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突発性難聴



 「起床したら右の耳が聞こえなかった」とか「歩いていたら急に耳鳴りがして、そのまま聞こえなくなった」とかが典型的な病気が始まったときの症状です。めまいが一緒に起こることもあります。症状の軽い人は「耳がつまった感じ」とか「小さな耳鳴りが急に始まった」とかの症状です。

 急性に起こる内耳の病気です。病気が起こった場所は内耳(正確には過牛)です。耳の奥4センチの所にあり、空気の波である音を電気波に変換する場所です。病気の原因はまだ解明されていません。内耳への血流が一瞬途絶えたのが原因という説が有力ですが、ビールス説もあります。いずれも本当の証明は出来ていません。医学上での解明が出来ていないので、私には(どんな医者も)「原因を説明することは出来ない」のだということをご了解下さい。
 経過は様々です。まず「命に別状はないこと」と「内耳以外に、例えば脳に悪い影響が出ることはない」のでご安心下さい。耳の聞こえの回復だけが問題です。


 一般的な経過は良好です。統計では80%の人は2週間以内に治ります。もちろん最初の障害が大きいほど治りは悪い傾向にあります。発症当時に30デシベル以内の障害ならば80%の人は完全治癒すると少し安心して下さい。完全治癒する人は発症後(来院してからではありません)1週間で治る傾向がはっきりと分かります。ですから、私は発症後1週間は当院で治療をして経過を見ます。あわてて大病院に紹介したりしているうちに治ってしまうことの方が多いからです。「案するより産むが易し」という言葉がありますが「案ずるより治るが多い」と言ってもいいでしょう。1週間たって治らないときは病院を紹介して検査や治療をお願いします。


 治療で有効なことがはっきりと分かっているのはステロイドホルモンの注射または内服です。発症後2週間以内に開始します。ステロイドホルモンの注射を始めて2日〜5日で治ってしまうことが大変に多いのです。そのほかにビタミンB12や神経代謝剤なども一応の有効性が証明されています。


 発症後4週間を越して治らない場合または残った症状は、そのまま治らないことが断然多くなります。症状固定すなわち後遺症になるのです。ですからこの病気の勝負は発症後3週間です。
 私は発症後7日間または当院来院後4日間は私が預かり治療をします。これを越して治らない場合または治る見込みがたたない場合は病院を紹介します。外来では出来ない治療や検査をする必要があるからです。たとえば、ステロイドホルモン剤を大量に使用する場合は、副作用防止のために入院管理が必要です。ステロイドホルモンは1週間以内の投与では副作用が出ることはまずありませんが、長期になれば観察が必要です。ステロイドホルモンの副作用は、胃潰瘍の悪化、糖尿病の表面化、顔が腫れる、感染防御力の低下などです。
 以上が突発性難聴の説明です。突発性難聴と鑑別しなければならない病気の代表が内耳水腫(メニエル氏病の一種)ですが、それは治療経過をみているうちに分かってきますので、そのとき説明をします。


 ポイントは

1)1週間ステロイド治療を中心にして当院で治療すること
2)1週間を越す場合は病院を紹介すること
     (その場合は入院をお奨めすることが多いです)
3)4週間を過ぎると治癒率は悪いこと
4)でも、多くは(80%)は1週間程度で治ってしまうこと


 以上はあくまで一般論であることはご了承下さい。また、治りの悪い人(20%)が予測される場合は別途に相談します。