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急性副鼻腔炎



急性副鼻腔炎の治療


 急性副鼻腔炎は薬で治ります。

 副鼻腔炎は「蓄膿症」とも呼ばれ、患者さん方によく知られている病気です。黄色くて膿のような鼻汁、頑固な鼻閉が主な症状です。

 副鼻腔とは「鼻の周りの骨が空洞になっている部分」のことで、眼の下辺りや、眼の内側、眼の上の骨の中などにあります。副鼻腔は頭蓋骨を少しでも軽くするために空洞になっているのだと言われています。この骨の空洞は鼻の中に連なっています。そのため、風邪をひいたときなどに運悪く細菌が入って繁殖すると副鼻腔炎になるのです。一旦細菌が入ると、副鼻腔は暖かい部屋になっているので、細菌にとってはとても住心地のよい場所なのです。それでうっかりすると細菌が定住して慢性になります。

 副鼻腔炎は子供に多いですが、大人でも頻繁になります。昔はよい治療法がなく、慢性化することが多くて、稀には命取りになることすらあったために恐れられました。副鼻腔炎は現在でもしばしば慢性化しますし、治療に時間がかかることもあります。

 しかし医療は30年前とは全く様変わりしました。医療の統計で蓄膿症の手術(副鼻腔炎が慢性化した大人に行う)は最近30年間で10分の1に減少しました。慢性化する副鼻腔炎が激減したことを示します。その理由は

1)医療の進歩
2)患者さん方の副鼻腔炎に対する意識と知識の向上
3)生活環境の改善 の3点です。

 以上、副鼻腔炎、とくに急性副鼻腔炎は薬で治る病気です。副鼻腔炎と診断されても驚いたり恐れたりするのは無用無益です。副鼻腔炎は「恐れず、しかし侮らず」の心構えで治療して頂きたいと思います。



  急性副鼻腔炎の治療

   1)抗生物質を飲む
   2)鼻の消毒(鼻のネブライザーや鼻洗)
   3)風邪に気をつけて、鼻をよくかむ
          の3点が柱です。

 かかってから少しでも早く治療を始めることが肝要です。

発症後1ヶ月以内なら約4週間の内服で90%の患者さんが治ります。




治療の実際

 初診時にはファイバースコープで鼻の中を診察します。副鼻腔炎の診断にはレントゲン写真は大切です。レントゲンの被爆量は極々少量ですから、レントゲン線被爆の心配は無用です。これを嫌がられると副鼻腔炎の診断が不確かになってしまいます。月1〜2回のレントゲン診断はぜひ受けて下さい。(乳児、妊婦の場合は別です)。


 治療開始するとまず「殺菌性の抗生物質」を10日〜2週間飲んで頂きます。薬の効果を確かめながら投与するので、5〜7日の間隔で来院して頂きます。効果が良くないときには薬を変えます。鼻の場合は耳と違って診察のタイミングによって状態が変わる(例えば鼻をかんだ直後だときれいに見えてしまう)ので、患者さんの印象やお母さん方の家庭での観察をお聞きします。正確な観察眼をもって報告して頂けると大きな助けになります。(例:鼻みずが出なくなった。痰が溜ったような咳が減った。黄色い鼻汁が透明になった。など)

 2週間くらいたって、大体きれいな鼻汁(白くてやや粘い感じの鼻水)になると、再度ファイバースコープやレントゲン検査で治り具合を調べます。60%の方々は2週間で治癒します。
治癒していない場合は「抑制性の抗生剤クラリスロマイシン」に変えて処方します。ここで治療を途絶えないようにして頂きたいと思います。さらに2週間くらいすると(治療開始から約1カ月)約90%のひとが治ります。この時の診察でまだ治ってなかった場合はさらに2カ月間、クラリスロマイシン抗生剤内服の治療を続けます。

 3カ月を越して治らない場合は、CTなどを撮って状態を再確認するとともに、患者さんのご希望や治療に関するお考えなども伺います。痛い治療でも我慢できる患者さんには、大きめの注射針を副鼻腔に入れて直接副鼻腔の中を洗う方法(上顎洞尖刺)などをお勧めしたりします。

 4〜5カ月を越しても治らない場合は、じっくり腰を落ち着けて治療しなければならなくなります。私は時にはもう薬を飲むのも止めて、自然の治癒力に任せることもあります。半年くらいかかってゆっくりゆっくり治って来る場合も少なくないからです。

 長期化する場合まで書いたので不安になられた患者さんもおられると思います。確かに副鼻腔炎は治癒率100%とはいきません。でも最初から悪い結果ばかり考えて心配していても仕方がないです。そのときはそのときでまた相談しましょう。