蒲谷敏彦KOREA REPORT 3月号  

KOREA REPORT (3月号)

――― 韓国の大統領たち ―――

 

 3月になりました。日本では桜前線が話題になる頃でしょうか。

韓国では、これから黄色いレンギョウ(韓国語でケナリ)の花が南から咲き上がってきます。

先日の新聞にレンギョウ前線の記事が載っていました。

今年は昨年より4〜5日遅いそうで、ソウルの開花は325日位だそうです。

日本では昨年、桜が予想を上回る早さで咲き乱れ各地の桜祭りの日程が大混乱だったそうですが、今年はどうでしょうね。

 

開花時期

ケナリ(レンギョウ)の開花時期(中央日報)

 

 地下鉄4号線と2号線は、ドアの右の座席下に非常コックがあるよう。6号線はドアの上のカバーに手動コックが隠れてる?

地下鉄に乗ると、先月の大邱(テグウ)での地下鉄火災事故をどうしても思い起こします。放火が原因ですが、放火された車両の反対車線に進入してきた列車は、運行管理の不手際や運転手の判断ミスで車両のドアが開かれずに、車両内装が燃焼し易い材質であったことも災いして200名近い乗客が犠牲になったようです。友達の誕生日会に遅れると携帯電話で最後のメールをうった小学生。初めてのアルバイト料で母親にプレゼントを買おうと出かけた女子学生は、最後までその財布を握り締めていたそうです。

亡くなる間際に携帯電話で助けを呼ぶ声、肉親に最後の挨拶をしたなど悲しい話がいくつも報道されました。

 

『いつも韓国は世界の悪い見本になります。恥ずかしいことです』

当社の文常務は橋が落ちたり、デパートが崩壊する度に世界がビックリして、自国の点検(特に日本が)を始めるのを聞いて残念そうに言われます。

今日は日本の新幹線が居眠り運転で8分間走ったと、大きくこちらの新聞に載っていましたが...

大邱の地下鉄はもうガラガラで皆怖がって乗らないそうですが、ソウルの地下鉄は対岸の火事ということか、いつも満員です。

 

 先月の大きな話題といえばもうひとつ、第16代盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の就任式が225日にありました。日本からは小泉首相を始め元首相などお歴々が大勢いらっしゃいましたが、同日珍しいお客様が東京から来られました。

Y夫人は48歳の兎年にご主人と共にソール(Y夫人はソウルではなく、ソールと書かれますので原文に忠実に...)駐在となられ、72歳の兎年で永久帰国されるまで24年間を韓国で過ごされました。ご主人は、暗殺された朴正熙大統領の葬儀にも出席され、夫人はそれをテレビで観ておられたそうです。そのあと、大統領は崔圭夏、全斗煥、盧泰愚、金泳三と変わり、金大中大統領のときに帰国されたのでした。

6人の歴代韓国大統領を体感された数少ない駐在日本人かと思います。

 

韓国の大統領については次の書籍が詳しく、また面白く読めます。

1948年の独立以来半世紀、韓国の大統領は、金大中大統領を含め八人が歴任した。国土が分断され、東西対立の狭間におかれた韓国の大統領ほど、はげしい有為転変にさらされ、栄光と悲惨の落差が極端な職はない。

歴代八人の大統領のうち、一人は(朴正熙(パクジョンヒ))は暗殺され、三人((李承晩(イスンマン)、尹?善(ユンボスン)、崔圭夏(チェギュハ))は任期途中で下野した。二人(全斗煥(ジョンドファン)、盧泰愚(ノテウ))は退任後、不正蓄財で入獄した。もう一人の大統領(金泳三(キムヨンサン))は在任中、息子が斡旋収賄と脱税容疑で逮捕される恥辱を味わった。金大中大統領も息子が不正な金銭授受に関連して収監され、退任後きびしい批判にさらされるのは必至だ。

――― 韓国大統領列伝  池東旭著  中央新書 ――― 』

 

韓国大統領への後年の国民的評価は厳しく、金大中氏はノーベル平和賞を受賞したが、それは北朝鮮への5億ドルにも上るお金と引き換えで獲ったものだと、小学生でも知っているほどになりました。

 

大統領就任記念の太極旗(テグキ)が街路を飾る骨董街の仁寺洞(インサドン)で韓国伝統茶を飲みながら、韓国駐在の昔話をお伺いしました。ご主人は深夜タクシーでご自宅に帰られる時は、自宅よりかなり手前の街路灯のところで降ろしてもらっていたとか(外国人アパートまで行くと、外国人ということでぼられる? 街路灯の明るいところで金の受け渡しをしないとごまかされる? そんな時代だったんですね)、Y夫人は韓国アジュマ(おばさん)と大喧嘩(若いお嬢さんのレオタード姿をカメラで撮ったら、そんな女性の裸を撮影したらダメ、どこが裸ですか? フィルムを出せ!出さない!と。この当時は街中、地下鉄構内、南山からの眺望、港湾施設などあちこち撮影禁止区域があり、不用意に撮影するとフィルムを出せということが多くあったらしいが、個人にそんな権限はないと、最後は日本人と韓国人の問題にまで発展してもめたそう。そんな時代だったんですね)したこととか。

今ソールご在住なら絶対、『ソウルな女性達第5話』なんだけど...残念。


韓国伝統茶 左奥;松の実茶、右奥;生姜茶

左手前;ナツメ茶、右手前;梅の実茶

 

『どの大統領がお好きでしたか?』

なんかバカな質問ですけど、Y夫人はまじめにお答えになりました。

『やっぱり、金大中かしらね』

『どんなところがですか?』

『拉致事件や死刑宣告もあって、何度も死ぬような目にあって、それでもとうとう大統領になっちゃったんだから。エライよね』

『そうですね』

『それに一番日本人に近いんじゃないかしら、考え方が。だから好き』

 

韓国人に同じ質問をすると、8割方は朴正熙になるらしい。高速道路や浦項製鉄など今の韓国の基礎を築いた人で、悪い事もしたけど良いことも一杯したということのよう。日本でいえば田中角栄か? 今思えば、元気があっていい時代だったなぁというノスタルジーと共に神話になっている。

新大統領就任を祝う当日の新聞広告(中央日報)

 

 新大統領に就任した盧武鉉氏も美しきバカと言われながら、対立政党の地盤の釜山から立候補しつづけ3度落選したといいます。そして、今回も不利な予想を覆して9人目の大統領になったのでした。『平和と繁栄と跳躍の時代』を目指す、盧武鉉新大統領の韓国はどうなってゆき、そして5年の任期が終わる2008年、彼はどんな評価をうけるのだろうか? 私は、金泳三、金大中、盧武鉉、そしてその次の大統領? それぞれにどんな感想を持つのだろうか? 

その頃KOREA REPORTが続いていれば、ぜひ書いてみたいものです。

それでは今回のKOREA REPORTはここまで。

また次回、お話しましょう。

              ソウルより 蒲谷敏彦

 

 

おまけ;ニュージーランドでのアメリカズ・カップ本戦は、スイスのアリンギの5連勝で幕を閉じました。しかし、観光客や観戦者がずっとオークランドにいるようにと()レース予定の第9戦までの日程を全て使い切りました。無風、微風、強風、嵐でレース延期を繰り返し、意図的にカップがNZを離れるのを出来る限り延ばしたように思えたほどでした。

 

おかげで、せっかくスターTVのライブでテレビ観戦できるはずだった私達は、延期、延期、延期で充分楽しむどころか、ずいぶん白けてしまいました。テレビ会社も番組のやりくりにずいぶん苦労したようで、前レースの再放送ばかり放映していました。昨日は最終戦だというのにライブ放送もありませんでした。こんなことしてたら、アメリカズ・カップ自体の人気も落ちちゃいますよね。

   

第5戦のスーパースタート   上マークへ向かう2艇    21秒差で追うチームNZ

  

何を考えるディーン艇長   功成り名を上げたバタワース   歓喜のフィニッシュ 


  
喜びに沸くハーバー      見つめ合う二人の艇長     銀の水差しはヨーロッパへ



 第1戦は強風下ブーム(帆桁)を折り、おまけにヘッドセール(前帆)のタック(取り付け具)が飛んでリタイア。第2戦は勝ちそうだったのに逆転されて負け。第3戦はいいところなく。第4戦はまたまた強風下マスト(帆柱)が折れてリタイア。最終戦もいいところなく、おまけにスピンポール(風下航用帆桁)まで折れて45秒差であっさり負け。

艇のスピードはチーム・ニュージーの方があるという専門家の話もあるようですが、そうなると乗り手の差ということなんでしょうか?

 

私が考える敗因は、1)風上航での上り角度が悪い 2)強風での艇の強度がない(走りも悪い) 3)タクティクス(戦術)が相手より劣っていた 4)スタート技術も相手より劣っていた 5)下マーク回航がヘタ というところでしょうか。どこかの学生ヨット部の反省会みたいですみません。海の上の戦いはほんの一部で、これまでに隠された大プロジェクトXの汗と涙の物語があったんでしょうね。それにしても、ルールの裏をかいたフラーという潜水艦の外郭のような2重船底での艇速UPぐらいでは、やっぱり乗り手の差をカバーできなかったみたいですね。

 

と、少しチーム・ニュージーの肩を持つような書き方をしたのは、オークランドにまた行きたかったからでした。(原則アメリカズ・カップ大会の開催は優勝国で行われるので次回はスイスのはずなんですが、レマン湖という安易な予想を覆して、地中海とかフランス海岸とかの選択肢もあるそうです。)3年前の前回大会訪問時にはオークランドのハーバーサイドのマンションやアパートがまだ工事中でしたが、今回はすっかり完成していて家内は一度でいいから住んでみたいと言っていました。これから値下がりするでしょうか? 

(俗な話でスミマセン)

      
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