2004 蒲谷敏KOREA REPORT (号外)  

KOREA REPORT (号外)'04.2.14

―― 速報! 大相撲ソウル場所 ――

 

 BSE(狂牛病)の疑いが晴れないので、米国産牛肉の輸入禁止が継続して吉野家を始めとして、日本の牛丼は販売中止となったそうですが、本場?米国のニューヨークやカリフォルニアの吉野家は堂々と牛丼を売っているらしい。日本のある葬儀屋の息子は不景気で家業が苦しいのを見兼ねて、おばを殺して葬儀をしてもらおうと思ったらしい。こちら韓国では、家内の通っているエアロビ教室の先生が飲酒運転検問で停車していると、そこへ酔っぱらい運転の車が突っ込んで来て、追突されて鞭打ちになったらしい。病院からエアロビ教室に通っているとか。

 

なにか、変な世の中、世界になってきているようで少し心配なこの頃です。先週土曜日には、北野たけし監督・主演の映画『座頭市』がソウルでも上映されているので、早速観に行きました。でも、これが日本を代表する映画だと思われると嫌だなあ、と思わせるおちゃらけ座頭市でした。

 


               大相撲ソウル場所会場

 

今週は正真正銘の日本の国技、大相撲韓国公演を観に行きました。日本と韓国は近くて遠い国とよく言われますが、大相撲の韓国公演は戦後初めてだそうです。パリやロンドンなどでの海外公演を派手に遣っていたように記憶していたのですが、お隣韓国にはまだ来てなかったんですね。一昨年のサッカーW杯日韓共同開催の余勢を駆って、日韓議員連盟のご尽力で日韓共同未来プロジェクト(なんだ?)の第1号として、また韓国人力士春日王(十両、キム・ソンテク)の人気もあって、やっと実現したようです。

 

ソウル市内の高級ホテルの隣にある奨忠体育館(旧正月にはここで韓国相撲・シルムの大会が開催された)に着くと、会場の正面には幟が風に翻って相撲の雰囲気は上々です。もう入場券売り場の前ではダフ屋同士が喧嘩してたり、露天でキムパプ(韓国風巻寿司)やスルメ、缶ビール、紙パックの焼酎、ちゃんこ鍋まで売っています。会場内に入るとパンフレットには、お座席でのラーメン・コーヒー・アルコールの飲食は禁止します、と書いてありましたが、あっちでもこっちでもスルメなんかを肴に車座になってソジュ(韓国焼酎)をやってます。私たちも隣の席のアジョシ(オジさん)に日本から来たの?なんて聞かれて、いいえソウルに住んでますと答えたら、ソジュ飲まない? いいえ結構です、というと肴のビーフジャーキーを少しくれました。BSEを少し心配しました。

 

  

幕内力士土俵入り

 

開会式では、その日韓議員連盟代表として、韓国側は元国務総理・金鍾泌(キム・ジョンピル)氏がご挨拶され、続いて日本代表で森善郎前首相がご挨拶をされたんですが、なにしろ『神の国』発言の方ですから、また韓国で変なことを言うんじゃないかと家内も心配しておりました。明治神宮で云々といわれた時にはドキッとしましたが、横綱が土俵入りを奉納するとか何とかで終わったので、ホッとしました。以前日本政府の文部大臣が日本は朝鮮で悪いこともしたが学校や鉄道を造るなど良いこともしたという発言で、韓国から総スカンを喰ったことがありました。そのとき私は通勤電車の中でずいぶん肩身の狭い思いをしました。ともあれ、今日は森前首相も失言がなく良かったです。

 

地方周りの巡業相撲と同じようにこのソウル場所も、北の湖理事長のご挨拶が終わると、韓国出身で初の幕内力士(ウリナラ(我国) マクウチ・リキシ イムニダ(です)と紹介された)春日王が四股、仕切り(韓国相撲では仕切りはなく右四つ?で組んでから勝負する)、股割などの相撲基本動作を説明し、続いてソウル日本人学校とソウル・トンミョン小学校の児童を二、三人づつ貴ノ浪と土佐ノ海が面白可笑しく稽古をつけ、櫓太鼓の実演もあって九分入り(観客は5500人あまり)の会場が盛り上がってきました。

 

   

大相撲ソウル場所幕内トーナメント戦

 

幕内土俵入り、横綱土俵入りが終わると、いよいよ幕内勝抜戦(トーナメント方式)が朝青龍をはじめとした40人の力士で開始されました。1回戦の初戦は韓国人の春日王と琴龍。これはもう、地元有利の典型(やらせだね)で春日王が寄りきりで勝ちました。で、2回戦の初戦はシード選手の横綱朝青龍と春日王の対戦で、ソウル場所初日のメインイベント(本日の好取り組み)ですから会場は大歓声です。もちろん春日王への応援が多いのですが、モンゴル出身の朝青龍にも応援が多い。どうも西方2階席に座っている私たちの前と後ろはモンゴル人らしくて、朝赤龍の時も旭天鵬のときも旭鷲山のときも(モンゴル人力士はいつの間にこんなに多くなったんだ?)ビデオカメラやデジカメで土俵を撮りながら片手を振ったりして大騒ぎ。

 

最近オリンピックなどの国際ゲームの応援席に時々ど派手な日本人おじさんをテレビで見かけることがありましたが、今日もソウルまで応援にいらっしゃってるようです。金に赤の日の丸の大扇子に、金の山高帽、金の陣羽織まで着ておられて目立っています。

 

朝青龍、春日王それぞれへご贔屓の応援の掛け声がしきりにかかり、一瞬の静寂の後、このおじさんが

『二人とも頑張れ!』

場内はふう〜っと和やかになり、拍手が沸き起こりました。

竹島(韓国では独島)問題やソウル日本人学校園児襲撃事件などの複雑で微妙な日韓関係に気分も傷心しがちな、ソウル駐在員には涙が出そうな応援の仕方でした。そう、日本(本当は朝青龍はモンゴルだけど)が勝て、韓国(春日王)が勝てじゃなくて、両方頑張ればいいじゃないか!

 

結果は横綱の圧倒的な貫禄勝ちでした。それでも場内は割れんばかりの喝采です。その後、高見盛の顔や胸を思いっきり叩く気合一杯のパフォーマンスやグルジア出身の黒海の美白な体、旭鷲山と玉春日の取り組みでは物言いがついたりして、会場はますますヒーアップし、ベスト・フォーには、朝青龍、高見盛、魁皇、栃東が残りました。準決勝のそれぞれの取り組みには、世界をつなぐ旅の心のJTBや手作りキムチの味とコクの永盛ジャパンの懸賞がついたりして、これも国内場所の永谷園や救心とは違うソウル場所らしさを醸し出します。

 

 

          朝青龍VS栃東

 

優勝決定戦は横綱朝青龍と大関栃東の対戦になりましたが、朝青龍は強い!これでもかと、つり出しで栃東を土俵の外に投げ捨てました。表彰式では優勝した横綱に、東京〜ソウル往復航空券やキムチ、韓国海苔、マッコリ(韓国のどぶろく)一年分が贈られました。そして、ソウルで観ることが出来た大相撲に大満足して、韓国人も日本人もモンゴル人も日暮れの街へと繰り出すのでした。

 

 ソウルより 蒲谷敏彦

             
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