四国一周時速5kt「風太郎の旅」 今年7月に2級船舶操縦免許を取って、8月に中古のヨットを購入。約2ヶ月の間、興居島、中島、伯方島、下蒲刈島、上蒲刈島、など伊予灘を1人でクルージング。 そしてやっと船に慣れてきたと感じた頃、台風の時期が過ぎて、寒くなる前のこの時期。 10月17日(月)からうまい具合に長期予報も晴天なので、思い切って四国一周の長距離クルージングに出発する事にした。 予定は約10日間、途中でトラブルが起きたり天候が崩れれば躊躇せずに中止又は港で待機する方針。 計画では総航行距離は約460mile、時速5ktだと92時間で一周できる計算となる。 それは一日8時間の航行で11日と半日、9時間なら10日間。 日没が17時15分頃なので暗くなる前に入港しようとすると16時30分が目標か。 出発は7時から8時頃にしたい。 できれば上陸して温泉や観光をしたいが、長くなるほど悪天候に遭遇する確立が高くなるから、駆け足になるが10日程度で回りたい。 問題は回る方向、瀬戸内海は潮の干潮で大きく影響を受けるが一日中走れば必ず転潮に逢うし、どのタイミングで何処を通るかは天気との兼ね合いもあり予想は困難と判断。 しかし高知沖には安定して黒潮が流れているから左回りが良いだろうと考えた。結果的にはどうやらこの判断も間違っていたようだが。 停泊地は地図で確認すると四国沿岸にはいたる所に漁港が有り、停泊や緊急避難には事欠かないと思われた。が、水や燃料の補給となると皆目解らない。 出発の2日前にクルージングの大先輩、天野先生から全国の泊地情報をお借りできたが、残念ながら高知沿岸は殆ど情報が無く不安な区域。徳島まで入れば高松を含めて何とか成りそうに思われた。 海流や風向、風速が予想出来ないので、出発から3日位は1日8時間5ktで40mileは走れるとして、およその位置を予測し停泊できそうな港を探すことにする。 しかし、4日以降は誤差が大きくなり過ぎて何処の港に入るか予測できないので、停泊時に翌日の港を検索する事にする。実はここにも誤算が有った。 初日は佐田岬の三机港、二日目は宇和島港、3日目は宿毛辺りが目標と設定。 燃料や水は宇和島、宿毛辺りだったら補給できそうだ。 ところで今年12月で58歳になり、孫も出来ると言う親爺がどうしてそんな無謀と思われる旅に出るのか。 過去ヨットの中で寝た経験は2回だけ、ヨットを購入して姫路から松山まで回航するときに高松の多度津ヨットハーバーで1泊、但しこの時は前のオーナー氏と一緒だった。 次は島マリンの僚艇5艇で下蒲刈島に1泊でクルージングした時。 その他は日帰りお気楽クルージングばかり、2ヶ月合計で50時間にはならないだろう。間違いなく折り紙つきの立派な新米である。 しかし、私は「冒険」とは思っても「無謀」とは思っていなかった。 その第一の理由は、ヨット自体の安全性である。座礁や他船と衝突しなければ何とかなる。例えば一晩荒海に揉まれていても沈む事だけは無いと信じている。だって太平洋を渡れるぐらいだから。 天候はある程度予測が付くので無理をしなければ「安全」は保障されていると思う。 それ程ヨットを信頼している。また、この「YAMAHA30Sと言う船は丈夫だ」と誰かが言っていた言葉を訳も無く神の言葉のように信じている。 第二の理由はGPSの正確性、これも天野先生に頂いたC-MAPと合わせて方向音痴の私でも知らない場所であっても正確に目標に導いてくれる。 第三の理由はオートヘルムFUSO ST1200の存在。シングルハンドではあるが、これがあれば二人と同じ。しかも忍耐強く文句を言わない頼りになる相棒。電気は食うが飯は食わない。偶に「ピーピー」と言うが「よしよし」って言えばその内に大人しくなる。 第四の理由は16馬力ヤンマー2GMエンジン。さほど強力ではないがディーゼルエンジンは普通であれば10日間ぐらいは問題なく動き続けてくれるはず。その耐久性は充分に信頼に足りると思っている。 第五の理由は「携帯電話」の存在。沿岸の航行なので多分全ての航行区域で連絡が可能と考えられる。 もしも、この内一つでもトラブルが発生した時には躊躇せずこの旅行を中断すると決めている。それ等を含めるとこの旅行は決して無謀ではないと思うが、初心者でしかも58歳の私には充分な冒険である事には違いない。 準備は充分に出来たとは言えないが、足りない分は私のパソコンを持ち込み停泊先でネットに接続して補う事とする。エアーエッジなので通信速度は遅いけどこんな時は便利。何処にいてもネットで情報収集やメール連絡は可能。但し結果的にこれが私の大きな勘違いであった。 その他の搭載は燃料タンク満タン40L+予備タンク20L、水タンク60L+ポリタンク40L、 食料10日分相当。 お酒・・タップリ! 何と言っても一番の不安は「落水」である。1人なのでもし落水すればヨットは行ってしまう。燃料が無くなるか風が無くなるまで走り続ける。私を残して。 頼みの携帯電話が海水に浸れば多分ジ エンド。落水して携帯で118番に連絡できる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。 体力は余り自信がない、日頃はまったく運動していない。 よって絶対に落水だけは出来ない。それがシングルハンドの最大のリスク。所が私はセーフティーハーネスを用意していない。これは大きな問題だと今でも思う。 とにかく落水に対しては細心の注意を払って行動する事として出港する。 もう一つの不安は、ジブファーリングのロープ。長年使っていて磨り減って毛羽立っている。交換したいが下のカバーのネジが外れずにそのままになっている。 今度上架した時に交換する積りだが今回には間に合わず、余り強い張力を掛けないように注意しながら使う事にする。 準備万端ではないが、さあ出港 一応氏神様の東雲神社にお参りをして、ケチな私が正月でもあげた事のない一千円を奉納 1日目 10月17日(金)薄曇り 微風 22℃ 07:00 前日に食料や衣料など必要な物は殆ど積み込んでおいたので、今日は野菜と冷えた ビール、そしてそれを冷やす氷だけを買って島マリンへ。 船は昨日から許可を得てポンツーンに係留して有ったので、積み込みは楽チン。 8時出港予定だったが、意外と買い物に手間取ったのとイザ出発となるとあれやこれやで手間取り、結局9時出港。残念ながら見送りは無く寂しい1人の出港となった。 10日間オートヘルムとGPSとエンジンが動きますように(アーメン) 09:00 出航 機帆走 針路:200度 エンジン:2000rpm 速度:6.2kt 真向かいの風でメインセイルのみ揚げるが度々シバー。しかし6.2ktとは連れ潮か。 10:00 三津沖 針路220度 2200rpm 4.3kt 潮が変わったかな。 興居島の伊予富士が徐々に小さくなる。一回目の記念撮影。 そして旅の安全を祈願してビールで乾杯。 12:00 途中の青島で港に入り昼食。初めての食事、焼きソバとコーヒー、岸壁に猫が6匹もいて焼きソバをくれと鳴くので食べ残しをあげる。航海の安全を祈願して動物に は優しくする事に。
昼食の焼きソバをねだる猫 13:00出港 追い風に変わる。2200rpm 6.0kt 16:30 ほぼ予定通りに三机港に入港。岸壁に漁船と並んで槍付けを初挑戦するが何故か岸壁まで後3mの所で前に進まない。あれ?暫く悩んだが海面を見ると、何と岸壁の手前が浅くなっていて、どうやらセンターボードが引っ掛かっているらしい。そうだ、今は大潮で干潮だ。 もし干潮じゃない時間帯だったら槍付けした後で潮が下がって座礁する所だった。 危ないアブナイ。3m程も上下するこの辺りの海域は喫水の深いヨットにとっては岸壁に係留する事は色々な問題が有るんだって改めて痛感。 日も暮れてきたので迷った挙句、違う岸壁に槍付けしていた大き目の漁船に無断で横抱きさせて貰う事に。許可を貰おうにも陸に上がれないし、人影が見えない閑散とした漁港だ。もし、この漁船が明日の早朝に出港するなら早くから起こされる事になるが、ヨットの中で寝るので余り迷惑は掛けないで済むだろう。その時には良く謝ろう。 余り良くない事とは思うが暗い中で他に安全な方法が見当たらないので仕方なし。
三机港内の夕暮れ 早速パソコンをネットに接続しようとするが、あれ?繋がらない。そんな筈は無いのに。振動で壊れたか? 仕方なく取りあえず食事。パックのご飯を電子レンジでチンする。これも初めて。 えーっと確かこのインバーターのスイッチを入れて、よしスタート。ピーッ。 あれ、バッテリーの電圧低下だ。レンジを使うとこんなに低下するのか。大丈夫かな、電圧が5段階の最低の赤いランプになっている。バッテリー上がりは一番困る。 メインスイッチはサブバッテリーにしてあるのでBOTHにセットしたら電圧低下は少なくなるかな。試しにやって見た。結果はそれでも同じだ、警告音がずっと鳴っている。ご飯は未だ温まってないので我慢。バッテリーは大丈夫か。 長い3分間だった。ご飯は温まったが、明日エンジンが掛かるか心配。 ホンダの発電機はキャビンの明かりに使っているが、後でエンジンスターター専用のNo1バッテリーを充電器で充電する事にしよう。充電器が有って良かった、安心。 夕食はカレー、日頃何時も食べているのと同じ味。当たり前か。 パソコンの件を何時もお世話になっている友人に携帯電話で問い合わせ。 「豊田さん、それはピッチなので田舎の方では無理ですよ」何だそうなんだ、しかし、これからも田舎ばかりじゃないか。ネットに繋がらなければ色んな検索が出来ない。困った。 取りあえず明日のお天気は携帯で調べよう。よし、明日もいい天気だ。 夜は結構冷えるが満月が綺麗だ。冷えたビールが旨い。 航行時間7時間30分 航行距離:35.2mile 平均速度:4.7kt 2日目 10月18日(土) 快晴 風2m 20℃ 03:30 目が覚める やはり横抱きした漁船が気になる。 05:00 朝食 パン、コーンスープ、コーヒー 06:00 昨夜室内灯が時々点滅していた。きっと発電機からのコードに何か異常があるのだろう。 この船はバウのアンカーを収納しているロッカーから電源コードを出せるようにしてあり、キャビン内にコンセントを設けてある。テスターで調べてみたら、やはりコンセントの直後の部分で断線しかかっている。予備のテーブルタップのコンセント部分を切り離し代わりに接続して応急処置をした。 結局漁船は出港しなかった。 07:00 三机港出港 260度 6kt 真追っ手の風 2400rpm 09:00 岬を越えるとまたその先に岬が現れる、一体何処まで続くのか、佐田岬は何処だ。 昨夜の事があるのでバッテリーを温存する為にGPSを使っていない。 真追っ手の風が強くなって10m程になって来た。オートヘルムが少しぶれるのと、波のせいで突然のワイルドジャイブを繰り返す。キャビンにいても落ち着かない。 キャビンでは電源について調べていた。どの機器がどのバッテリーに繋がっているのか。バッテリーは3つあって、エンジンスターター専用のNo1、インバーターを介して100Vの機器、テレビ、扇風機、電子レンジ、冷蔵庫を作動し、12Vではカーステレオ、カーナビ、魚探を作動する為のNo2、GPS、オートヘルムを作動させるNo3、と思っているが本当にそうなのか実は解っていないのだ。 その内にチャートテーブル横に10個程並んでいる内のある電源スイッチをOFFにして見た。変化がないので直ぐにONに戻したが、変化は暫くしてから起きた。 ランニングなのでそれまでヒールはしていなかったのだが、何故かヒールを始め、針路が変わっているような気がする。 キャビンの窓から外を見ると、おかしい、さっきと景色が違う。 慌ててコクピットに出ると、見事に右に旋回して300度方向に向いている。 その瞬間に理解した。オートヘルムの電源が切れたのだ。 さっきのスイッチを切った時にOFFになり、オートヘルムはその位置で固定され、スイッチを戻しても再度オートヘルムのONスイッチを押さないと電源は入らない。 直ぐにティラーで進路を修正し、スイッチを入れ直す。 危ないアブナイ。周りに船が居なくて良かった。 10:30 佐田岬を回る 進路100度にセット まず、一つの関門を通過。ビールで乾杯しておこう。
これでアビームの走りができるかな、って思ったらありゃ真向かいの風だ。もう少し左に振れて欲しい。やっぱり岬が風向を変化させているんだな。 しかし、これで伊予灘を抜けて宇和海に入った。太平洋に繋がっている海だ。波が高くなるかと思ったが、50cm程度で瀬戸内海と変わらない。気のせいか少しうねりが有る様に感じる。 13:00 北東の風10m 進路を110度にしたのでアビームで快調に走る。7kt 実に気持ちがいい。もう一本ビールを飲んでおこう。昨夜は氷を補充していないのでクーラーボックスの氷が少なくなって来ている。冷えている内に飲まなきゃ。
佐田岬から宇和島港を目指す 14:00 宇和島湾に入る。 進路100度 6kt 16:00 宇和島港に入港 大きな港だ、どんどん奥に進む。一番奥にフェリー乗り場があった。この辺りに停泊できれば嬉しいんだが、駄目だ、漁船が一杯で停泊出来そうにない。 少し右の川口ポンツーンが有ってそこにヨットが係留されている。 この辺りに泊められないか、と川に少し入る。 その時、急に船が止まった。尻の下でズズッと擦っている感触。座礁? 焦ってレバーを後進に入れ最大まで回転を上げる。 しかしまったく動かない。マスマス焦る。 又前進に入れて回転を上げる、それでも動かない。 ティラーを右に切って川の中央に向ける。エンジンは最大回転のまま。 ズズッ、少し右を向いた。行けるかも知れない。だが少し動いて又止った。駄目かも知れない。これから満ち潮なのか引き潮なのか、頭がパニックで判らない。 引き潮ならここで横倒しになるかも。こりゃ大変だ。 川の中央が深い訳でもなさそうだ、そうだ、来た所に戻るのが良いかも知れない。 ティラーを闇雲に動かして船を180度反対に向ける。イライラするほど少しづつ動く。 元のルートに戻るとノロノロと動き出した。こりゃ助かった。ホッ。 あぁ酷い目にあった、停泊場所に気を取られて魚探の水深計がピーピー鳴っているのに数字を見に行かなかった。コクピットから見えれば良いのに。 暫く後、港内をウロウロしやっと見つけた岸壁の空き。そこに槍付けを終わったその時に、後ろからポーッと汽笛。見ると漁船から人が手を振っている。どうやらこの場所は先約が有ったらしい。 渋々その場を離れ、トボトボと港の入り口方向へ。係留できるか不安が一杯だ。 すると、右に漁船の溜まり場が見えた。その中に入っていくと小さな岸壁の空き。 その前に居たトロール船の作業者にここに泊めても良いかと聞くと良いとの返事。 やっと見つけた場所だが狭い河口なので槍付けするにもアンカーを遠くに落とせない。 17:00 仕方なく近くに落として前進すると、やはりしっかりアンカーが効く前にパルピットが岸壁に着いてしまう。それでもバウから舫いロープを岸壁に結んでいる時。 引き波で船が大きく上下。すると、岸壁に木材が出ていて、それと先端の両色灯が接触。 バキッ、ポチャッ。両色灯が壊れて海に落ちた。あーあっ。 暫くボーゼンとして、それでも気を取り直して陸に上がると、さっきの若い漁師さんが「何処から来たの」「松山から、これから四国を一周する旅の途中」と私。「風だけで走るのかー凄いねー」・・・ 暫く話をした後で、「鯵は食べる?」「そりゃ食べるけど」「じゃーこれあげる」 何と、丸々と太った大きな鯵2匹をその場で絞めてバケツでくれた。 いやー悪い事ばかりじゃ無い、嬉しい。今夜は鯵の刺身だ。 20:00 宇和島の駅前まで歩いて行き、街の銭湯に入って、冷えたビールを買ってヨットに戻り、切れない包丁で鯵と格闘。何とか3枚に卸して、刺身醤油とワサビで頂く。ああ、旨い最高。
本日の教訓、港内では水深計に注意。アンカーは出来るだけ遠くに落とす。 航行時間:7時間 航行距離:47mile 平均速度:6.7kt 3日目 10月19日(日) 快晴 20℃ 無風 06:00 サラダで朝食 07:00 岸壁の土がデッキに付いて真っ黒に、美しくないので清掃。 08:00 漁船に冷凍の魚を細切れにして搭載している様子を見学。魚の生臭い臭いが辺りに充満している。かもめとカラスがおこぼれを狙って集まって来る。 09:45 出航 宇和島湾は真珠の養殖で一杯。綺麗が要注意だ。 11:15 進路180度 左の風8m 6kt 機帆走 2200rpm 12:00 昼食 14:20 高茂岬を越える頃から右からの風が上がりうねりが大きくなる。ジブを縮帆。 進路150度 右からの風アビーム。スプレーがひどい。レインコートを着る。
15:00 宿毛湾に入る 進路65度 真向かいの風。波にも叩かれて進まない。4,4kt 2500rpm 16:00 湾の奥になると波が小さくなり少し楽になる。5.0kt 揺れに備えて予めキャビンを整理しておいて良かった。 17:00 宿毛港に入港 奥のフェリー桟橋まで行くとフェリー乗り場の右側が空いている。フェリーの乗員に聞くと、泊めても良いとの返事。ラッキー。昨日とは大違いのスムーズな停泊。 しかも浮き桟橋なので潮の満ち干も関係無いし。楽チンな停泊だった。 今日は予約してあったホテルに泊り。連絡をして車で迎えに来てもらってホテルへ。 夜は街まで出てカツオのたたきで一杯。旨い!!
宿毛港フェリー桟橋に楽々係留 22:00 熟睡 航行時間:7時間15分 航行距離:42mile 平均速度:5.8kt 4日目 10月20日(月)晴れ 無風 24℃ 07:30 ホテルで氷を貰いビールを購入 フェリー乗り場近くのガソリンスタンド(JOMO)で船に給油したいと言うとタンクローリーを呼んでくれて桟橋まで来てくれた。今回で初めて37Lを給油。 ガソリンスタンドで免税の手続きもOK。これは助かった。 しかし、手続きの中で免税券に使用者の印鑑が必要な事が判明。(島マリンでは要らなかった)何とかサインで了解して貰う。これからは印鑑を搭載しておかねば。 ガソリンスタンドが隣で船具屋も経営していたので、両色灯\5.700を購入。ラッキーだ。 09:15 出航 進路230度 機走 6kt 宿毛湾内は鏡のような海で、これならバウで作業しても安全と判断。落水に注意しながらパルピットから乗り出して両色灯の交換を行った。ネジが錆付いていたのと工具を海に落としては今後の航海にも差し支えるのでそれぞれ紐で手首と縛って慎重に、慎重に。 タップリ1時間も掛けてやっと交換完了。丁度宿毛湾から出る頃だ。待っていたようにうねりが大きくなってきた。 11:00 進路153度に変針。 11:30 遂に伯島と沖ノ島を越えて本物の太平洋に出る。 途端にうねりの波長が100mから200mと大きくなり、豪快な海面になる。流石太平洋だ。うねりの頂点では見晴らしがいい。チョット感動。 その時ヨットの100m後方でカジキマグロが3回跳ねた。 本物を見たのは初めて。おおっマリーンだ!ビールで乾杯。 進路110度 6kt 機走 さびきを始めた。ひょっとしたら今夜はマグロかカツオで一杯? 12:00 東からの風が5mまで上がってきてやっと帆走ができる。7kt ビール2本目。28℃あるから暑い、まるで真夏。 14:30 足摺岬 南の風に変わり7m 6kt 今回の最南端に到着 32度42分74秒N 133度00分00秒E 15:00 進路00度へ 17:00 随分遅れ、夕暮れが近くなりやっと四万十川河口に辿り着いた。 河口の左側に下田漁港が在る筈だ。先に入野漁港も在るが、日没に掛かるので下田に入ろう。 岸に近づいて行くと急に波が高くなってくる。2mを超えて来た。追い風なので波乗りになる。うねりが加わり谷間では岸が見えなくなる程。 頂点に持ち上げられた時に港と灯台を探すが、岸壁ばかりでテトラポットに波濤が激しく当たり大きな波しぶきを立てている。 ドンドン近づくと更に波が高くなって来る。サーフィン状態、危険を感じる。 入り江が狭くなってきて目を凝らすと奥は行き止まりになっている。 これはイカン、下田漁港を断念、Uターン。大波に揉まれるがヨットの復元力で横倒しにはならない。何とか入り江の外に出られた。初めて恐怖を感じた。 17:50 入野漁港の標識灯を発見、暗くなってきたので灯が見やすくなった。 岸に近づくとやはり波が高くなって来る、先程の恐怖が蘇る。 堤防の中に入るが港の入り口が判らない。もう他の漁港を探している猶予は無いし、 もう一度入り口近くに戻る。灯が二つ見える。あの間が入り口なのかも知れない。 波が高いので堤防に余り近づきたくない。しかし、近づかないと暗くて見えない。 有った。堤防に10mぐらいの隙間が有る。きっとあそこだ。近づくと又魚探がピーピーと鳴り出す。もう水深は気にしていられない。とにかく入ろう。 漁港の中に入った途端に波は無くなり、更に内側に堤防があり、セイルを降ろして奥に進む。水深10ft 漁船が沢山溜っている。空いている岸壁を見つけてとにかく横付けにした。 18:00 ホットしていたら車がきて、漁協の人らしい人が、ここは給油する場所だから少し先の岸壁に移動するように言われた。成る程、気が付かなかったが陸には銀色のロッカーの様な箱がある。謝って、直ぐに移動。 あの海で一晩漂う事を考えれば何処でも天国。 19:30 簡単に夕食を済ませた時、ホンダの発電機が急に止まった。点検するが何処にも異常は無い。原因が判らず、今日は疲れたので早く寝る事にしよう。 風がスターン方向から吹いて来るのでトランサムに波がピチャピチャと当たりうるさい。 初めての岸壁横付けだから、潮の干満が気になる。今が満潮に近いからこれから下がり、朝の5時ごろに干潮になる。1.5m下がる予定、舫いロープに余裕を持たせよう。 喫水が1.8mだからギリギリかもしかしたら着底するかも。陸に上がれないかな。 風に押されて舫いロープがギシギシ擦れる。色んなことが気になり寝付き難い。 03:00 潮が引いて来て、岸壁の牡蠣にフェンダーが擦れている音がする。 舫いロープが張ってきて岸壁に擦れる。擦り切れそうな音がする。 我慢が出来ず、隣の小さなプレジャーボートに無断横抱きにする。ゴメンナサイ。 やはり岸壁に横付けは難しい。あまり寝られなかった。 航行時間:8時間30分 航行距離:55mile 平均速度:6.5kt 5日目 10月21日(火)快晴 17℃ 06:30 起床 06:40 入野漁港出航 北東の風 5m 機帆走で6kt 港から出る時も防波堤を出ると波が大きい、チョッとビビッた。気合を入れて乗り切る。朝日が昇ってきた、綺麗だ。
入野港出港 高知港に向けて 09:00 進路40度 真向かいの風 6kt GPSが見かけより10度程度左を向いている気がする。 後で解ったが、GPSは実際の進行方向を示すが、それはヨットの向いている方向とは一緒ではないと言う事。船は潮か風によって左に流されていたのだ。 12:00 GPS通りの目標を通過。直線の単調な航海 昼食はサラダとカップラーメン。とビール。 真向かいの風でも6kt出るのはやはり黒潮の関係か。 13:00 桂浜沖に到着。坂本龍馬の銅像が見えないか岸に近づく。 見えない。高知港を目指す。 15:00 高知港に入港。浦戸大橋を通過。曲りくねった鏡川を遡り「弘化台」を目指す。 そこは高知在住の友人が知り合いに頼んで係留場所を確保していてくれた所。
桂浜 弘化台 15:30 GPSのお陰で迷わずに目的の場所に到着。 岸壁には人が居て、手招きしている。70歳は超えているだろうか、着岸するとさっさと舫いをしてくれて、それから質問の嵐。ヨットがそんなに珍しいですかぁ? それに言葉が高知だ。判りづらい。 お世話になり序にホンダの発電機が故障して困っている事を伝えると、さっさと車に積んで何処かに行ってしまった。 友人に電話すると30分で迎えに来てくれるとの事。 16:00 丁度友人が来る前に発電機を持って帰って来て、「やはりプラグだねー」 何とお礼を言って良いのか、本当に高知の人は温かい。 17:00 友人と温泉に入り自宅近くの「居酒屋けんちゃん」へ。常連らしくメニューに無いものが出て来る。骨酒が旨かった。うるめ、手長えびも最高。 12:00 友人宅で熟睡 帰松したら友人とお世話になった係留場所を提供して下さった方にお礼を送るとしよう。 航行時間:8時間50分 航行距離:45.6mile 平均速度:5.2kt 6日目 10月22日(水) 晴れ 18℃ 東北東の風1m 07:30 高知港を出港
高知港入り口の浦戸大橋 入って来た時と同じルートで出て行く、お爺さんのアドバイスでは「浅いので左舷浮標より出てはいけない」だった。忠実にそれを守る。 外洋に出て、針路120度 左からの風、アビーム、2600rpm 6.5kt 直線で室戸を目指す。今日は室戸岬を越えるかどうかだ。 それに、これから3日間は天気が崩れる予報だから無理は出来ない。燃料を補給できる港を選ぶ必要がある。12:00の時点で判断する事にした。 11:00 風無し、エンジンの回転を2600rpmまで上げる。5kt 逆潮か、スピードが出ない。 12:00 安田沖、風は10mに上がるがポートタックでクローズドホールド、機帆走で5kt 。 室戸まで3時間掛かるので岬を回り東洋に入る頃には日没になる。よって岬を回るのを断念して室戸漁港に入港を決定する。 白波が立ってきてスプレーを浴びる。カッパとマリンブーツを着用。昨日とは大違いだ。
室戸岬直前で室戸港に入る 14:30 室戸岬のわずか1km手前の室戸漁港に入港。悔しいが海も荒れてきたので無理は出来ない。新港らしき所はガランとしていて風が強く入り停泊できそうに無い。どうやら入り口を間違えたらしい。進入をやり直して漁船が沢山溜っている港に入れた。これも泊地情報で事前に知識を得たお陰だ。 燃料補給をする為に漁協に行く必要があるが、これが先程の新港にあって歩いて20分掛かる。しかも印鑑が無いので免税は無理との事。20Lを給油。 17:00 給油に意外と時間が掛かったが、風の当たらない場所で漁船に横抱きさせて貰う。 セイルを畳んでいるとTOPから2番目のバテンポケットが破れてバテンがはみ出している。このままだと落としてしまうだろう。 修理道具箱をかき回しているとセイルのリペアキットが出て来た。暗くなって来たが何とか縫って応急処理が出来た。前のオーナーの準備良さに感謝。 早目の判断で余裕を持って入港できて良かった。複雑な漁港の中はブイだらけ、暗いと危険だった。
漁船に横抱きさせて貰う 給油所で20L給油 不思議にここではインターネットに繋がった。久々にメールの送信。 22:00 水深も充分だし、やはり横抱きは安心できる。ヨットで就寝。 航行時間:7時間0分 航行距離:34.4mile 平均速度:4.9kt 7日目 10月23日(木)曇り 28℃ 風無し 06:30 起床、夜中に風が強く目が覚めたが、充分休養できた。 07:00 朝食を済ませて、出発前にエンジンオイルの点検をしたら、何とゲージにオイルが付かない。松山を出る時にはしっかり入っていたのに6日間でそんなに消費したのか。6日間もオイルを調べなかったのはいけなかった。 生憎予備のオイルは持って来なかった。これは大きなミス。 漁協が開くのは8時半との事なので1時間半周りを歩き回る。室戸岬は直ぐそこに見えている。 08:30 漁協にはヤンマーのオイルは置いてないので止むを得ず「漁協スーパーオイル」を2L購入。エンジンには1L入った。残りは予備としてペットボトルに入れて積み込む。オイルタンクの容量は2Lなので半分になっていた事になる。 もし、今日オイル点検をしなかったら壊れていたかも知れない。危なかった。 09:15 時間を大幅にロスしたが仕方ない。室戸漁港を出港。微風だが波は高い。 09:45 室戸岬を回った。今回の最大のイベント!しかし、すんなりと終わった。
室戸岬 10:15 安心して岸から2マイル沖を航行中、今日の泊地の事を考えていた。 徳島まで行きたいが無理だろう、せめて日和佐まで行ければ良いのだが。 キャビンでGPSと睨めっこした後で、ふと前方を見ると50m前にブイが浮かんでいる。周りを見渡すと、その時うねりに持ち上げられ、点々と周り一面にブイが浮いているのが見えた。 あわててティラーを握り船首を沖に向ける。500m四方ぐらいの規模でブイが有る。 遠い沖に竹竿に赤い旗が見える。腹が立って来た。 気付くのが後30秒遅かったら引っ掛かっていただろう。危なかった。 うねりの頂点でないと周りが見えない。しかも黒い小さなブイで、旗なんて遠くて見えない。こんな所でプロペラにロープを巻き付けたらと思うとゾッとする。 針路 20度 6kt スタボタック クローズドホールド。 12:30 甲浦沖、針路50度 真向かいの風 5,5kt 日和佐まで行けるかな、それとも手前の牟岐港か。 14:30 計算だと日和佐着が17:00になりそうなので本日の泊地は牟岐港に決定。 何とかジブを開いて走りたいが、タッキングを繰り返しても時間が掛かるだけなので止む無くジブをファーリングしてメインだけで機走。 15:30 牟岐港に入港 やはり此処でも岸に近づくと波が大きくなる。しかし、昨日程ではないし今日は充分に明るいので余裕。 港の奥まで進み、魚網の繕いをしている80歳ぐらいのお爺ちゃんに、何処かで停泊させて欲しいとお願いして見ると、「そこの漁船は使ってないから横に付けても良いぞ」って言って貰えた。やはり早い入港はいい事が多い。 水深に気を付けながら古い漁船に横抱き。やはりこれが一番安心できる。
牟岐港入り口近くで漁船に横抱き 16:00 ひなびた漁村を散策。スーパーでビール、氷、水、ヨーグルト、りんごを購入。 何処かお風呂に入れる所を尋ねると、近くの民宿で入れるらしい。 よし、今日は民宿で泊まろう。 17:00 民宿「美砂」に到着。夕食が無いので自転車を借りて街の居酒屋「英」はなぶさへ。夜は雷を伴う大雨。きっとヨットでは寝られなかっただろう。民宿で正解だった。 航行時間:6時間15分 航行距離:35.6mile 平均速度:5.6kt 8日目 10月24日(金)晴れ 24℃ 北東の風5m 06:00 起床、民宿「美砂」で朝食 08:30 出港 オイルレベルはOK まったく減っていない。 針路60度 ジブは展開できず、メインセイルのみで機走 6.5kt 2400rpm 一路紀伊水道を目指す。 低気圧の通過後でうねりが大きい、5mは有る。ヨットは大揺れ。メインセイルも左右に振れる。 11:00 風は10mに上がって来たが角度が悪く、ジブを展開できない。遠くに紀伊半島が見えて来た。 蒲生田岬を回って近回りするか、伊島を回って大回りするか悩む。 C-MAPでは岬と島の間に暗礁が沢山有って危険かも知れない。現場で考えよう。 12:00 岬と島の間を抜ける事に決定。向かい風が強く早く針路を左に向けて良い角度で走りたかったから。 しかし、岬と島の中間でも真向かいの風15m。波も真向かいから来て、進まず。 速度は3.0ktまで落ちる。 大波の中、近くの暗礁か白波が大きく立っている。C-MAPが正確である事を念じつつ、暗礁を避けてS字形に進める。今回で一番のスリル。顔は塩を吹いている。 こんな荒れた海に居るのは俺1人だろうと思ったら、近くの岩場に漁船が一艘。 漁師も大変な仕事。ここが仕事場とは。
蒲生田岬沖暗岩が一杯 GPSを信じて近道 波に叩かれ進まず 14:00 無事に岬を回って針路を340度にしても風は真向かいから来る。それも10mを超えている。波に叩かれて進まない。大波に叩かれると一瞬船が止る。平均4.5kt 右前方に淡路島が見えて来た。 15:00 風が少し左に振れ、ジブも展開してスピードが上がる。7kt やっと気持ち良いクルージング。 16:00 徳島を越えて、鳴門海峡大橋が見えて来たが、潮の流れが判らないのと、日没を考えて、鳴門超えは断念、徳島空港の直ぐ隣の粟津漁港に停泊を決定 大きくて綺麗な岸壁に沿って入っていくと静かな漁港だけど、人はあちこちに居て何か雰囲気がいい。 一番奥の漁協らしき建物の前の岸壁に着けて、今晩停泊したいと言うと、やはり漁協に相談しろと言われ、一旦舫いを取って、漁協に挨拶に行く。 挨拶をすると簡単に停泊場所を指定され、燃料の補給もしてくれる事に。 燃料を40L給油。 18:00 指示された岸壁に大きなプレジャーボーが槍付けしてあり、その隣に槍付け。 嬉しい事にここではネットにも繋がったので鳴門海峡の通り方を研究。 ところが、鳴門の潮汐が判らない。 TIDE for WINを見ると徳島は堂の浦と小松島しか出ていない。 堂の浦が何処か判らなかったが、鳴門から小松島は近いので大きくはズレないだろうと考え、干潮が09:32なので09:00に海峡に到着すれば潮止まりに抜けられると判断。(実はこれが大きな間違い)
粟津港岸壁に槍付け PCで鳴門海峡の通り方を研究 明日は一応高松ヨットハーバーに停泊する事にして電話番号と緯度経度をC-MAPで確認。 航行時間:7時間30分 航行距離:44.0mile 平均速度:5.9kt 9日目 10月25日(土)晴れ 18℃ 北の風5m 06:00 起床 07:45 粟津港出港 計画では高松ヨットハーバーの予定。 大鳴門を抜けるか小鳴門を抜けるか迷っている。現場で判断をする事に。 思ったより鳴門大橋が遠く、逆潮のせいもあり、橋への到着が遅れる。 09:30 鳴門海峡に到着 ジブはファーリングしてメインだけにする。 丁度潮止まりのハズなのに逆塩(南流)で強烈に流れている。 小鳴門に行こうかと思うが、狭い所も嫌なので正面突破にチャレンジをする事にした。エンジンの回転を2600rpmまで上げて、少しでも流れが緩い右端の方に進める。 海峡の100m手前まで来て、向かって来る目の前の漁船が何か引っ張っているのが見えた。 おかしいと思い、漁船の後方を見ると、ブイが浮かんでいる。こんな所で引き網をしている。このままでは網に掛かってしまうので左に逃げるが、網の後端はなんと海峡の中央まで伸びている。 仕方なく流れの中央まで行き、やっと網をかわしてそこから右に針路を取るが既に橋の手前50m迄来ていて、周りは既に激流になっている。 エンジンを最大回転まで上げてそのまま闇雲に右端を突破しようと試みるが、橋の真下に来た時、流れは6ktに達しており、船も6kt。波の高さが2mの激流に揉みくちゃになりながら約10分間橋の真下で格闘。 前方50mまで進めれば流れが緩やかになっている。しかし、船はまったく1mも進まない。 激流でエンジンの排気口が塞がるのか時々変な音がする、壊れそうだ。 ティラーは左右に精一杯切り続けている、何だかガタが大きくなって来た様な気がする。 このままでは船が壊れてしまう。そう判断したが、激流の中でUターンするのも転覆しそうで恐い。真横になった時にどの様な事が起きるのか。 暫く躊躇したが止む無くゆっくり右に船首を向ける。 急激に下流に流され始め、あっと言う間に橋の下流100mまで戻された。 あー恐かった。しかし、更にヨットの安定性に感心させられた。 落ち着いたら、再チャレンジする気持ちになって来た。 さっきは漁船が居たから流れの中央近くに行ってしまったが、右端なら行けるかも知れない。 そこで橋の右端の流れが緩い所で助走を着けて、なるべく平面な所を狙う。 橋の真下まで来た。もう少し、しかし、進まない。景色がまったく変わらない。 また激流の中に引き戻された。諦めて船首を斜めにして元のスタート地点に戻った。 入り江になっている所でセイルとアンカーを降ろした。何故、潮止まりじゃないのか判らない。パソコンを立ち上げて徳島海上保安部交通課の電話番号を調べて、電話。鳴門の転流時間を問い合わせると、何と12時48分だと言う。小松島の潮汐と違い過ぎる。 諦めて、昼飯とビールにする。2時間半の潮待
何故か激流 格闘するも通過できず 入り江で潮待ち 12:40 先程までの激流が嘘の様に平面になっている。スンナリと海峡を通過。 右よりの風、クローズホールド6.3kt 14:00 本船航路を逆走、志度カントリーが見える。高松には夜になりそう。 小豆島か志度に泊まろうかと考えるが、高松は都会だし、今日はヨットハーバーを予約してあるので、電話で連絡をして遅くなる事を伝える。 うねり無し、波無し、やはり瀬戸内海はイイ。 15:00 針路280度、6.6kt 2500rpm ヒール15度、快調な走り。 16:00 小豆島の横を通るときは連れ潮で最高7.6kt 夕暮れになって気温20℃、少し寒い。セーターを着る。 風が真向かいになり、ジブファーリング。瀬戸内海の夕日が美しい。 17:15 日没、航海灯点灯。初めての夜間航行。連れ潮が早く8.5kt出る。 18:00 高松港に到着。しかし、ヨットハーバーが判らない。漁船やフェリーが多いし、夜なので沿岸には魚網や海苔の養殖があるので見張りに気が抜けず、キャビンに地図を見に行けない。 電話でハーバーに連絡、入り口を聞くが要領を得ない。岸が逆光で殆ど見えない。 灯台を見つけて入るがどうやら漁港だ、U-ターンしてウロウロ。 周りは海苔の養殖の黒いブイが一杯浮いている。目を凝らさないと見えない。 再度電話。随分行き過ぎたようだ。高松港近く迄戻ってやっと入り口が判った。
高松港手前で日没 暗闇で生簀が見えない 18:20 やっと高松ヨットハーバーに入港。18時までが勤務の事務員さんが待っていてくれた。先客のヨットが2艇ビジター用のポンツーンに係留している。 その内の1艇に人が居たので挨拶。ここをよく利用するベテランらしい。 20:00 近くのラーメン屋で餃子とビール。子供の頃入ったような懐かしい銭湯に入ってスッキリ。 23:00 このハーバーは北側が開いているので北からの波が入ってきて凄く揺れる。 しかしコンビニで買ったビールを飲んで熟睡。 航行時間:10時間35分(潮待ち2時間30分)航行距離:44.8mile 平均速度:4.2kt (5.6kt) 10日目 10月26日(日)18℃ 雨 南の風2m 06:00 起床
高松ヨットハーバー 北側が開いている 07:15 高松ヨットハーバー出港 流石にフェリーがやたらと多い。取りあえず瀬戸大橋を目指す。 オートヘルムのブレが大き過ぎると感じる。針路が30度位振れる。 左からの風が上がって来て、針路300度アビームの帆走で7kt、連れ潮か。 ヒール角度30度、キャビンがグチャグチャになる。 09:45 瀬戸大橋通過、逆潮か対水速度は有るのにGPSでは4ktになる。2200rpm 13:00 宅間を超え燧灘に入った所で風が強くなりジブをファーリング。半分にしたいが ロープが古く擦り減っているので負荷を掛けないように完全にファーリングする。 やはりこんな所で準備を充分にしなかった事が悔やまれる。 14:00 更に風が強くなり西に振れる。ヒールが大き過ぎるのでメインセイルも1ポイントリーフする。波も高くなり荒れた海面に。スプレーが酷くカッパを着て完全装備する。
ジブをファーリングしてメインも1ポイントリーフ 16:00 オートヘルムも疲れてきたのか反応しなくなってきた、前方にブイと旗が見える、10度右に操作するが動かない。我慢できず風下の左に操作、動かない。今からティラーを握っても間に合わない。ブイと旗は船の下に潜った。イカン、ロープに絡む。 暫くすると後方に折れた旗とブイが浮かび上がった。 良かった、プロペラにロープが絡む最悪の事態は免れた。危ないアブナイ、しかし、旗を折ってしまい申し訳ない。 16:30 新居浜マリーナに到着。 入り口を間違えて浅瀬にセンターボードを擦るが何とか入港。やはり動揺してる。 非常に綺麗なマリーナで、ポンツーンも多く、豪華なクルーザーも沢山在る。流石新居浜。係員も親切に舫いもテキパキと手伝ってくれる。 やはり漁港とは違って安心だし、楽チン。 こんなマリーナが松山にも欲しい。 18:00 市内のホテルに到着。居酒屋で夕食後スナックへ。日曜日なので開いている所が少ない。 航行時間:9時間15分 航行距離:52.2mile 平均速度:5.6kt 11日目 10月27日(月)18℃ 強風波浪警報が出ている。出港するか迷うがジブをファーリングしたままで、メインも1ポイントリーフしてゆっくり松山まで帰る事にする。 09:00 新居浜マリーナ出港 針路330度で走り、来島海峡を目指す。風が真向かいとなりメインがシバーするので角度を付けてタックを繰り返す。中々進まない。 12:00 昼食を取れる状況ではないのでそのまま走り続ける。 バウが波に突っ込み、水が大量にコクピットまで流れ込む最悪の状況。 バウのベントファンから水が浸入前方キャビンが水浸し。 13:15 やっと来島海峡に到達。北流6ktの連れ潮10ktで橋の下を抜ける。 S時の海峡を抜けた所で海流と風がぶつかり大波になっている。 避けて通りたいが本船が続いて来るので止む無く大波の中に突入。 向かい風と波で進まず、まともに当たると一瞬船足が止まる。 余りにも左右に振れるので遂にオートヘルムが動かなくなり、手持ちとなる。 16:00 来島海峡までが向かい風なのに菊間沖でも向かい風。本船航路を避けて岸近くをタックしながらゆっくり進む。 日没も近いのと燃料も0に近づいて来たので松山を諦めて菊間を過ぎた辺りで非難できる港を探すが、北条まで良い港が見つからず。 艇速が遅いのでエンジン回転を上げたのが原因で燃料消費が計画より多い。 止む無く走りながら予備タンクの燃料20Lを補給する。オートヘルムが使えないが、ティラーを固定する為の木の棒を代用にして針路を保つ。 燃料ゲージが3/4を指すと少し心理的にも心強くなった。よし、松山まで帰ろう。 17:00 波妻の鼻を回って針路180度、鹿島を目指すと風を右から受けるようになり走り易くなった。 波も少し小さくなって、艇速も上がってきた。しかしGPSを見に行く気力が無い。 見慣れた中島、興居島が見えてくると気持ちが楽になる。 中島の雲の上から光が海面に刺す光景は感動的だ。今回の航海の締め括りに相応しい。
堀江湾に到着 見慣れた景色の中島 17:30 何とか未だ明るい内に和気の島マリンに帰り着く事が出来た。 1時間半前の絶望的な状況からは考えにくい程最後は穏やか。 ポンツーンに着けると、嶋本社長がニコニコして出迎えてくれ、「豊田さんお帰りなさい」と奥さんの声。 やはりホームポートは良いな。 航行時間:8時間30分 航行距離:41.3mile 平均速度:4.8kt 合計航行時間:88時間15分 航行距離:477.1mile 平均速度:5.4kt 感想 今回の航海を通じて何故か幸運のようなものを感じざるを得ない。 こんなに滅茶苦茶な計画で行き当たりバッタリだったけれど、自然の力に軽く揉まれながらも怪我もなく船も壊さずに帰って来られた。 氏神様のご利益か、村上水軍のご加護か。日頃の行いか。とにかく海の神とあらゆる神に感謝。 良く頑張ってくれたエンジン、GPS、オートヘルムにも感謝。それに頑丈なYAMAHA30Sには心より感謝。 それにしても自然は正直って言うか、見事に弱点を突いてくる。準備不足の部分、経験不足の部分を。今回はギリギリの挑戦ではなかったので何とか無事に帰れたが、もう少し厳しい条件になると破綻したと思う。 次回は九州を一周したいと思っている、しかしもっと綿密な事前の調査ともっと多くの知識、技術が必要と感じた。今回の航海を総合的に評価すると60点で結果的に不合格であろう。次回は合格点の80点を目指したいと思う。 それにしても貴重な良い経験になった、謙虚に反省し、幸運に感謝したい。 最後にこの航海でお世話になった多くの皆様に心より感謝しお礼申し上げます。
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