルに戻ってきたものもありました。はるばるソウル〜松山〜ソウルを往復20日かけて帰って来た葉書に、声をかけてやりたいような妙ないじらしさを感じるのでした。

主要な日本の都市にでたらめな住所を書いて、どのくらい返ってくるか?試してみようかとも思いましたが、まじめな郵便屋さんを試すようなことはしない方がいいですね。(因みに日本から世界中葉書は70円、ソウルからは350W(35)です)

 

先週雪が積もっている天安工場に行くと、工場長の南理事(ナム・イーサ)がメガネを鼻に落してスプレー缶を矯めつ眇めつ見ています。

『なんですか?それ』

『雪道で便利だというんだが』

どうも雪道で車がスタックしたとき、チェーンを履かすのも面倒だしでも滑って動かない! というときにこれを良く振ってタイヤにスプレー一吹き、あーら不思議タイヤにネバネバした糊が着いて滑らなくなるという優れもののようです。

 


ずばりスプレー・チェーン

 

『効くんですか』

『まだ買ったばかりだから試してないけど、時速10キロまでと書いてあるな』

こんなものあったらいいなぁを実現する韓国製商品をよく見てきたけど、このごきぶりホイホイの逆・車バージョン(商品名は、ずばりスプレー・チェーン)売れているのか? 製造物責任(PL)法が厳しくなった韓国では、これも2WPL保険に入っているとまで缶に書いてあるのだが、私は試してみたくないものです。世界的な化学メーカー(赤いバッファローが目印)だから日本でも絶対売っていると南理事は言っていますが、誰か日本で見た人、買った人、試してみた人いますか?

 

イラクも心配だけど、お隣の北朝鮮はもっと心配。去年の釜山アジア大会の友好関係(美女応援団の笑顔)はどこに吹っ飛んだのか? 正月早々次から次へと危険なカードを切ってくる北朝鮮に、米国も韓国も日本も目を白黒させているような状態です。日本人の奥様が多いこの二村洞界隈の井戸端会議では、

『どちらに落ちると思います?』

『北朝鮮のミサイルは命中精度悪いというから、隣の米軍基地狙ったのがシンドア・スーパーに落ちるんじゃないかしら』

『だったら、奥様のアパートも危ないじゃない!』

なんて話題で持ちきりらしい。

 

そんな心配の中、先月のクリスマスに警戒厳重な隣の米軍基地におじゃましました。基地内のクリスマス・イルミネーションがそれは綺麗だというので、神戸のルミナリエほどでもないだろうと思いながら、知人の米軍家族のご招待で出かけてきました。サトミさんは米軍士官とご結婚されて10年目です。8歳になるセリナちゃんと5歳のケント君がいます。沖縄出身のサトミさんは東京でOLとして働いた後、Uターンした沖縄で彼と出会いました。米軍基地は、ルイジアナ、エルパソ、ワシントン州、沖縄、そしてソウルと五つ目です。(米軍さんも転勤?が多いですね)

 


サトミ&セリナ IN ドラゴンヒルズ・ホテル

 

旦那さんはミシガン生まれのドイツ系米国人(私と同い年らしい)で沖縄ソバと寿司が好きで、たばこも酒もしないそうです。酒が無いと何も始まらない韓国でのお付き合いが大変だろうなぁと変な心配も、米軍基地内には病院、学校(小中高とあるらしい)はもちろんのこと、教会、ホテル、映画館、スーパー、ボーリング場、プール、ゴルフの打ちっぱなしまであるそうでノー・プロブレムです。(ハンバーガー屋はマックでなくてバーガーキングでした。どうして?)だから戦争になっても外に出ないで生活できるようになっています。

 

綺麗なイルミネーションが消防署やアメフト・グラウンドの前を飾っています。スティーブン・スピルバーグの『未知との遭遇』に出てくるようなアメリカの田舎町を彷彿とさせる夜景です。先日の反米デモ以来、米兵が盛り場で韓国人に殴られたり!なんかする事故もあり、外出自粛状態だそうですが、でもまあ基地内で最低限のそれもかなり上等な生活は保障されている訳でやはり、米軍恐るべしですね。(サトミさんによれば、世界中の米軍基地もこんなものらしい)

 

10階建てのドラゴンヒルズ (龍山)・ホテルは米国東海岸風の洒落たホテルで、ツリーやサンタの置物のクリスマス・デコレーションもなかなかです。メキシコ料理店『オアシス』でNYステーキを食べてメキシカンビールを飲んで、これで韓国語が聞こえなければ、全くアメリカ本土と言っていいでしょう。(でも韓国人家族がお誕生日パーティーをしていてハングルがウルサイ、ウルサイ)

 

サトミさんのお家にGMのワゴン車で向かいます。

『あれが将軍の家、大きいでしょう』

運転しながらご主人が説明してくれますが、この基地に何人くらい住んでいらっしゃるんですか?の私の素朴な質問には、

『アイ ドント ノウ。ノット ソー メニー(判らない。そう多くない)』

とすげないお返事です。在韓米陸軍将官お付きの士官の筈ですから、知らない訳は無いのですが、そこからしてもう軍事機密なんですね。英語でなくても話しづらいことこの上ない。

 

サトミさんご家族とは、沖縄〜ソウル便の飛行機の中で知り合いました。私達は夏休みの沖縄でのヨットレースの帰り、サトミさんご家族は沖縄基地からソウル基地への転勤でした。引越し荷物は夏も終わり、秋も深い頃やっと到着してコートが必要な時期にTシャツで過ごしてたと、サトミさんが事もなげに話していました。(この辺は米軍もいい加減らしい)

 

お家は3LDKのフラットです。玄関にも綺麗なイルミネーションが飾ってあります。リビングにはクリスマスツリー。米国製の白木の家具が立派です。早速セリナちゃんとケント君は、米軍有線放送の日本のTVマンガを見ています。お父さんとは英語でお母さんとは沖縄弁で自然に話す、セリナちゃんは日本に住めば日本語、米国に住めば英語が自然に出てくると思っていたらしく、ここ韓国ではどうして自然に韓国語が出てこないのか? どうもそんな簡単なことではないと少し大人になったようです。(おじさんも苦労してるよ。世界中どこでも簡単に自然に話せるといいよね。)

 

米国男性はレディーファーストで優しいとはいうけど、今日は特別優しいのね、いつもこうだと良いのに とサトミさんがいちいち車のドアを開けてくれる旦那さんに冗談言ってます。今日はスペシャルディですよねと私が言うと、ご主人が右手の親指を起ててのご返事です。米国の基地では皆英語で話しかけて来るけど、こちらではサトミさんの顔を見ると韓国人は当然の如く、ハングルでまくし立ててくるらしく、韓国語の全く判らないサトミさんはパニックになるそうです。

 

在韓米軍の東洋人妻はもちろん韓国人女性が多いわけで、結婚するとご主人の預金、カード、車などの財産は全て妻の名義に換えさせる(もちろん韓国人妻が)そうで、旦那がいつ死んでも大丈夫なようにしておくんだそうです。しっかり現実主義な韓国女性に比べて、サトミさんはおしとやかな日本人妻で通しています。毎月ご主人から生活費を貰うので、未だにご主人の給料がいくらか知らないそうです。

 

セリナちゃんと一緒に韓国語が判らないでパニックになるくらいの世界平和(少なくとも朝鮮半島だけでも...)が続いていつまでもご主人とお幸せで、ご主人の給料を知らないままでいて下さい。サトミさんはソウル基地駐在早々、家族で防毒マスクの装着訓練もさせられたそうで、もしかの有事の際には蒲谷家も助けて下さいねと勝手に期待しながら、小銃構えた韓国兵士が警戒している米軍基地第17ゲートを後にしたのでした。

 

2003年のKOREA REPORTはこんな風にスタートしました。

こうして書いている間に、2週間も続いていた咳も喉の痛みもすっかり退きました。恐るべし韓国製風邪薬。でも咳止め、解熱剤、鎮痛剤で治すのは対処療法そのものですよね。風邪の根本的な治療になっていません。同じように対処療法を続けている、しそうでしない北朝鮮の崩壊は近いのか?などいろいろ考えていると、薬の影響か頭がボーっとしてきましたので、今月はここまで。

風邪から完全回復する?来月またお話しましょう。

 

                    ソウルより 蒲谷敏彦

 

おまけ1;OREAの表示は、OREAもあるの?

という素朴な疑問を昨年残したままでしたね。

北朝鮮は日帝時代に日本が勝手にKOREAにしたんで、本来はCOREAだったとか言っているそうです。

各国の辞書で調べてみると、米国(英国)とドイツはOREAで、OREAはイタリアとスペイン、フランスはCOREE、ロシアはKOPER(Rは裏返し)でした。だからどうなんだと言われても困りますが、そういうことです。

なので、蒲谷のKOREA REPORTもOREA REPORTにしようかとも思いましたが、面倒なので止めました。

これまで通り、KOREA REPORTでよろしくお願いします。

 

おまけ2;ニュージーランドのハウラキ湾で開催されている、ルイビィトン・カップ(アメリカズ・カップ挑戦艇決定戦)もアリンギの快勝(5−1)で終わりました。最終レース第6戦は第1下マークまではオラクルBMBが勝っていたんですが、第2上マークまでの上りで逆転され、最終の下行航では抜きつ抜かれつの大接戦でした。しかし、ピーター・ホルムベルグにラット()を任せ、自らはランニング・バックステーを引いていたクリス・ディクソン艇長の野望は、スピン・セールの破れと共に潰えたのでした。

さあ、来月はいよいよアメリカズ・カップ本戦 チーム・ニュージー(NZ) VSアリンギ(スイス)です。楽しみですね。出来たら実況中継します。お楽しみに。

 

  

最初は勝っていたオラクル      第2上マークで抜かれたオラクル

 

   
最終レグで破れたオラクル()のセール カップ(左上)を獲って喜ぶアリンギチーム


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