洟垂れ小僧は「洟の垂れた子供」が元々の意味だが、実際は「経験の浅い未熟者」を罵って言うときに使われる。昔は子供といえば洟が垂れていたことと、洟を垂らしている子供は少し鈍い傾向にあったことが、この罵言の語源と思われる。 昔の洟垂れは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を意味していた。最近20年で成人の慢性副鼻腔炎は激減した。幼児期の急性副鼻腔炎に対する早期治療(抗生剤投与)が徹底したことと、栄養状態などを含めた衛生環境の改善が要因だ。20年前は耳鼻咽喉科は夏休みが忙しかった。蓄膿症の子供たちが夏休みに通院したからだ。耳鼻咽喉科医が少なく交通の便も悪くて就学中は通院できなかったのが理由だ。今は違う。保護者もよく理解していて、罹患したらすぐに治療を開始する。早期に治療を開始すれば2〜3週間で完治することが多い。
近年は蓄膿症に替わってアレルギー性鼻炎が多い。アレルギーシーズンに行った小学校健診では学童の30%にアレルギー性鼻炎が検出された。ハウスダスト・アレルギーは変わらず多いが、最近は花粉アレルギーが増加している。花粉アレルギーは2月〜3月のスギが有名だが、最近は4月〜5月、9月〜10月の草花(特にイネ科)が急増している。この時期の花粉アレルギーはまだ充分に理解が浸透していないので見過ごされ、知らずに苦しんでいる子供や患者さんは多い。症状は鼻だけではなく、のどのイガイガ感・夜間の咳・目の痒みなどでもあるので、心当たりがあれば受診を勧めたい。
終わりに、「鼻薬をきかせる」の用語は「恥ずべきある種の行為」の意味も含んでいて、耳鼻科医には少々迷惑だ。鼻の治療方法として大変有効なのに、目薬に比べると嫌われる傾向がある。使わず嫌いの「きらい」もあるので「鼻薬の効用」を見直して欲しい。 |