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70歳以上の高齢者には多かれ少なかれ現れる「はなみず」です。主として老化による鼻腔の加湿・除湿作用と加温機能の低下が原因です。「鼻水が出る」ので「風邪だ」と思って長期間に風邪薬を飲んでおられる高齢者がおられるのですが、逆作用になったり副作用がでて、かえって困っている患者さんもおられます。 |
Ⅰ)普通の症状と経過 主に70歳以上の高齢者で、風邪を引いたわけでもないのに、いつも鼻水が出る。いつも出ているけど、特に朝がひどい。くしゃみはない。 食事のときに鼻水が出る。特に熱いものや辛いものを食べている間がひどい。 しかし、くしゃみや鼻つまりはなく、咽頭痛や寒気などの風邪症状はない。一年中続いている。あれこれ薬を飲んだが治らない。 |
Ⅱ)原因 鼻腔の加湿・除湿作用と加温機能の低下のために、鼻を通る空気の水分が鼻孔周囲に溜まって流れ出るのが原因です。鼻を通る空気は、吸い込むときに加温と加湿がされます。肺の中に入った空気は高温・多湿です。その空気を鼻から出すときは、吸気とは逆に温度を下げて、空気の中の水分を鼻全体の粘膜に吸着させて取り戻し、水分が体から逃げないようにします。高齢になると鼻全体の粘膜の水分吸着力が低下するために、鼻孔の周りに水滴が溜まって鼻水になって流れ出るのです。この鼻水の成分は「単なる水に近い」ので、サラサラとしていて粘さはありません。 |
Ⅲ)治療 ①外気温が低く、体も温まっていない早朝がひどい傾向があります。鼻に入る空気を温める方法(スカイナー・スチーム*最下段を参照)は有効です。 ②体全体を温めるのも効果があります。 ③手先や足先だけを温めるのは、鼻と手足の交感神経を同時に刺激する方法ですが、有効な場合が多いのです。 ④血流改善剤はしばしば試してみて有効なことがあります。 ⑤漢方薬の中で、「冷え」に有効な薬「八味地黄丸と当帰芍薬散」が有効とされています。 ⑥起床後に早く体と気分が目覚めるような試み(乾布摩擦やウエイト・トレーニング)も有効だったとの報告があります。 |
Ⅳ)区別する必要がある病気 ①感染性鼻炎(風邪、副鼻腔炎など) ②アレルギー性鼻炎 ③外傷や脳の損傷(脳梗塞など)の後遺症による交感神経支配過誤 ④血管運動性鼻炎 ⑤特殊な鼻水(髄液漏など) |
Ⅴ)おわりに 「鼻水が出る」ので「風邪が治らない」と思って、長期間に風邪薬を飲んでおられる高齢者がおられます。効果がないだけでなく、「喉や眼が乾く」「鼻の中にカスがこびりつく」などの逆作用になったり、「眠気などの副作用でボケが進む」などの副作用が出て、知らず知らずにかえって困っている患者さんもおられます。老人性鼻漏は高齢になると多かれ少なかれ起こる変化です。まずは、その状態を知ること、そして受容すること、そして対応すること、です。「鼻水が止まらない=風邪を治す」と短絡するのは良くないのです。 |
スカイナー・スチームは販売休止中になっています。
パナソニックのスチーム吸入器(6000円目安)やオムロンスチーム式吸入器(6000円目安)やエーアンドデイ社超音波温熱吸入器(12000円目安)は代わりになると思います。