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めまい



一言
 平成11年愛媛新聞「診察室」の記事です。
後半の心因性の項は「しののめクリニック神経科・心療内科」の武田良平医師にお願いました。


   質問


 33歳の主婦です。2年前、目覚めると寝ころがっているのに天井がぐるぐる回るめまいに襲われました。翌朝から10日間ふらふらし、メニエル氏病の診断を受けました。
 1年後、立っているときふわっと力が抜ける感じがして、頭がふらふらしだしました。約1ヶ月で治りました。以後も2〜3ヶ月はふわふわすることがありました。
 半年前にも同じ症状が起こりました。めまいの検査ではめまいの反応はでませんでした。MRIも異常はありませんでした。
 いまはお灸と漢方薬で治療しています。頭痛、首こり、頭がフラフラする感じがあります。ゆううつになり、体力に自信がなくなって人ごみにでるのもおっくうになります。小さい子供もおりローンもあるので、仕事をやめることもできずどうしたらいいのかと思います。


 【答】


 
あなたのめまいを3つの時期に分けて考えるのがよいと思います。
 最初のめまいは内耳性の病気だった可能性が高いです。メニエル氏病、良性発作性頭性めまい、急性前庭炎などです。回転性めまいのあと浮動感が続きます。初期には眼振などのめまいの反応が認められます。内耳性めまいは初発症状が激しいですが、一過性一定期間で治まることが多いのです。耳鼻科で内耳の障害が残ってないことを証明する必要がありますが、何度か検査をして内耳検査の異常が出ないのであれば内耳は治っていると考えていいのではないでしょうか。

 1年前に起こっためまいは起立性循環血圧調節障害など自律神経系の不調が考えられます。立っているときに脳の血圧が下がって脳貧血と立ち直りを繰り返します。立っているときにふっと落ち込む感じがするのが特徴的な症状です。血圧の変動検査や心臓の働きが正常かどうかを検査します。ただ、自律神経疾患の症状は心の病でも似たような症状がでますので、鑑別診断は必ずしも容易ではないのです。

 さて半年前からのめまいは心身症など心因性めまいの疑いが濃厚です。心身症(しんしんしょう)とは、ストレスなどの精神的な原因によって体の病気が起こったり、前にある病気が悪くなったりする状態です。一般的なストレスに加え、心理的な葛藤があると心身症に結びつくといわれています。

 あなたの場合に当てはめると、いつ起こるかわからないめまいの不安や様々な葛藤がストレスになって自律神経系に影響を与え、頭痛や肩こり、便秘、フラフラ感やめまいを引き起こしているかと考えられます。そして、これらの症状がまたストレスとなって、さらには自律神経系を不調にするという悪循環になります。

 最初のめまいから経過が長いので、今のお気持ちは当然と思いますが、症状を治すには悪循環を断ち切る必要があります。原因が、はっきりすれば対処の方法もいろいろあります。お便りだけでの診断は出来ませんが文面から考えると、心身症の診察もお受けになるのがよいかと思います。

 内耳の病気は耳鼻咽喉科、自律神経や循環器の病気は内科、心身症の病気は心療内科や神経科を標榜しているクリニックや病院の受診をお薦めします。