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声の老化について


 高齢者には多かれ少なかれ現れる、若いときに比べて「弱々しくて、低くて、しわがれた声」です。日常会話での声の老化を感じて来院される患者さんは75歳以上が多いですが、カラオケやコーラスなど歌を歌われる場合は65歳頃から相談を受けることがあります。



T)普通の症状と経過

 70歳以上の高齢者で、最近@大きな声が出なくなった(声の強さの減弱) A高い声が出なくなった(声の高さの低下)。 B声にツヤがなくなった(しわがれ声) などの症状です。
若いときには「歳をとったら仕方がない」と思っていたことが、実際に歳をとって思うように声がでなくなったら、「思っていた以上に困った。辛い」と言う悩みです。カラオケやコーラスなどの趣味をもっておられる方々の悩みが大きいようです。

U)原因

@声の減弱は、老化による1)声帯萎縮(声門閉鎖不全)と2)肺活量(呼気流量)の低下と3)姿勢や筋力など全身的な機能の低下 の3つが原因です。
A声の高さの低下は、声帯の緊張の低下によるもので1)声帯の萎縮と緩みと2)声帯筋の筋力低下が原因です。
Bツヤのない声(しわがれ声)の原因は、声帯表面の湿潤性の低下と声帯の萎縮(声帯内のヒアルロン散の減少)が主な原因です。

V)治療

 @声の減弱(=声帯筋力の低下)と音声の低下は、「ある程度頑張って声を出す。歌う」などの筋力トレーニングをする。
 A声の質の悪化(しわがれ声やツヤのない声)は、声帯粘膜の湿潤性の低下が原因なので、治療は1)ネブライザーで直接に声帯を湿らせる(最下段を参照) 2)麦門冬湯とカルボシスチン(ムコダインなど)とブロムヘキシン(ビソルボンなど)を内服する 3)唾液増多を試みる(ピロカルピンなど)
 B姿勢の矯正や筋力アップやジョギングなどの全身的なトレーニングをする。
 C話す機会を多くも持って社会性を高めることで、声を出す意識を活性化する。
 D声帯へ、声帯の容積を増やす目的で注射する。
など、です。

W)区別する必要がある病気

 
 
@慢性声帯炎
 A声帯ポリープや声帯結節など、声帯の良性腫瘍
 B喉頭がんや肺がんなど悪性腫瘍
 C反回神経麻痺など喉頭の神経の障害
 D副鼻腔炎や顎関節症など、喉頭以外の鼻・口腔の疾患
 E脳血管障害や認知症など

X)おわりに

 老齢に伴う声の変化なので「仕方がない部分」もあるのですが、「積極的に体を動かしように努めたら、声も大きくなった」とか、「ムコダインと麦門冬湯を1ヶ月飲んだら声質が戻った」とか、単純な対策で思いのほか大きな改善があった患者さんもおられます。また、「老化だ」と思っていたら、「副鼻腔炎による鼻声(閉鼻声)だった」など、別の病気が原因の場合もあります。諦める前に、「まずは検査と相談」でしょうか。老化対策は思い通りにならないのも事実ですけど・・・。


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