耳鼻咽喉科のいろいろな病気 |
松山耳鼻咽喉科会は松山市医師会広報部と協力して、愛媛・松山地域の新聞や広報誌に耳鼻咽喉科関連の原稿・記事を寄稿しています。新聞や広報誌に掲載された記事を順次転載します。
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無断転載を禁じます |
も く じ |
2005年 | 耳閉感 | |||
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耳がつまった感じ、耳にふたをしたような感じ(耳閉感)は、外耳道に実際に耳あかな どがつまって起こるほかに、中耳や内耳の疾患でも起こることがあります。 中耳は耳管という管(くだ)で鼻の奥の突き当たりの部分とつながっているのですが、 風邪の時などに、鼻やのどの炎症が耳管に及ぶと中耳の換気が悪くなり、鼓膜の内側と外 側の気圧に差ができます。鼓膜がピンと張りつめたようになり振動しにくくなり、耳閉感が 起こり聞こえも少し悪くなります。この状態の時に飛行機に乗ったりすると、中耳の気 圧の調節ができないため強い痛みが起こったりするので、風邪の時には注意が必要です。 さらに進行して中耳内に滲出液が溜まると聞こえもさらに悪くなります。 また、鼓膜に小さな穴が開いている時や、耳管が開きっぱなしになる耳管開放症、鼓膜 から内耳に音を伝える小さな骨が振動しにくくなる耳硬化症などでも耳閉感が起こる時が あります。 内耳疾患で耳閉感をきたすのは、突発性難聴の一部や過牛型メニエール病(めまいのな いメニエール病)などで見られる低音障害型感音難聴です。低い音が聞き取りにくい状態 なのですが、聞こえにくいのが常日頃感じとっている音より低い音なので、自分では難聴 に気付きにくく、聴力検査で初めてわかることが少なくありません。 また、頻度は少ないものの聴神経腫瘍、外リンパ瘻などが耳閉感の原因となっているこ ともあります。 このように、耳閉感をきたす疾患は多岐にわたります。中には早期に治療を開始しない と治りにくい場合もありますので、耳がつまった感じがするだけと安易に考えずに、早目 に耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成17年9月29日号 |
2005年 | 3月3日は耳の日です | |||
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3月3日は耳の日です 耳の日が制定されたのは、1956年3月3日。耳に関心を持ち、耳の病気だけでなく、耳が不自由な人々に対する社会的な関心を深めるため定められました。耳の仕組みと病気について、黒川耳鼻咽喉科 黒川浩伸さんにうかがいました。 めまいや耳鳴り 〈めまい〉 めまいは、ぐるぐる回る、ゆらゆらする、目の前が真っ暗になるなどのものがあります。原因の一つに内耳の障害があります。代表的な病気はメニエル病、頭位めまい症、前庭神経炎などです。メニエル病は、30〜50歳代の働き盛りの人に多く、ストレスや過労、睡眠不足などが誘因となって起こります。 〈耳鳴り〉 耳鳴りは誰にでも経験があるでしょう。すぐ聞こえなくなるものは心配ありません。しかし、いつまでも音が消えず、症状が続いて難聴を自覚するようであれば、早めに耳鼻咽喉科にかかり聴力検査を受けましょう。 難聴の種額 難聴は外耳・中耳の障害による伝音性難聴と、内耳やそれより奥(聴神経や脳)の障害による感音性難聴があります。 伝音性難聴は耳垢栓(じこうせん)、中耳炎、耳小骨の異常などが主な原因です。 感音性難聴はメニエル病、突発性難聴、内耳炎、加齢による難聴などがあります。 耳の主な病気 外来の患者さんで多い病気は、中耳炎、外耳炎です。感音性難聴の中では突発性難聴が比較的多く、ある日突然、耳鳴りや耳が”ポワン”、とした感じがして耳が聞こえにくくなります。感音性難聴の中では治療により治る可能性が高く、早期治療が重要になります。違和感を感じたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科に相談しましょう。 中耳炎 急性中耳炎と慢性中耳炎、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎などがあります。 ・なぜ風邪をひくと急性中耳炎に なりやすいの? 急性中耳炎は耳が痛くなり、熱が出たりします。鼻の奥には鼻と耳をつなぐ耳管があり、風邪をひいた時に鼻やのどの奥で起きた炎症が、耳管より中耳へ伝わるからです。 ・乳幼児やお年寄りに多い中耳炎 乳幼児は風邪をひきやすく、耳管が短くて太いぶん、感染を受けやすく、急性中耳炎になりやすいのです。 滲出性中耳炎は、乳幼児では急性中耳炎から移行する場合や副鼻腔(びくう)炎・アレルギー性鼻炎に合併する場合が多く、お年寄りは耳管の働きの悪化によることがあります。 定崩釣に聴カ検査を 受けるようにしましょう! |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成17年2月24日号 |
2005年 | スギ花粉症の治療薬 −点鼻薬と薬剤性鼻炎− | |||
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スギ花粉症でお悩みの方は鼻や目の症状が出現し、さぞかしお困りのことと思います。特に「鼻詰まり」は、鼻声や口が渇くなどの症状だけでなく睡眠不足や注意力低下の原因ともなる不快な症状で、一日も早い改善が望まれることと思います。 ところで、皆さんは薬剤性鼻炎というものをご存知でしょうか。実はこれは、薬局で購入できる点鼻薬を頻回に使用し続けると起こる疾患です。 通常、専門医はアレルギー性鼻炎の診療ガイドラインにしたがって、鼻詰まりがひどい場合には、鼻詰まりに効果的な内服薬を処方します。しかし、それでも効果が不十分な場合もあり、このような時に専門医は点鼻薬を処方します。専門医で処方する点鼻薬はステロイドホルモンを含んでおり、点鼻により鼻粘膜のアレルギー反応を抑えることを目的としています。このステロイドは微量で、吸収されてもすぐに分解されるため全身的副作用が少なく安全な薬とされています。 しかしながら、薬局で購入できる点鼻薬にステロイドは含まれておらず、代わりに抗ヒスタミン剤や血管収縮剤が含まれています。これは、血管収縮剤により鼻粘膜のむくみをとることで鼻の通りを良くする薬剤です。鼻詰まりがひどい時に限って使用するのであれば問題はありませんが、頻回の点鼻を続けていると次第に薬の効いている時間が短くなり、かえって鼻詰まりをひどく感じるようになります。これを薬剤性鼻炎といいます。 薬剤性鼻炎にならないためには、血管収縮剤の使用回数を減らすことが重要です。血管収縮剤の効いている時間は6時間程度ですので、点鼻回数は日に2、3回が適当と考えます。症状の強い時期に限り1週間をめどに使用を控えるようにしましょう。これ以上の点鼻が必要な場合には専門医を受診し、抗アレルギー剤の内服やステロイドの点鼻薬についてご相談下さい。自己判断で薬剤を使用するのではなく、適切な薬剤を適切な用法で使用することが重要です。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成17年2月号 |
2005年 | 花粉症対策 〜スギ花扮は大飛散の予想、発症前に原因究明と対策を〜 |
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教えて ドクター! テーマ:花粉症対策 スギ花扮は大飛散の予想 発症前に原因究明と対策を 国民の約8%が悩んでいるという花粉症。今までかかったことの ない人でも急に発症する場合もあり、飛散情報や対処法が気になる ところです。ふつうは、2月から春先までがスギ花粉の飛散時期。 シーズンを前に、末光耳鼻咽喉科の末光清貞先生に聞きました。 予想飛散量は例年の2〜10倍 毎年悩んでいる人は、早期対策を心掛けて 「花粉の飛散量は前年の夏の気温に左右されます。来年は今年の夏の猛暑の影響で、スギ花粉の大量飛散が予測されています。地域差はありますが、例年の約2〜10倍の飛散量となりそうです」と末光清貞先生。すでにスギの雄花が豊かに実り、大量飛散の兆しもうかがえます。「飛散時期も、例年は2月後半〜4月前半くらいですが、今年は異常気象のために狂い咲きで、スギ花粉の飛散が10月中旬から確認されている所もありました。敏感な人はすでに発症し診察に訪れています」。特に毎年症状が出る人は、大量飛散の前に、早めの対策が必要です。また近年、発症が低年齢化する傾向にあるとか。「小学校低学年で花粉症や喘息、アトピーなどアレルギー疾患を持つ子どもたちが増えています。中には3、4歳で花粉症にかかっている子も。学校行事で外に出かけたために発症する場合もあるので、アレルギーがあるかどうか知っておくことも大切です」。 基本は花粉に近づかないこと 抗アレルギー剤を早親服用 花粉症の症状は、鼻づまりタイプ、鼻汁タイプに分かれます。「ほかに目のかゆみ、皮膚の炎症などが起こる人もいますが、対処の基本は花粉に触れないこと。特にスギ花粉が多く飛散する2〜3月は、外出を控える、窓を開けない、まめに掃除、マスクやメガネで防御、外から帰つたらすぐに着替える、ゴルフ場など花粉の多い場所へ行かないなど、できる限り花粉と接触しないように心掛けてください」と末光先生。 「抗アレルギー剤などの内服薬を、シーズンの2週間前からのみ始めると発症を抑えることができます。のんでも眠くなりにくい薬など、いろいろなタイプの薬があるので、症状や生活パターンなどに合わせて選ぶことができます。耳鼻科医と相談して体質に合った薬を探しましょう」 ほかに、レーザーで粘膜を焼く手術療法もあるそうですが、これは一時的な効果。「点鼻薬や目薬などは、習債性がついてかえってよくないものもありますから、医師に相談して処方してもらって」とも。 大切なのは、何のアレルギーを持つているのかを知っておくこと。これは、血液検査で簡単に調ぺることができます。また、日ごろの規則正しい生活と適度な運動も大事です。「体を鍛えて抵抗力を高めることが、アレルギーの予防につながりますから」と、末光先生は話しています。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リビング 平成17年1月1日号 |
2005年 | 杉花粉の大量飛散の恐れ ー今年は非常に多いとの予想ですー |
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杉花粉は、早い年では1月中頃から、遅い年でも2月後半には飛び始めます。杉は風媒花(ふうばいか)と云って、風が花粉を飛ばしてめしべに受粉させます。他のほとんどの花は、虫媒花(ちゅうばいか)といって虫が蜜をなめるときに体に花粉が付くことによって受粉の手助けをします。ですから虫媒花の花粉は遠くまで飛びませんが、風媒花では花粉は遠くまで届きます。杉の花粉は春一番などの強い南風に乗って、何十キロと飛ぶといわれています。 その杉花粉は、前年の夏の暑さと雨の量などが次の年の花粉の付き方に関係します。昨年の夏が非常に暑かったので、今年は例年の5〜6倍、昨年の9〜10倍の花粉が付いており、杉花粉症の方にとっては大変つらい年になりそうだとの予報が出ています。数年ごとに周期的に花粉の多い年があり、今年が当たり年だそうです。 昨年は症状が軽くて治療するほどでもなかった人でも、今年は症状が強くて、目が痒い、鼻が詰まっているのに水ばなが多くて、くしゃみも一回出始めると立て続けに出て大変だというようになるかも知れません。毎年症状の強い人はもっと大変になるでしょう。夜など熟睡が出来ないため、翌日の仕事にも差し支えたり、鼻ばかりかんで鼻が真っ赤になり、ティッシュの箱をずっと抱えているなんてことになるかも知れません。 そんな訳で今年は、予防的に薬を飲み始める早期治療を、去年より早く始めた方が良さそうです。花粉が飛び始める2週間前から服用したらいいといわれていますが、飛び始めるのは、その年の日照時間と気温により違います。暖かい晴れた日が続くようなら、早くから花粉を飛ばすでしょう。1月始めから遅くとも2月に入ったら、予防的な薬を飲み始めて下さい。症状の発症を抑え、起こっても軽くなります。早めの耳鼻咽喉科受診をおすすめします。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成17年1月20日号 |
2004年 | 子供はいびきをかきやすい | |||
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子供はいびきをかきやすい いぴきは睡眠時無呼吸症の症状として最近関心が高まつています。睡眠時には咽頭(□の中)の筋肉が緩み、舌や粘膜が呼吸とともに吸い込まれて、空気の通り道が狭くなります。このとき気流に乱れが起きて、咽頭の粘膜が震える音がいぴきとなります。幼椎園から小学校低学年の子供では、普通でも鼻の奥にあるアデノイドや扁桃が大きく、咽頭の空気の通り道を狭くしています。いぴぎをかきやすい状態といえます。風邪をひいてのどや鼻の粘膜が腫れると、呼吸の通り道はさらに狭くなり、いぴきは一時的にひどくなります。 毎晩のようにいぴぎをかく場合は、アデノイド・扁桃の肥大や鼻の慢性的な病気を疑ってください。特にアレルギー性鼻炎は低年齢の子供にも多く見られ、いびきの原因になります。 録音・録画が診察に役立つ 軽いいびきは経過をみてもよいでしょう。親が息苦しく感じるようないぴき、呼吸の止まっている時間があるようないぴき、何虔も目を覚ましたり、授業中に居眠りをするような症状がある場合には、医師の診察を受けてください。特に肥満がある場合にはいぴきもひどく、心臓や肺の病気を合併していることがありますから注意が必要です。医師にいぴきの状況を説明するのは難しいものです。テープやピデ才に録音、録画して持っていくと大変役立ちます。 鼻炎など鼻の病気がある場合には、これを治療することでいびきは軽くなります。アデノイド・扁桃の肥大が原因と考えられる場合には、いびきが軽けれぱ一-二年様子をみてもよいでしょう。ひどいいびきの場合には、摘出手術をお勧めします。一週間くらいの入院が必要ですが、非常に効果のある治療法です。 いびきは鼻やのどが関係する呼吸困難の症状と考えて、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | accrete 10月号 |
2004年 | イネ科花粉アレルギーに気がついてね! | |||
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お盆頃から、イネ科の花粉アレルギーの患者さんが増えてきます。運動会の練習、草刈、犬の散歩などではご注意ください。
日本ではスギ花粉アレルギーが有名ですが、実は最初に発見された花粉アレルギーはイネ科花粉症なのです。牧草の枯れ草の上で寝ていて発症するので枯草熱と呼ばれていました。「不思議な風邪」と思われていたのですね。19世紀の始め頃に「牧草の花粉が原因だ」と発見されました。日本には明治時代に牧草として輸入され野草化しました。田圃の畦や土手などにたくさん繁茂しているイネの穂の形をした植物です。カモガヤと言う種が有名です。日本人の8〜9%程がイネ科花粉症と言われています。ずいぶんと多いのです。 イネ科花粉症の症状は、突然のクシャミ・鼻水、目のかゆみ、しばらくしてからの鼻つまりですが、咽の痛みやイガイガなどの咽の症状も強い傾向があります。風邪ととてもよく似た症状です。花粉の飛散距離はせいぜい200m程度で、高さもビルの7階以上のところには届かないと言われています。だから雑草が咲いている近くに居るかどうかで、症状が大きく変わります。患者さんが「自分はイネ科の花粉症だ」と気付かなかったり、知っていても「これは花粉症かな?、どうかな?」と迷う理由なのです。 イネ科雑草は空き地・土手・畦畔、休耕地などに繁茂しています。5月の連休頃から飛び始めて、10月の秋祭り頃まで飛散が続きます。7月はちょいと症状お休みの患者さんが多いですが、お盆を過ぎるとまた増えてきます。 寒気もなく、思い当たることもないのに、急にクシャミや鼻水、のどのイガイガ、目のかゆみなどの症状がでて、しかも何度も繰り返す場合はイネ科(雑草)の花粉アレルギーを疑ってみてください。みなさんが「イネ科(雑草)花粉アレルギーかな?」って疑うことが、診断の始まりです。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成16年9月号 |
2004年 | 8月7日は鼻の日 ―鼻の病気の色々な症状― | |||
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日常生活で鼻がつまる、鼻水が多いなどの症状は誰でも経験があると思います。また、においがわからない、鼻声、くしゃみ(スギ花粉症やアレルギー性鼻炎)で困った事もあるでしょう。このように症状が直接に鼻と関連している場合には耳鼻咽喉科を受診する事が多いと思います。しかしながら、直接に鼻と関係がないような症状が、実は鼻の病気が原因となっている場合があります。
頭が重い、または目の奥が重いといった症状を自覚した場合には、副鼻腔炎(ふくびくうえん、いわゆる蓄膿症)が原因とかもしれません。脳の病気を心配されて頭部CT検査を受け、副鼻腔炎が発見されることもあります。軽症の副鼻腔炎と診断されれば、数週間の通院で症状が改善しますので放置せずに診察を受けて下さい。 ひどいいびきや睡眠時無呼吸も、鼻の病気でみられます。鼻の粘膜のむくみや真ん中のしきりのゆがみ(鼻中隔彎曲、びちゅうかくわんきょく)による鼻詰まりで鼻呼吸がうまくできていないことが原因となります。目覚めた時に、口やのどがカラカラに渇いている場合も同様に鼻詰まりが原因かもしれません。症状がひどい場合には、鼻詰まりを治す手術が必要になります。その他に、口臭、のどのイガイガ感、痰のからんだ咳も鼻の病気が原因となることがあります。気になる症状がいつまでも続く場合は、耳鼻咽喉科専門医による診断が重要ですので、お早めに相談して下さい。 ところで、8月7日は「鼻の日」です。松山耳鼻咽喉科会では8月1日から10日の間、「鼻の日インターネット医療相談」を行う予定です。鼻に限らず、耳やのどに関する相談もお受けいたします。詳細は松山耳鼻咽喉科会公式ホームページhttp://www.sue.jp/m-ent/ をご覧の上、どうぞお気軽にご相談下さい。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成16年8月4日号 |
2006年 | 耳鳴りとメニエール病 | |||
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ご質問: 36年前にメニエール氏病と診断され、耳鳴りが続いています。昨年暮れにブーという音が加わりました。よい治療法を教えてください。(69歳、女性) お答え: 原因はメニエール氏病か診断を 耳鳴りは難聴を伴うことが多く、原因には内耳・聴神経・中枢神経障害、頸椎異常、あごの疾患、頭蓋内や頸部の血管異常、耳や口蓋の筋肉の異常収縮、高血圧、糖尿病、薬剤などがあります。まずご質問の耳鳴りがメニエ−ル氏病によるものか診断する必要があります。 メニエ−ル氏病は原因不明の内耳疾患で、耳鳴りの原因の一つです。めまい、難聴、耳鳴り、耳閉感がおもな症状で、このような症状を急に起こす発作期と、症状が落ち着く間欠期があります。間欠期には通常症状が消失しますが、内耳に障害が残り難聴、耳鳴り、軽いめまい感が続く場合があります。 ご質問では詳細が不明ですが、メニエ−ル氏病で内耳障害が残った可能性があります。しかし、同様の症状を起こす疾患はほかにもあり、特に内耳から脳につながる聴神経にできる聴神経腫瘍は注意が必要で、早期発見早期治療が重要です。 耳鳴りを軽滅する治療もある 治療の第一は原因疾患の治療です。原因疾患の治療後もご質問のように長期間耳鳴りが残り気になる場合、耳鳴りを止める治療法はまだありませんが、耳鳴りの軽滅を図ることはできます。 一般には薬物療法が主で、精神安定剤、ピタミン剤、血管拡張剤、代謝改善剤などが用いられまず。局所麻酔剤の静脈注射で一時的に耳鳴りを止めることがでぎます。副腎皮質ボルモンを中耳に注入する方法もあります。 音を利用した治療には、@難聴の方では補聴器の装用A大きな音を聞くと一過性に耳鳴りが消失する現象を利用したマスカー療法B耳鳴りに順応することで耳鳴りがしても意識しないように訓練するTRT療法(耳鳴り順応療法)があります。とくにTRT療法は近年、欧米で高い効果が示され、日本でも一部の医療機関で行われるようになってぎています。また症状によっては精神科的な治療を要します。 耳鳴りは重篤な疾患が潜んでいる場合があり、適切な診断を行い治療を進める必要がありますので、耳鼻咽喉科専門医で相談されることをお勧めします。 |
2003年 | 幼児の難聴 | |||
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Q:幼児の難聴について、原因や気をつけること、県内外の施設や対応、参考図書などを教えてください。(34歳、女性)
A:言語の習得には、ゼロ歳から四歳ごろまでの聴覚機能が最も重要です。この時期に中程度以上の難聴があると、言語の発達が遅れ、心身の発達にも悪影響を与えます。幼児の難聴は、早期の発見と、早期の療育開始が強く望まれます。 乳幼児期に発見される難聴の主な原因は、先天的なものとして未熟児や耳の奇形、風疹やサイトメガロウイルス感染症、遺伝性、ダウン症などがあげられ、出生後のものとして中耳炎の後遺症、おたふくかぜや髄膜炎、自閉症や心因性などがあげられます。 幼児期に好発する急性中耳炎や滲出性中耳炎は、繰り返し長期に及ぶことが多く、難聴を増悪させることがあるので、放置しないことが重要です。そして、しっかり聴覚管理をする必要があります。また、日常から音に対する反応や年齢に応じた言葉の発達に注意し、たとえ検診などで異常がなくても、疑わしいときは耳鼻咽喉科専門医を受診してください。 施設について、愛媛大学教育学部障害児教育講座、愛媛県身体障害者福祉センター、視聴覚福祉センターを中心として、県内数カ所の福祉施設、保険センター、ことばの教室などが整備されています。対応については各施設で異なりますので問い合わせが必要です。療育には、難聴や言語発達の程度に応じた種々の段階の取り組みが求められ、耳鼻咽喉科医、言語聴覚士、療育担当者らの連携が大切です。県外でも取り組みはほぼ同様だと思われます。 参考図書には、『きこえの世界へ』(金山千代子、今井秀雄著、ぶどう社)『難聴児の幸せのために』(「母と子の教室」親の会編、ぶどう社)『”音”を見たことありますか』(E&Cプロジェクト編、小学館)『音遊びの聴覚学習』(徳島県立聾学校編、学苑社)などがあります。 最近の研究で、ゼロ歳児から難聴の発見が可能となり、先天性高度難聴に対する生後六カ月未満からの補聴訓練や人工内耳使用による成果が多く報告されるようになりました。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | accrete 11月号 |
2003年 | 秋の花粉症 | |||
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さて、春のスギ花粉症は有名ですが、秋にも花粉症があるのをご存知でしょうか。 今年は梅雨時から天候不順で、雨が多く降りました。9月、10月ごろには道端や土手に行くと雑草が目立ちますね。これらが秋の花粉症を起こします。春のスギ花粉症と同じく、他の花粉症も近年増えてきています。
春は、スギ・ヒノキ花粉症に続いて、5月から7月ころにはイネ科植物(カモガヤ、ハルガヤ、オオアワガエリ、スズメノテッポウなど)の花粉症がでてきます。 夏も終わりごろの稲の花が咲くころには再度イネ科の花粉症が散発します。そして9月から10月にかけて、主に秋のキク科雑草などの花粉症が出てきます。ブタクサ、ヨモギ(キク科)、カナムグラ(クワ科)などが秋の花粉症の代表的な植物です。 毎年秋になると、鼻水・鼻閉・くしゃみや眼のかゆみなどの症状が続くときには、花粉症を疑う必要があります。症状が似ているので、鼻風邪か花粉症かわかりにくいこともありますね。 今までの症状や鼻内の所見、鼻汁の検査などで花粉症かどうかは、ほぼ診断はつきますが、原因植物の確定には血液検査や皮内テストを行います。 近年、副鼻腔炎(蓄膿症)や中耳炎などの感染性の疾患は、抗生物質などの進歩で重症化することは少なくなりました。かわってアレルギー性疾患(花粉症を含めたアレルギー性鼻炎、ぜん息、アトピー性皮膚炎など)が増加してきています。花粉症も低年齢化しています。従来は大人の病気でしたが、今では小児から発症することも多くなってきています。 毎年この時期に鼻の調子が悪くてお困りの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成15年9月11日号 |
2003年8月 | あなたの鼻は大丈夫? | |||
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鼻がつまるということは誰にでもよくあることです。一時的なものであれば良いのですが、長い間つまると大変苦しいものです。例えば花粉症のある人でも、くしゃみや鼻水だけならティッシュがたくさん必要かもしれませんが、なんとか我慢できるものです。ところが鼻づまりがひどくなるとたまらなくなって来院するというケースが多々あります。鼻がつまると、いびきをかく、頭痛がする、夜間に眠れない、口がカラカラに乾く、喉が痛いなどの様々な症状を引き起こすからです。重症かつ長期にわたる鼻づまりでは、最近話題になっている夜間無呼吸症候群の原因になっているケースもあります。
鼻の大切な役目のひとつに、匂いを感じることがあります。匂いがわからないことを嗅覚(きゅうかく)障害と呼びます。症状の軽い人を含めると嗅覚障害は結構多くの方に見られます。においがわからないと、食事がおいしくなかったり(これは鼻をつまんで食事をすると実に味気なく感じるものです)ガス漏れにも気づけません。そして何よりも、女性の訴えに多いのですが、料理の味付けが濃くなって困るという方をよく見かけます。 嗅覚障害は、発症初期においては治療して改善することが期待できますが、何ヶ月も経ってからでは嗅覚が戻らないこともあります。風邪の時にも匂いがわからなくなることがありますが、風邪が治ってからも匂いがわからない時は要注意です。 鼻づまりや嗅覚障害は感冒、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、腫瘍など色々な病気が原因で引き起こされます。そして症状の改善には、原因になっている病気の早期の診断と専門的な治療がポイントになります。 さて、8月7日は「鼻の日」です。時々はご自身の鼻の健康度もチェックしてみて下さい。あなたが一生の間、毎日使う大切かつデリケートなものですから。 なお、松山耳鼻咽喉科会では今年も、8/1(金)から8/10(日)まで「鼻の日インターネット医療相談」を行います、くわしくは松山耳鼻咽喉科会ホームページ(http://www.sue.jp/m-ent)をご覧ください。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成15年8月7日号 |
2003年3月 | 花粉症のお薬 | |||
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今年もスギ花粉症の方にとってつらい時期になりました。読者の皆さんの中にも病院や薬局で鼻炎の治療薬をもらっている方がいらっしゃることでしょう。さてこの内服薬ですが、一般の薬局で購入できるお薬と病院で処方されるお薬とは何が違うのでしょうか?答えを簡単に例えて言うならば市販薬はレディーメイドで、病院で処方されるお薬はオーダーメイドだということになります。市販されているお薬にもいろんな種類のものがありますが、その多くは誰が飲んでも安全であるように作られています。そのためそれぞれの薬効成分が控えめに配合されていて本来の鼻炎に対する効果が弱かったり、その半面、安全性が十分に確立された歴史の長い成分を使うことから最新のお薬に比べて眠気などの副作用が逆に強かったりします。一方、病院や診療所では医師が患者一人ひとりの症状を聞き、鼻の中を診察した上で患者さん個々の病態に合わせたお薬を選択して処方します。一口に花粉症のお薬といっても即効性があるけれど寝むけの強いもの、眠気は出ないが効果発現が緩やかなもの、即効性をある程度保ちながら副作用を抑えたものなどさまざまなタイプのお薬があります。またお薬によって鼻水に対して効果の高いもの、鼻づまりに効果の高いものなどの特徴があります。例えば患者さんが「鼻が詰まる」と訴えられた場合でも、鼻水などの分泌物が鼻の中に溜まっていて「詰まる」場合もあれば、鼻の粘膜が強く腫脹して鼻内の空気の通り道が完全に閉塞された場合とがあります。前者の場合は鼻をかめばある程度鼻が通るようになりますが、後者の場合は鼻をかもうにも詰まってしまってかむことができないばかりかひどいときには鼻水がポタリポタリと落ちてきてとても鬱陶しい状態のものです。当然これらに対するお薬も異なるわけで、前者の場合は鼻水を抑制する作用の強い薬剤を選択し、後者の場合は鼻粘膜の腫脹を軽減する作用の強い薬剤を選択します。場合によっては2種を併用することもあります。また症状としては同じような場合でも花粉の飛び始めたシーズン当初と最盛期になった頃の鼻内の状態もまた違ってきますし、その変化の程度も人それぞれ違いますから、個々に合わせてどんなお薬を選択するかが医師の腕の見せ所でもあります。もちろん同じお薬でも飲む人によって効果の程度も副作用の強さも違ってきますから、シーズンの始まりから終焉まで1種類のお薬であっさり済んでしまう患者さんも少なくありませんし、通常の治療薬ではまったく歯が立たなくてレーザー治療などの手術的治療を必要とする場合もあります。
いずれにしましても市販のお薬を使っていて満足のいく効果が得られない場合や眠気やふらつきなどの副作用が気になる場合は、是非ともお近くの医療機関に受診されて担当医師とご相談してみてはいかがでしょう。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | 奥様ジャーナル 平成15年3月号 |
2003年2月 | 花粉症について | |||
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花粉症は、花粉に対するアレルギー反応によって、鼻・目・皮膚等の症状が現れる疾患です。鼻の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが3大症状です。今の季節、スギ花粉が飛び始め、いよいよスギ花粉症の季節の到来です。花粉症のうち、スギ花粉による花粉症は症状がひどく、症状の程度は人により違いますが、ひどい場合は、37度位の軽い発熱を伴ったり、軽い全身倦怠感や、のどのイガイガ感やかゆみや、咳を伴う人もいます。風邪と区別し難い場合もありますので、耳鼻咽喉科を受診し、きちんと診断してもらいましょう。
花粉症の診断は、鼻水の中に好酸球というものが出ていたり、血液の中に花粉に対する抗体ができていれば、花粉症と診断できます。また、鼻の中を観察し、鼻の粘膜や鼻水の状態を調べて、花粉症の程度を判断することが非常に重要です。鼻の粘膜や鼻水の状態を把握し、症状と併せて判断したうえで、薬を適切に選択しなければ効果があがりませんので、耳鼻咽喉科にて診察を受け、自分に合った適切な薬を処方してもらうことが大切です。本格的に花粉が飛び始めると、内服薬だけでは十分な効果が得られないことが多く、点鼻薬や、ネブライザー等の局所処置の併用も必要です。症状のひどい方、薬を飲むだけでなく、耳鼻咽喉科にて局所処置をこまめに受けられることをおすすめします。 最後に、花粉症の発症には、ディーゼルエンジンから出る、ディーゼル排気粒子が関わっていることが、実験で証明されています。花粉症は、日本では昭和30年代前半迄は、無かったと言われていますが、近年急速に増加し、さらに小さな子供にまで拡がり、現在約25%の人が罹患しているとも言われます。これは、ディーゼルエンジンによる大気汚染が深く関わっています。首都圏の様なディーゼル車の規制が、全国的に必要なのではないでしょうか。。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成15年2月13日号 |
2003年1月 | もうすぐスギ花粉がやってきます ー花粉情報を上手に活用してくださいー | |||
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年ももうすぐスギ花粉症の季節がやってきます。2002年の夏は猛暑でしたので、今年のスギ花粉の飛散量は昨年よりも多くなりそうです。
花粉症の予防と治療の効果は、セルフケアとメディカルケアの適切な組み合わせによって決まります。つまり花粉情報を上手に活用して、吸い込む花粉の量を少なくすれば、少ない薬で効果的に治療が出来、シーズンを快適に過ごすことが出来るのです。花粉情報のなかで最も重要な情報はシーズンに飛んでくる花粉の総量です。スギ花粉には豊作年、不作年がありますが、今年は例年より花粉量は多くなりそうですので、去年は花粉症の症状が出なかったからと油断してはいけません。次に重要なことは花粉シーズン全体の流れをつかむことです。飛散開始時期は予防や治療を始める目安になります。スギ花粉の飛散開始日は、1日の平均気温が7℃を超え、最高気温が10℃以上になると花粉が本格的に飛び始めるものと考えてください。2002年の松山市のスギ花粉の初観測日は1月29日で飛散開始日は2月2日でした。初観測日と飛散開始日の間には2週間程度のずれがあるのが普通です。この間にも少量の花粉が飛散するために花粉に敏感な患者さんは症状が出てしまいます。毎年早めに症状の出る患者さんは初飛散の観測日の情報があったらなるべく早めに医療機関に相談したり、花粉を防ぐための対策をしたほうがよいでしょう。最盛期(2002年は松山市では2月20日から3月5日)には数日の間にシーズン全体の総花粉量の3〜6割が飛びますから,この数日だけでも外出を控えて花粉を吸わなければ,花粉症発病の予防にもなりますし,症状の重症化を防止することも出来ます。 なお、松山市の花粉情報は松山耳鼻咽喉科会ホームページhttp://www.sue.jp/m-ent/ で毎日掲載されています。是非ホームページを覗いて見てください。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成15年1月16日号 |
2002年11月 | 「タバコと耳鼻咽喉科の病気 〜禁煙で喉頭ガンを予防〜」 | |||
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喫煙は肺ガンをはじめとする各種臓器のガンや心筋梗塞などの虚血性心疾患、脳血管障害、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患など、ほとんどすべての臓器のさまざまな疾患に影響を及ぼしています。タバコの煙の成分のうちニコチン、タール、一酸化炭素が3大有害物質と呼ばれていますが、他にも4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち400種類に毒性があり、約40種類は発ガン性物質として知られています。日本人の死因の第1位はガンですが、喫煙はガン全体の30%強に関係していると考えられています。呼吸器官はタバコの煙が直接通過するので当然多大なる影響を受けますが、煙の中のタール成分は口腔、咽喉頭部に最も多く付着します。肺ガンの70%はタバコに関係があると考えられていますが、喉頭ガンの場合はなんと97.7%(!)に関係があります。「喉頭ガンはタバコによって生じる」と言っても過言ではありません。その他にも口腔ガン、舌ガン、咽頭ガンも喫煙者の発ガン率が非喫煙者よりかなり高くなっています。
ブリンクマン指数というものをご存知でしょうか。タバコの1日本数に年数を掛けた数字です。400−500(例えば1日20本、20年間喫煙)を越えるとガンの発生率が急増します。特に若いうちに喫煙を始めると発ガン率が高く、40−50才代以上の喫煙者は平均的に「要注意」領域から危険域に入っている可能性があります。 もう一つ厄介な問題が受動喫煙です。直接喫煙しなくても副流煙を間接的に吸うことによって深刻な影響を受けるのです。副流煙は主流煙よりも低温で燃焼するため、有害物質の濃度が一層高まり、ニコチンで2−3倍、タールに含まれる発ガン物質で19−129倍、一酸化炭素で4.7倍という統計があります。小児では家族特に両親が喫煙者の場合、上気道感染、中耳炎、気管支炎、肺炎、喘息、乳幼児突然死症候群などの発症率が高く、妊娠女性の場合、種々の妊娠合併症の頻度が高まります。配偶者が喫煙者の場合、非喫煙者の方もガンの発生率が高い結果が出ています。 今年の5月31日はWHO(世界保健機関)による世界禁煙デーでした。「喫煙は病気の原因のうち、予防できる最大のもの」とのスローガンを掲げました。ガンの場合予防できないガンもありますが、特に喉頭ガンの場合は「予防できるガン」と断言していいでしょう。特に喫煙者でのど、声などが気になる方は一度耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | 奥様ジャーナル 平成14年11月号 |
2002年8月 | 8月7日は鼻の日 | |||
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8月7日はハナ(鼻)の日です。
鼻は昔からことわざや小説の題材にもよく取りあげられています。 鼻と縁の深い作品としては海外では映画でおなじみの『シラノ・ド・ベルジュラック』、日本では古くは今昔物語に鼻の大きな僧侶の説話があります(大正時代に芥川龍之介が『鼻』というタイトルで小説化しています)、落語では『鼻ねじ』『鼻ほしい』『おかふい』が、芝居では藤山直美が演じる『鼻利き源兵衛』など枚挙にいとまがありません。 ほとんどの場合、鼻は単に顔の中心にある美醜の判断材料として取り上げられるばかりです。 しかし実際には鼻は複雑な構造と呼吸をすることに加えて、においを嗅ぐ、吸う空気を暖めて湿気を与える、さらにはくしゃみなどで吸い込んだホコリなどの異物を取り除いたりとさまざまな役割をもっています。 そのために鼻からいろいろな症状がでたり思いがけない病気が鼻からみつかることがあります。 例えばかぜの時に、鼻を悪くすると黄色い鼻汁がでますがさらに鼻の周辺の部分(副鼻腔といいます)にまで広がると頬や前頭の圧迫感や痛みがでてきたり頬がはれてくることもあります。また、鼻の奥とのどはつながっていますから鼻汁が鼻の奥からのどに流れるようになると痰混じりの咳がでやすくなったり、のどの不快感が長く続くようになる こともありますし、鼻からの出血がのどに流れると赤かっ色の痰がでることがありますし、なんとなくくしゃみ・水のような鼻汁続くときにはカビ・家のホコリのアレルギーや自律神経機能異常が見つかることもあります。
今年、鼻の日にちなんで松山耳鼻咽喉科会ではメールによる「鼻のインターネット無料相談」を行います、興味のある方は是非どうぞ。くわしくは松山耳鼻咽喉科会ホームページ(http://www.sue.jp/m-ent)をご覧ください(期間は8/1(木)から8/10(土)です)。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成14年8月1日号 |
2002年6月 | 花粉症は春先だけではない | |||
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花粉症というと、スギ花粉症を思い浮かべますが、実際はスギ花粉以外の多くの花粉が原因でも起こります。春先以外にくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状がみられる場合、かぜと思ってしまう方が多いのですが、スギ花粉とは異なる原因のアレルギー性鼻炎で症状が出ている可能性があります。
4月上旬から5月中旬にはヒノキ、4月上旬から6月中旬にはマツやカシの花粉が飛びます。中でもヒノキは重要で、スギ花粉 症が長引いていると思っている方の中にはヒノキ花粉症の方が多く見られます。
3月下旬から6月下旬にはイネ科植物による花粉症に注意が必要です。カモガヤ、チモシー(オオアワガエリ)、ホソムギ、ハルガヤなどです。これらは牧草として輸入されたものですが、今では雑草化し、全国至る所にみられています。秋には在来種のイネ科花粉も飛散しますが、これによる花粉症は少ないとされています。イネ科花粉症のうちでも代表的なカモガヤ花粉症は、スギ花粉よりも眼のかゆみなどの症状が強く、幼児期から発症することが多いのが特徴です。 8月下旬から11月上旬には、ブタクサ、ヨモギなどのキク科花粉症やイラクサ(イラクサ科)、カナムグラ(クワ科)などによる花粉症がみられます。実は日本で初めて花粉症が報告されたのはブタクサ花粉症で、北米では花粉症の75%がブタクサ花粉症であるとの報告もあります。 これらの草木は道端など身近に見かけるものですが、その花粉は、樹木の花粉ほど広範囲には飛散しません。原因がわかれば、スギなどよりは花粉を避けやすいと言えます。 春先以外でも、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が続く場合は、医療機関を受診されることをおすすめします。松山耳鼻咽喉科会では、ホームページに花粉情報を掲載しておりますのでご活用いただければ幸いです。ホームページはhttp://www.sue.jp/m-ent/ です。 |
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松山耳鼻咽喉科会 | リック 平成14年6月13日号 |
2002年2月 | 杉花粉症の予防と工夫 | |||
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今年も2月に入ると杉花粉が飛び始めます。杉花粉症の人にはつらい季節です。ひどい人では、一日中クシャミが出て、タラタラと鼻水が流れ、ティッシュの箱が手放せません。鼻全体がワーンと詰まって、ぐっすり夜も寝られません。昼間もボーとして仕事や勉強も手に付かなくなります。昔は怠け者と誤解されたこともあったようです。症状の軽い人では、時々クシャミ、鼻みず、鼻づまりが出るだけでひどくないため、風邪がなかなか治らないと思って、まさか杉花粉症だとは知らなかった方もいます。程度は人により違いますが、毎年仕事や勉強に影響の出る人は、症状がないときから予防的治療が必要です。3月にはものすごい量の花粉が飛びますから、花粉の飛び始める1ヶ月以上前から、その人にあった治療を始めた方がいいです。早くから予防薬を飲んでおくと症状が出ても軽くて楽なようです。今は色々新しいアレルギーの薬や治療法が開発されています。昔に比べるとずいぶん花粉症もよく治るようになってきましたが、杉花粉が飛び始めると、症状を抑える治療だけでは効果が上がりません。花粉を沢山吸わないようにすることがもっともだいじなのです。杉花粉は、春独特の強い南風に乗って、30キロを超えて飛ぶと云われています。それが屋根がわら、アスファルトの道路上などで溜まっては、又風で舞い上がります。天気のいい日には、長時間窓を開けておくのはよくありません。特に雨上がりの午後は、花粉がよく飛ぶと云われています。外で干した布団、洗濯物は、布団叩きなどでよくはたいてから取り込んでください。出来れば部屋の中で乾かしましょう。乾燥機は必需品かもしれません。外出する時は、銀行強盗スタイルで出かけましょう。大きなマスク、頭をすっぽりおおう帽子、出来るだけ大きなめがね、体全体を隠してしまうコートは、花粉が体に付かないように守ってくれます。また出来るだけ車や電車などを利用して下さい。症状のひどい子供には、車で学校への送り迎えするのもいいかもしれません。屋外スポーツは控えて、休み時間も校庭に出ない方がいいです。外から帰ったら、玄関先で髪の毛や衣服をよくはたき、顔や手を洗って、部屋に花粉を落とさないように気を付けてください。杉花粉は4月の始めには飛ばなくなりますが、それまで上手な予防と正しい治療でこのシーズンを乗り越えてください。
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松山耳鼻咽喉科会 | 奥様ジャーナル2002年2月号 |
2002年1月 | インフルエンザ 最新情報Q&A (南海放送2002年1月17日放映取材を改編) |
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Q.インフルエンザが流行ってきています。インフルエンザと風邪(かぜ)との違いは?
A.インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によって発症する急性呼吸器感染症で、高熱と全身症状をともないます。かぜは主にライノウイルスやRSウイルスなどのさまざまなウイルスの感染によって起こる鼻水、咳、くしゃみ、微熱などを主症状とする上気道炎の総称で、通常は比較的軽微に経過します。
インフルエンザは流行的な発生をし、時には死に至るほど重症化することがあります。ことに高齢者での肺炎の合併、また乳幼児ではインフルエンザ脳炎、脳症を引き起こすことがあり、通常のかぜとは明確に区別する必要があります。 Q.インフルエンザの症状は? A.鼻水、くしゃみ、咳、のどの痛みなどの上気道症状に、突然38℃を越える発熱と、悪寒、発汗、全身倦怠感、疲労感、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が特徴です。 Q.インフルエンザウイルスの種類は? A.人に感染するインフルエンザウイルスは抗原性の違いからA,B,C型の3種類に大別されます。C型は比較的症状が軽く、通常のかぜと区別がつきにくく、流行的発生で問題になるのはA型、B型です。A型はAソ連型、A香港型などにさらに分類され、毎年少しずつ変異株が出現しています。 Q.インフルエンザはどうしてうつりますか? A.飛沫感染といって、インフルエンザにかかった人が咳をしたときに空中に拡散したウイルスを別の人が鼻や口から吸い込むことによっておこります。3メートル範囲くらいは周囲に飛び散ると考えられています。潜伏期間は1−5日(平均2日)です。 Q.インフルエンザの診断法は? A.流行期間中に特徴的な症状が出れば診断はある程度容易ですが、時に鑑別診断が困難なことがあります。従来は鼻汁や、咽頭粘液からウイルスを分離したり、血液検査でウイルスの抗体価を測定することによって診断をつけていました。しかしこれらの方法では結果が出るまでに日数がかかり、実際の治療には役立てにくかったのですが、ここ数年は簡便な診断キットが開発され、一般の病院、診療所でも10分前後という極めて短時間で迅速に確定診断ができるようになりました。 Q.インフルエンザの治療法は? A.今までは主に症状を和らげる対症療法が一般的でした。過労を避け、十分な栄養、水分と休養をとることも大切です。1998年からA型インフルエンザウイルスに特効的に作用する内服薬が保険適用になり、昨シーズン(2000−2001年)からはA型、B型インフルエンザ両方に効く吸入薬、内服薬が加わり、保険治療に使われるようになりました。体内に入った1個のインフルエンザウイルスは24時間後には100万個に増殖すると言われており、48時間くらいまで、増殖を続けます。したがって、これらの薬を発症48時間以内に使用すると直接ウイルスに作用し、増殖を抑え、劇的に治療効果がでます。おかしいと思ったら、なるべく早い時期にかかりつけ医にかかり、初期治療を受けることが重症化を防ぐ意味でも重要です。 Q.注意することは? A.熱の出る病気は沢山あります。インフルエンザの場合も通常高熱がでますが、使ってよい解熱剤が限られていますので、他の病気との区別が大切です。自己判断で市販の解熱剤を安易に使用することは厳重に慎んでください。
今回はすでにインフルエンザのシーズンに入っており、重要な予防法であるワクチンの説明は省略しました。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2001年10月 | 子どもの言語障害 ー正しい発音ー | |||
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話しことばを使う能力は、生まれてから成長する過程で長い時間をかけて学習獲得されるものです。1歳前後でマンマ、ブーブといった意味のある音声(事物と音が常に対応しておりその意味が他人にも理解される音)を発するようになります。2歳に近づくと目にするものにそれぞれ名前があることに気がつくようになり急速に語彙が増えます。4歳では日常生活に必要な単語はほとんど獲得されます。単語の組み合わせである文法の獲得は2歳ごろから2つ以上の単語を組み合わせて使うことを覚えます。その後、年齢とともに多彩な構文を学習し4歳ごろには基本的な文構造は獲得されます。
最近小学校などで問題になっていることばの障害に「構音障害」があります。「構音障害」とはことばの音の障害です。話しことばの特定の音が正しく発音されず、それがある程度固定化している状態をいいます。日本語の語音は母音、半母音、子音に大別されます。音は舌の位置、下顎の開きぐあい、口唇のまるめの有無、口蓋帆による鼻咽腔の閉鎖の有無などにより成り立ちます。舌や口蓋など構音器官の形態や構造の異常があれば音の異常がおこりますが、構音器官に異常がなくても構音障害はおこります。2歳代までは子音がうまく発音できないため音節・子音の脱落,縮小,前後の入れ替わりがおこりミカン[mikaN]→カン[kaN]、テレビ[terebi]→テベリ[teberi],ハッパ[happa]→パッパ[pappa]などがおこります。4歳以降の段階では・子音の「置換」(例:s音がt音に置換する。サカナ [sakana]→タカナ[takana]),・子音の「省略」(例:hの省略、ゴハン[gohaN]→ゴアン[goaN]),・「歪み」(例:スイカ→シュイカ,センセイ→シェンシェイ)などが挙げられます。就学期前後はまだ構音取得の過程にありますので、小学校低学年までに自然改善する率は高いのですが、側音化構音(「キ」「ギ」「ジ」などの一定のイ列音で舌、口唇、下顎が左右いずれかに偏位し歪み音がでる)といった異常構音は自然改善の可能性が低く、改善のために構音訓練を必要とします。 構音障害があると、ことばの明瞭度が損なわれ聞き手に伝わりにくくなり、そのためにコミュニケーションに支障をきたすようになります。とくに子どもの場合、構音障害があると何回も聞き返されたり誤って聞き取られたりする経験から、人とのかかわりに挫折感や不信感を味わい、自信の喪失や不適応行動につながることも少なくありません。このような場合には、適切な方法を選んで治療的働きかけを早期に始めることが望ましいと思います。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2001年8月 | 後鼻漏(こうびろう) 副題 「鼻の日」によせて | |||
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皆さんは鼻の分泌物といえばどのようなものを想像されるでしょうか?鼻の前からだけ出てくるものとは限りません。鼻の後を回ってのどへ落ちてくる後鼻漏というものがあります。この後鼻漏は前から出てくる鼻漏よりも曲者で、しばしば体へ悪影響を及ぼします。眠っている間に鼻の裏側(上咽頭)に後鼻漏が貯留し、さらにのどへ落ちてくるので朝起き抜けに痰がからんだり、痰がらみの咳で目醒めたりします。また後鼻漏は咽喉頭炎を引き起こしたり、ひどい場合には気管支炎を誘発することもあります。のどがイガイガするということで耳鼻科を受診し、鼻を調べてみると副鼻腔炎であったというようなことが少
なからずあります。
高齢者の場合には加齢による後鼻漏というものがあります。鼻粘膜の萎縮は60歳代から70歳代に著明になりますが、鼻粘膜の萎縮により鼻腔内の温度調節能が低下するため水様鼻漏が増加します。鼻漏が増加するので当然後鼻漏も増加します。また、実際には後鼻漏はないのに後鼻漏があるように感じる後鼻漏感とでもいうべき病態が存在します。これは上咽頭の炎症、上咽頭粘膜の萎縮などが原因となっていることが多いようです。さらに問題となるのは耳への影響です。後鼻漏が多いと滲出性中耳炎を引き起こしたり、急性中耳炎を引き起こしたりします。 このように鼻の裏側という場所はのどへも、耳へも影響を及ぼす交通の要所となっています。そのような場所に生じる後鼻漏はのどや耳へ病気をもたらす原因となります。鼻の裏側はまた、なかなか観察するのが難しい場所ですので耳鼻科的チェックがかかせません。 『ハナの日』(もちろん8月7日です。)というような日もでき、鼻のことを考えてみるいいきっかけになると思います。是非一度、後鼻漏がないかどうか注意してみて下さい。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2001年6月 | 花粉症 | |||
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今年の杉花粉の飛散は例年の3倍以上、昨年の8倍にも及ぶ量でした。ずいぶんと春先に花粉症で悩まされた方も多かったと思います。現在スギ花粉にアレルギーのある人は国民の8%以上と言われています。実際にはそれ以上かもしれません。鼻がつまり、くしゃみ、それに鼻水、目も痒くなり肌も荒れて痒くなります。夜が寝られなくなるのが一番つらいと患者さんは言われます。世の中が快適に住みやすく、また西洋風の食生活になるにつれアレルギーは増えるといわれています。当然大気汚染もその要因です。1995年の杉花粉大量飛散の時もそうですが前年の夏が水不足でした。何らかの関係がありそうです。杉花粉は2月後半から4月前半くらいまで飛びます。4月からはひのきの花粉が飛びます。杉花粉にアレルギーのある方はひのきにもアレルギーのある方が多いです。杉とひのきの花粉が非常に似た性格を持つからです。杉の花粉の多い年はひのきの花粉も多い傾向があります。5月になると今度はカモガヤに代表されるイネ科の雑草の花粉が飛びます。このイネ科雑草の花粉症も結構最近では多くなっています。道端や河原、街路樹の下にも多く繁殖しています。この次期には幼稚園、小学校の遠足もありますので、遠足のあと症状が出る子供さんも多いです。あらかじめそういったアレルギーがあるかどうかを知っておくことが大事です。この春の種々のアレルギーも梅雨に入るとおさまってきます。ただ、かびにアレルギーのある方はこの次期に出ますので要注意です。夏の間は出にくいアレルギーも秋口にはブタクサなどのキク科植物の花粉が飛びますが、春に比べればずいぶんと少ない数になります。最近は花粉症を始め、喘息やアトピーなどのアレルギー疾患を持つ患者さんの年少化が気になります。特に花粉症は2-3才でも出る傾向がありアレルギー疾患全体の増加とともに懸念される事項です。 | |||
松山耳鼻咽喉科会 |
2001年4月 | いびき | |||
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いびきの治療は、いびきが「本人の健康を害している」場合と「単に周囲の人にうるさい」というだけの場合とでは、考え方が違います。いびきが本人の健康を害している場合は病気と認識できますが、「周囲にうるさい」だけでは必ずしも病気とは断定できないからです。「うるさいいびきを治したい」と治療を望まれる患者さんのお気持ちは分かるのですが、医学上は微妙な問題もあるのです。このこともご理解をお願いします。 いびきの原因は肥満、過度の飲酒、加齢、代謝障害、中枢神経系疾患などの全身的な原因と、鼻や咽頭の形態・機能異常の局所的な原因など、実に多くの理由が考えられます。耳鼻科や内科などが協力して原因を探します。 いびきの大きい人は、しばしばいびきの途中で息が詰まっている状態(無呼吸状態)になります。この無呼吸時間をご家族に測ってもらってください。息が詰まっている時間が10秒以上かどうかが目安になります。またいびきの音質等でも原因を推察できることもあるので、いびきをテープに録音するのは有力な手がかりになります。 いびき(睡眠時呼吸障害)が引き起こす健康障害には、心臓・循環器系へ負担がかかるために起こる心臓病や高血圧と、睡眠が浅くなるために起こる慢性の睡眠不足が代表的です。健康への悪影響が疑われる場合は、睡眠中の心電図や呼吸を記録したり睡眠脳波を調べて、健康障害の程度を診断します。 いびきの治療は原因や程度によって違いがあり様々です。全身的治療では、肥満の人は食事療法などで体重を減らし、酒飲みは飲酒量を控えます。特殊例ですが睡眠リズムを調節するための薬治療なども有効なことがあります。鼻や咽に病気がある場合は(例えばアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)治療をします。機器、装具を使った治療としては、睡眠中に咽が狭くなるのを防ぐマウスピースや、鼻マスクから空気を送り込む機械を着けて眠る方法などがあります。手術治療では鼻詰まりを治す手術、咽を広げる手術などがあります。 いびきは睡眠中でないと状態を観察することが出来ません。原因も様々です。しかも「いびきが大きい」というだけは治療に取りかかるべきかどうかは決められない、という微妙な問題もあります。診断・治療は難しいのです。患者さんはまず、いびきの状態をご家族によく聞いてもらって下さい。その際、「うるさくって迷惑だ」という観点からではなく、いびきをかく「ご本人の健康を考える」」という視点が大切だと思います。 本稿は鷹ノ子病院の比野平耳鼻科医師の助言を得て書きました。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2001年2月 | スギ花粉症、今が大切 | |||
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スギ花粉アレルギーの本格シーズンが始まりました。毎年2月終わりにスギ花粉の最初の大群が襲ってきます。そして3月の中旬まで3〜4日おきに繰り返しやってきます。この時期に無防備でいると、それはそれはヒドイ症状が出てきます。 スギ花粉は2月の中旬から飛び始めますが軽いアレルギーのひとは気づきません。花粉が飛んだら直ちに症状が出るとは限らないのです。実は今の時期に最初の花粉大群をかぶっても症状の出ない人も少なくないのです。症状がないと分からないので、つい花粉をたくさん吸い込んでしまいます。そうして油断していると次の大群がやってきたときに、ものすごく強い症状が出るのです。垂れ流しの鼻水、真っ赤な眼、腫れ上がった顔、震える体など、アレルギー爆発状態です。イライラして「やつあたり」したくなります。さあ、今が絶対に大切です。とにかく今から3月下旬までは花粉を避けるように細心で最大の注意しましょう。外出時のマスクや防御メガネ、衣服の花粉落とし、うがいや手洗いが絶対に大切です。 スギ花粉症ではない、というみなさまにもご注意を申し上げます。スギ花粉症予備軍というひとたちがおられることが分かっています。スギ花粉症の患者さんは、生まれた時から症状が出ているのではないのです。花粉症になりやすい要素をもった人が、数年に渡ってたくさんの花粉に触れることにより、徐々にアレルギー抗体を体内にたまってきて、あるとき突然に発症するのです。ですから、現在は花粉症でないひとも、2月末から3月始めの大量飛散の時期だけは多くの花粉を吸い込まないように気をつけて下さい。将来の発症を予防することにつながります。花粉症予備軍かどうかは、抗体検査である程度は予測がつきます(絶対的な予想ではありません)。とにかく、いま、みんながスギ花粉に関心を持つことが大切です。 どんなに注意しても、日常生活上の予防には限界があります。アレルギーの薬を正しく早い時期から使いましょう。薬を使わずに我慢したり様子を見ているうちに、体内にはアレルギー物質がたまってアレルギー爆発瀬戸際状態になります。また、組織が侵されてしまうと、壊された部分の修復は薬では行なえません。自然の回復を待たざるを得なくなります。アレルギーを少しでも手前でおさめること、それが花粉症の予防であり薬の使い方の基本です。その点では、本当は2月の初め頃から医療機関での指導を受けたほうがよかったのですが、でもまだ間に合います。症状が出るのを待たないで下さい。アレルギーの薬を、いま、正しく使いましょう。スギ花粉症の本格シーズンが始まりました。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2000年2月 | スギ花粉症のシーズン到来 | |||
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今年もはや2月となり、本格的なスギ花粉症のシーズンがやってきました。スギ花粉症はスギの花粉が原因となって起こるアレルギー性鼻炎です。スギ花粉症の人はスギ花粉を吸い込むと、鼻の粘膜に付着した花粉からアレルギーの原因となる抗原物質が体内に取り込まれ、スギ花粉に対する抗体を体の中で作り始めます。抗体ができた後に再びスギ花粉を吸い込むと、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が
起こってくるわけです。一般的にスギ花粉症は1月下旬ないし2月から始まり、4月末頃まで続きます。最近10年間の松山市近郊におけるスギ花粉の飛散状況によると、1月初めから2月初めにかけて飛び始め、2月10日頃には本格的なスギ花粉の飛散が始まっています。従って、今の時期は既にスギ花粉が飛んでおり、体の中にスギ花粉に対する抗体が作られ始めています。このため症状が出ていなくても今からスギ花粉を避けることが大切です。例えば、外出時にマスクや眼鏡を使用するのも一つの方法です。最近ではスギ花粉症用のマスクも市販されているようですので、それを利用されてもよいでしょう。また屋外で布団を干すのもできるだけひかえてください。これは干している布団にスギ花粉がついて、症状が出ることがあるからです。特に、晴れて風の強い日は注意が必要です。しかし、これらの方法だけでは症状を予防したり充分に抑えるのが難しいことが多く、その場合には薬を使う必要があります。花粉症の薬にもいろいろあり、症状や程度によってその使い方が変わってきます。特に予防的な服用(あらかじめ薬を使ってシーズン中の症状を抑える方法)は、症状が出ていなくても飲み始める時期がきています。このため薬を使うにあたっては、すぐにで
も医師に相談されるのがよいでしょう。既に症状が出ている方はもちろん、毎年花粉症でお困りの方は、なるべく早くお近くの病院で相談されることをお勧めします。
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松山耳鼻咽喉科会 |
2000年2月 | スギ花粉症のシーズン到来 | |||
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今年もはや2月となり、本格的なスギ花粉症のシーズンがやってきました。スギ花粉症はスギの花粉が原因となって起こるアレルギー性鼻炎です。スギ花粉症の人はスギ花粉を吸い込むと、鼻の粘膜に付着した花粉からアレルギーの原因となる抗原物質が体内に取り込まれ、スギ花粉に対する抗体を体の中で作り始めます。抗体ができた後に再びスギ花粉を吸い込むと、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が
起こってくるわけです。一般的にスギ花粉症は1月下旬ないし2月から始まり、4月末頃まで続きます。最近10年間の松山市近郊におけるスギ花粉の飛散状況によると、1月初めから2月初めにかけて飛び始め、2月10日頃には本格的なスギ花粉の飛散が始まっています。従って、今の時期は既にスギ花粉が飛んでおり、体の中にスギ花粉に対する抗体が作られ始めています。このため症状が出ていなくても今からスギ花粉を避けることが大切です。例えば、外出時にマスクや眼鏡を使用するのも一つの方法です。最近ではスギ花粉症用のマスクも市販されているようですので、それを利用されてもよいでしょう。また屋外で布団を干すのもできるだけひかえてください。これは干している布団にスギ花粉がついて、症状が出ることがあるからです。特に、晴れて風の強い日は注意が必要です。しかし、これらの方法だけでは症状を予防したり充分に抑えるのが難しいことが多く、その場合には薬を使う必要があります。花粉症の薬にもいろいろあり、症状や程度によってその使い方が変わってきます。特に予防的な服用(あらかじめ薬を使ってシーズン中の症状を抑える方法)は、症状が出ていなくても飲み始める時期がきています。このため薬を使うにあたっては、すぐにで
も医師に相談されるのがよいでしょう。既に症状が出ている方はもちろん、毎年花粉症でお困りの方は、なるべく早くお近くの病院で相談されることをお勧めします。
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松山耳鼻咽喉科会 |
2000年1月 | スギ花粉症〜早期の治療を〜 | |||
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スギ花粉症は近年増加傾向にあり、くしゃみ・鼻みずまた鼻づまりで悩まされている方も多いと思います。スギ花粉症の予防には抗原となるスギ花粉からの回避が第一ですので、花粉の飛散開始がいつ頃か、また毎日の飛散量はどのくらいなのか予め把握できれば、花粉症の予防に大変に役立つと考えます。
スギ花粉シーズンの真最中です。もうすでにスギ花粉症の症状で苦しんでいる方も多いと思います、愛媛県においてはスギ花粉の飛散開始は2月上旬からで、3月に入り急増します。1,2回の飛散のピークがあり、3月後半には本格飛散が終了します。その後は少量飛散が続き、4月前半にはスギ花粉の飛散は終了し ます。
今年の愛媛県のスギ花粉の飛散の予測ですが、スギ花粉の総飛散数は前年夏の平均気温や降水量などの気象条件と深くかかわっているとされています。昨年夏の平均気温は例年より低く、また降水量も多かったことより、今年のスギ花粉の総飛散数は例年よりも少ないもとの予測が出ました(原稿を執筆しているのが1月初めです。予想は当たっているでしょうか)。 もうすでにスギ花粉が飛散していると思いますが、飛散開始日の予測はその年の1月1日からの毎日の最高気温を積算し、その値が一定値に達すると花粉飛散が始まるという関係式をもとに予測されます。 次に1日のスギ花粉の飛散量は、その日の天候によって大きく変わります。一般に天気がよく気温が上昇し、湿度の低いカラッと晴れた日は、花粉飛散量が多くなります。逆に雨が降ると著しく減少します。しかし、雨上がりに気温の上昇・湿度の低下があれば飛散数は増加し、雨の日の分も含めて大量飛散することもあります。また風の強い日にも飛散数は多くなります。 最後にスギ花粉症の治療ですが、第一はスギ花粉の被爆をできるだけ回避することが大切です。花粉情報を利用し、花粉の大量飛散が予想される場合にはマスク、メガネや帽子などを活用し予防に心がけましょう。症状が現れた場合には、やはり薬物療法が主体になるかと思います。最近、スギ花粉症に対する予防的治療法、季節前治療法と称される方法が盛んに行われるようになってきました。花粉飛散開始日を基準として、それより2週間程度前から抗アレルギー剤の投与を開始する治療法で、各種薬剤で有効性が確認されています。スギ花粉飛散時に症状の重症化するような場合には、早期に医療機関を受診し治療を始められるのが良いかと考えます。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2000年7月 | 鼻 血 | |||
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Q:中学2年生の息子が、よく鼻血を出します。健康面では、特にこれといって変わったところは見あたりませんが、心配です。病院で診察を受けてをおいた方がいいんでしょうか?
(松山市・42才・女性)
A:鼻の中は、異物の侵入を防いだり気流を整えたりするためにフィルターのような複雑な構造になっています。また、外気を加温加湿したりウィルスや細菌などの外的の侵入を防ぐために、鼻の粘膜は厚い毛細血管で覆われています。 そのため、様々な要因で粘膜が障害を受けると出血しやすくなります。風邪に伴う急性鼻炎や、体質的に粘膜が弱い慢性鼻炎、ダニ・カビ等のほこりや花粉が刺激となるアレルギー性鼻炎、より鼻の奥に炎症が波及した副鼻腔炎、さらにアデノイドや扁桃腺のような口の奥の慢性炎症などが原因となることもあります。
特に、鼻の入口の皮膚と粘膜の境目付近は、かさぶたもつきやすく、特に刺激を受けやすいので、毛細血管が拡張しやすくなります。最も多いのは、鼻炎や皮膚の湿疹によりこの鼻の入口の血管が浮いてくることによる出血です。落ち着いて座り、小鼻を押さえて10分程度で止まる出血ならば、応急的には心配のないことがほとんどです。しかし、30分以上も鼻血が止まらなかったり、出血の頻度が極端に多い場合には、可能性は少ないもの、全身的に血が止まるにくくなる血液疾患や血圧の異常や、良性、悪性の腫瘍が隠れている可能性も否定はできません。 たとえ全身的に健康であっても、鼻の粘膜に弱い部分があると、鼻出血以外にも鼻づまりによる頭重感、集中力不足や、いびきによる日中の疲労感などが起こることもあり注意が必要です。 いよいよ本格的な水泳の季節です。特にプールの水には消毒のための塩素が入っていますので、水泳後目が充血するのと同じように、鼻の粘膜も刺激を受けて、より鼻血が出やすくなることも考えられます。 お子様の場合、文面からは軽い鼻炎か湿疹がある程度で、ことさら心配する必要はないと推察します。しかし、よく鼻血をだすのであれば、やはり一度専門医を受診しておくことを勧めします。
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2000年 | めまいの治療 | ||||||
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平成11年愛媛新聞「診察室」の記事です。質疑応答形式になっています。後半の心因性の項は「しののめクリニック神経科・心療内科」の武田良平医師にお願いました。
【質問】 33歳の主婦です。2年前、目覚めると寝ころがっているのに天井がぐるぐる回るめまいに襲われました。翌朝から10日間ふらふらし、メニエル氏病の診断を受けました。 1年後、立っているときふわっと力が抜ける感じがして、頭がふらふらしだしました。約1ヶ月で治りました。以後も2〜3ヶ月はふわふわすることがありました。 半年前にも同じ症状が起こりました。めまいの検査ではめまいの反応はでませんでした。MRIも異常はありませんでした。 いまはお灸と漢方薬で治療しています。頭痛、首こり、頭がフラフラする感じがあります。ゆううつになり、体力に自信がなくなって人ごみにでるのもおっくうになります。小さい子供もおりローンもあるので、仕事をやめることもできずどうしたらいいのかと思います。 【答】 あなたのめまいを3つの時期に分けて考えるのがよいと思います。 最初のめまいは内耳性の病気だった可能性が高いです。メニエル氏病、良性発作性頭性めまい、急性前庭炎などです。回転性めまいのあと浮動感が続きます。初期には眼振などのめまいの反応が認められます。内耳性めまいは初発症状が激しいですが、一過性一定期間で治まることが多いのです。耳鼻科で内耳の障害が残ってないことを証明する必要がありますが、何度か検査をして内耳検査の異常が出ないのであれば内耳は治っていると考えていいのではないでしょうか。 1年前に起こっためまいは起立性循環血圧調節障害など自律神経系の不調が考えられます。立っているときに脳の血圧が下がって脳貧血と立ち直りを繰り返します。立っているときにふっと落ち込む感じがするのが特徴的な症状です。血圧の変動検査や心臓の働きが正常かどうかを検査します。ただ、自律神経疾患の症状は心の病でも似たような症状がでますので、鑑別診断は必ずしも容易ではないのです。(ここまで玉貫眞比古、以下「しののめクリニック神経科・心療内科」の武田良平医師) さて半年前からのめまいは心身症など心因性めまいの疑いが濃厚です。心身症(しんしんしょう)とは、ストレスなどの精神的な原因によって体の病気が起こったり、前にある病気が悪くなったりする状態です。一般的なストレスに加え、心理的な葛藤があると心身症に結びつくといわれています。 あなたの場合に当てはめると、いつ起こるかわからないめまいの不安や様々な葛藤がストレスになって自律神経系に影響を与え、頭痛や肩こり、便秘、フラフラ感やめまいを引き起こしているかと考えられます。そして、これらの症状がまたストレスとなって、さらには自律神経系を不調にするという悪循環になります。 最初のめまいから経過が長いので、今のお気持ちは当然と思いますが、症状を治すには悪循環を断ち切る必要があります。原因が、はっきりすれば対処の方法もいろいろあります。お便りだけでの診断は出来ませんが文面から考えると、心身症の診察もお受けになるのがよいかと思います。 内耳の病気は耳鼻咽喉科、自律神経や循環器の病気は内科、心身症の病気は心療内科や神経科を標榜しているクリニックや病院の受診をお薦めします。 |
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老人性難聴と補聴器 | ||||
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年をとると耳の聞こえは悪くなってきます。これを老人性難聴といい、いままでは自然の老化現象として放置されていました。しかし、高齢化に伴い高齢者の社会的役割が多くなるにつれて、コミュニケーションをよくするためには難聴の対策が必要となってきました。老人性難聴の対策とはつまり補聴器をうまく使ってコミュニケーションを上手にとることです。
従来から、補聴器を使用すれば、以前に不自由なく聞こえていたときと同じように聞こえるものだと、本人もその家族も思いこんでいるようにみられます。しかし、実際は次のような状況では補聴器の効果は低いのです。1)複数の人がいる話し合いの場面 2)講演会、芝居などの話し手が遠い場合 3)病院・デパートの呼び出し 4)バス・電車の車内案内 5)駅の放送 6)テレビのドラマ 7)早口な人の話ですから最初からこのような場面で補聴器を使って、補聴器が役に立たないと考えるのは間違いです。補聴器を使ってよく聴こえるようになったと実感できるのは、1)静かな所での一対一の会話 2)近くからの話しかけ 3)電話の会話 4)ゆっくりとした言葉 などです。最初はこのような補聴器の効果のある場面で使って補聴器に慣れていくことが大切です。 補聴器の上手な購入の仕方はなんといっても認定補聴器技能者のいる補聴器専門店で購入することです。信頼できる補聴器店については、耳鼻咽喉科医に相談するのがよいでしょう。また、補聴器はどんな状況にも対応するものではありませんので、ご自分が補聴器を使いたい状況をよく考えてその状況に合わせて何回か調整してもらうとよいでしょう。 難聴の程度によっては、身体障害者福祉法、厚生年金保険、船員保険などにより補聴器の支給制度もありますので最寄りの福祉事務所あるいは役場の福祉課で相談してみてください。 |
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耳・鼻・のどの救急処置 | ||||
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先日知り合いの方とお話をしていて、その方の子供が3歳頃いちじくを誤って丸飲みしてのどに詰まり、チアノーゼをおこし危うく窒息しかかった。あわてて子供を逆さにして背中を叩いたらいちじくがとれて助かったということを聞きました。最近ではコンニャクゼリーをのどに詰めて窒息した事故が問題になっています。この様な誤飲による事故の場合、まず口の中をみて、口の中に食塊が見えるか確かめてください。
食塊が見えれば指を突っ込んで取り出すか(指拭法)、嘔吐反射を誘発させ吐き出させることによりとれることがあります。またチアノーゼがなく、深呼吸と咳ができるならば、咳をさせて異物を喀出させてください。救急患者自身の咳嗽は、異物の喀出に最も効果的です。異物によって完全に気道が閉塞した時には、上腹部圧迫法(ハイムリック法)すなわち上腹部を横隔膜に向かって突き上げ、胸腔内圧を急激に高めることによって異物を喀出させる必要があります。いづれにしても3歳以下の子供は誤飲を起こしやすいのでピーナッツなどは与えないようにし、寝ころんでお菓子などを食べさせるのも注意が必要です。 鼻出血は一番多い耳鼻科の救急疾患です。自然に止血することも多いのですが、止血の方法は出血している鼻腔に少し大きめの綿球を入れて、鼻翼の外側から鼻中隔側に指でしばらく押さえておくのが良いと思います。体位は頭部を高くして、うつむくようにしておきます。綿球がなくても、同様の操作をして様子をみるのがよいでしょう。それでもなかなか出血が止まらずに、はなの後から口に流れる場合には、耳鼻咽喉科を受診してください。 また、特に夏に多いのですが、虫が耳に入って出てこないことがあります。蚊のような小さな虫なら部屋を暗くし、懐中電灯を当てて誘い出す方法もありますが、多くの場合はつまみ出そうとすると暴れて鼓膜や外耳道の皮膚を傷つけますので、耳鼻咽喉科を受診してください。 |
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咽喉頭(のど)のエヘン虫の原因は | ||||
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風邪をひいて後、咳が治まっても咽喉頭がイガイガして何か詰まった感じが何週間も続くことがあります。このような場合ほとんどは細菌やウイルスによる炎症が原因ですが、男性の場合特に煙草を吸っている人に多いようです。今更言うまでもなく、煙草は咽喉頭の粘膜に有害で、煙草を吸っている人の咽喉頭を診ると粘膜が発赤していることがよくあります。問診をすると咽喉頭の調子は悪いが煙草は吸っていると言う返事がほとんどです。いくら薬を服用してもこれではなかなかよくなるはずはありません。禁煙することは大変難しいですが、最近アメリカでは煙草(主にニコチンが原因ですが)は麻薬に匹敵する習慣性があると指摘されています。禁煙する方法として煙草を吸いたくなった時に煙草のかわりにニコチン入りのガム(商品名:ニコレット)を噛んで喫煙の習慣をなくして禁煙を達成する方法が良い成績をあげています。禁煙を考えている人は耳鼻咽喉科や呼吸器内科で相談してみてください。 また、女性で特に風邪をひいたわけでもないのに咽喉頭の調子がおかしい・咽喉頭が詰まった感じがすると来られることがあります。特に40歳から50歳台の方に多く、更年期障害ではと自分で考えている人もいます。この様な場合、原因として鉄欠乏性貧血が関係していることがありますので、一度血液検査をするのがよいでしょう。 そのほかアレルギーが原因で咽喉頭がイガイガしたり咳が続いたりする場合もあります。この時は発熱などはないのですが、鼻閉や鼻汁を伴っていることがあります。引っ越しや転職のあとで症状が出現したときは、屋内のほこりなどによるアレルギーが原因のこともよくあります。 いづれにしても、咽喉頭の異常感が1ヶ月以上にわたって続く場合は、咽喉頭は容易に視ることができる部位ですから一度診察をうけるのが良いでしょう。 |
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薬の副作用としての耳・鼻・のどの症状 | ||||
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薬の副作用としての胃腸障害やアレルギーなどは一般的なものであり、患者さん自身により自覚されることが多いのですが、中にはその症状が薬の副作用によるものであるにもかかわらず副作用と気づかれないでいることがあります。 最近、耳鼻咽喉科の外来に来られる方で数カ月続く乾性咳嗽(空咳)を訴える方がときどきいます。診察をしても特にのどに炎症はなく、発熱などの症状もありません。このような方の場合、よく問診をすると高血圧症の治療のためアンジオテンシン(ACE)変換酵素阻害薬を内服していることがあります。
ACE阻害薬は最近開発された高血圧の薬で血圧を下げるのによく効くのですが、ときに執拗な乾性咳嗽の原因となります。この場合、他の降圧薬に切り換えると咳嗽はとまります。また、ACE阻害薬は味覚障害を引き起こすこともあります。これは、ACE阻害薬が血液中の亜鉛イオンと結合し、組織亜鉛レベルが減少するためです。ACE阻害薬の他にも味覚障害を引き起こす薬は多く、味覚障害の原因の約25%が薬によるものといわれています。多くの場合は、薬の減量あるいは中止により回復します。このほか、耳鳴、難聴、めまい、嗅覚障害、鼻閉、いびき、口内乾燥や舌痛症といった症状も薬物が原因で起こってくる場合があります。このような症状を起こす薬物は降圧薬、利尿剤、抗ヒスタミン剤、精神安定剤、抗生剤、抗癌剤などです。とくに高齢者の方は腎臓や肝臓の働きが低下していて薬の代謝が悪くなっているので、普通の量でも過剰になる場合があります。そのために薬の副作用が強くでることがあり注意が必要です。 このように薬物の副作用についてお話ししますと副作用を恐れるあまり、薬を指示された通りに服用しない方がいますが、薬について少しでも疑問があれば主治医の先生とよくお話をするのが最善の方法です。 |
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1999年 | かぜと耳鼻咽喉科の関係 | |||
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かぜは呼吸器系(上気道・下気道)の急性炎症性疾患を指すもので、鼻汁、鼻閉、咽頭痛、せき、たんなどの呼吸器症状と発熱、全身倦怠などの全身症状を伴います。 これら症状の中でも‘鼻水がとまらない’、‘のどが痛い’などと訴えられて耳鼻咽喉科を受診される方も多いわけですが、単なるかぜと考えられているもののうち、耳鼻咽喉科専門医のチェックをなるべく早く受けるべき病気が隠されていることがあります。 その代表的な病気の一つとして急性中耳炎があります。特に小児においては約1/4の例において急性中耳炎を合併するともいわれております。乳児では耳の痛みを訴えることができず、不機嫌であったり、熱が持続したりという場合に中耳炎が見逃されていることがあります。その他の耳の病気として、耳の痛みがなく、耳閉感や難聴が現れる滲出性中耳炎や慢性中耳炎の急性増悪により耳だれが再発し、聴力が低下したりすることがあります。 鼻の病気としては、膿性の鼻汁・鼻づまりや頬や眼のあたりの痛みなどを認める急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎の急性増悪などがあります。またかぜのあと神経性嗅覚障害をきたすこもあります。 口やのどの病気としては、かぜにより体力がおちて免疫が低下しアフタ性口内炎を生じたり、また味覚障害がおこったりすることがあります。またかぜのたびに扁桃炎をおこし、高熱が続いたりする場合には扁桃摘出術を考えた方がよいこともあります。せきを伴う場合には大なり小なり、喉頭炎を生じ、声がかすれたり・発声が困難な場合もあります。特に乳児では容易に喉頭が腫れて呼吸困難となることもあります。 かぜの際にみられる耳鼻咽喉科の代表的な病気を上記に挙げました。かぜと耳鼻咽喉科の病気は密接な関連があり、かぜをひいた時に単に“かぜ”と軽視せず、上記のような病気を合併する可能性もありますので専門医での早期の治療をおすすめします。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
2000年 | 30センチの水深でもおぼれる? | |||
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わずか30センチの水深でもおぼれることがあるのをご存知でしょうか。まさかそんなことは、とお思いかもしれませんが事実です。けっこう泳ぎの上手な人がおぼれた、という話しもお聞きになったことはあると思いますが、実は原因はめまいなのです。いかに浅いところでも、瞬間に水を飲み、それが誤って耳管とういう管を通じて耳へ上がるとめまい発作を起こしてしまいます。そして転倒して、さらに水が気管を通して肺へ入ってしまいます。人間は耳の中へ体温とは違う温度の液体が入るとめまいを起こすのです。 病院でもめまいの検査で、耳の中へ体温より低い液、また高い液を注入してめまいを起こさせる検査方法があります。正常であればめまいが起こるのです。内耳には三半規管といわれる体のバランスをとるしくみがあり、その三半規管の中にはリンパ液という液体で満たされています。温度刺激を与えると、そのリンパ液が対流運動を起こしてめまいになるわけです。ダイビングをする方はトレーニングのときに教わると思いますが、何メートルか潜るたびに耳抜き、という操作をしないといけません。中耳という空間の圧力が変わるためですが、もし耳抜きをしないと、圧力で鼓膜が破れて、冷たい水がいっきに中耳へ入って、めまい発作を起こし、最悪の場合おぼれてしまいます。 いるかの集団自殺という話を聞いたことがあると思います。理由もなく、たくさんのいるかが海岸へ打ち上げられて死亡する話です。大昔は神様の贈り物として食していたそうです。かわいそうに思った人たちが海へ返してやっても、また打ち上げられてくる。実は解剖してみると、耳の中に寄生虫がいて、平衡感覚を失っているのだそうです。それは古事記にも、打ち上がったいるかの耳が臭い、との記載があるそうです。 |
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1999年 | 夜泣き、カンノムシ、その正体は中耳炎 | |||
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この10年間で乳幼児の中耳炎の年齢別分布が変わりました。つい10年前までは「中耳炎は4才児が最も多い」とされていました。最近では0才児、1歳児が中心です。中耳炎が低年齢化したのではありません。中耳炎の発見年令が早くなったのです。 発見年令が早くなった理由は2つあります。ひとつは乳幼児検診の充実です。1才半健診と3歳児健診がそれにあたります。 ふたつは耳鼻科診察の顕微鏡の普及です。肉眼では見えにくかった0歳児の中耳炎も確実に診断し治療できるようになりました。 赤ちゃんに中耳炎が多いことが分かったので、小児科医が中耳炎に注意するようになりました。それでますます、赤ちゃんの中耳炎が発見できるようになりました。「夜泣き、カンノムシ、その正体は中耳炎」ってことも多いのです。 反対に幼稚園児の中耳炎は減りました。赤ちゃんのときに中耳炎を早く発見し治療するので、幼稚園児の中耳炎が減ったのです。早期発見、早期治療です。 早く発見しても、赤ちゃんの中耳炎はなかなか治らないことも多いです。お母さんも医師も苦労します。それでも、早期発見、早期治療。頑張って直しましょう。 |
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1998年 | 花粉症 | |||
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スギ花粉症とは、日本スギの花粉によっておこるアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎を総称していいます。本来なら暖かくなって気持ちのいい春先に、くしゃみ、鼻水、目がかゆくなって皮膚もあれる、憂鬱なシーズンでもあります。この苦しみは実際になった人でなければわからない、と患者さんは言われます。それほどに重症では苦痛を伴います。 今、国民の約8%の人がスギ花粉症であるといわれています。1クラス40人の学校の教室で3-4人の患者さんがいる勘定です。まさに国民病です。ところが実は30年前には話題にものぼっていませんでした。われわれが習った医学の教科書にも書いていなかったのです。当時は欧米で枯草による不明熱、アレルギーがある、としか書いてありませんでした。ですからスギ花粉症は一つの文明病ともいえます。話題になり始めてわずか20年ほどなのです。 ではどうして最近になって出始めたのでしょう。 まずスギの側の問題です。花粉症をおこすスギは日本スギといわれ、日本固有の種類です。沖縄と北海道には生息していませんので、沖縄や北海道、また外国ではスギ花粉症はありません。日本の国土の多くはこの日本スギの林で占められています。特に戦後に植林として積極的に植えられました。その木々が戦後50年たって思春期に入り、大量の花粉を出す時期に成長したのです。 次に人間側の問題です。アレルギーは一種の体質ですので、基本的にはもともと生まれついてそ の情報は組み込まれていたはずです。しかしスギ花粉に接してもあるレベルに達しないと症状は出ません。そのレベルを域値といいます。最近は人間の生活環境が良くなり、それだけ抵抗力が下がっています。しかし同時にこの域値も下がっているといえます。夏には冷房、冬には暖房のある部屋ですごし、食生活もたんぱく質を中心とした欧米型に変わってきています。それだけアレルギーは出やすくなってるといえます。 では花粉症の治療についてですが、基本的には体質ですので、症状がでないようにすることになります。まず、第1はスギ花粉を避けることです。外出をひかえる。窓をあけないようにする。部屋のこまめな掃除をするなどです。花粉をよけるためのマスク、めがねなども有効でしょう。外出から帰ったら着替えをするのも一つの手です。患者さんにとってこのシーズンのゴルフは最悪でしょう。薬による治療としては抗アレルギー剤などの内服をシーズン開始の2週間くらい前から飲み初めて、シーズン中飲み続けるとずいぶんおさえることができます。アレルギーを直す特効薬はありません。いろいろな抗アレルギー剤がありますが、体質に合った薬を探すことも必要です。 ぜひともお近くの耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
1999年 | ノドの異常感(咽喉頭異常感症) | |||
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ノドがイガイガしたり、何かひっかかったような感じがするといった状態を咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)と呼びます。その原因としては咽喉頭(のど)の疾患、鼻副鼻腔疾患、頸部疾患、食道疾患、悪性腫瘍、全身的要因、精神的要因等があげられます。咽喉頭疾患には咽喉頭炎、慢性扁桃炎や咽頭の知覚神経の過敏等が、鼻副鼻腔疾患には慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)やアレルギー性鼻炎があります。頸部疾患では甲状腺腫瘍や脊椎の骨棘(こつきょく)形成(脊椎の骨の突出)等が、食道疾患には憩室や咽頭筋の過緊張、食道内圧の亢進、逆流性食道炎が、悪性腫瘍では頭頸部特に下咽頭、喉頭や食道の癌があります。全身的要因にはプランマー・ビンソン症候群(鉄欠乏性貧血に伴う食道粘膜の突出)や自律神経失調症、精神的要因には癌不安や神経症等があります。その他に、胃カメラや全身麻酔の際の気管内挿管(きかんないそうかん)の後に生じることもあります。このように咽喉頭異常感症の原因は様々なものがあり、治療に際してはその原因を特定する必要があります。原因が特定できれば、その原因に対する治療が第一となります。例えば慢性副鼻腔炎が原因となっている場合には、副鼻腔炎の治療を行わないと症状が消失しないことがあります。また咽頭の知覚神経の過敏や精神的要因等が原因と考えられる場合、それらの要因が本当に原因かどうかを検査で判定することは困難です。そのような場合には症状に応じた薬を処方してその効果をみるという診断的治療が必要になります。なお、悪性腫瘍は放置すると致命的となるものであり注意を要します。悪性腫瘍が疑われる場合には種々の検査を行い、診断が確定すれば早期に治療を開始する必要があります。このように咽喉頭異常感症の原因には様々な疾患があり放置すると致命的になる病気もあるため、このような症状でお困りの方は専門医に相談されてみて下さい。 | |||
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1997年7月 | 慢性鼻炎 〜根気強い治療が必要,状態に応じ吸入や洗浄〜 | |||
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【問い】
2年ほど前から鼻の奥とロの中、舌が乾燥して,鼻の奥になにか詰まている感じがします。鼻の奥を、しぼり出すようにロの中へ吸い出すと、ぬるっとした透明のだ液のようなものが少し出ます。夜から朝の乾燥が特にひどく感じます。半年ほど前に、耳鼻科へ行きました。アレルギ−性鼻炎だと言われ、鼻炎の薬と点鼻薬で治療しています。 激しいくしゃみ、鼻水はその日で止まりましたが、最近では嗅覚(きゅうかく)もほとんどなくなりました。ビタミン剤も耳鼻科でもらて飲んでいます。1週間ほど前から鼻水が少し出ます。鼻をかむ程度ではつかないのですが、鼻の奥へティッシュをつめると血が少しつきます。痛みはありません。味覚もよく分かります。 3年前に乳がんの手術をしました。月に一度、手術をした病院の外科で血液検査もしていますが、今は異常ありません。抗がん剤を飲んでいましたが、その副作用かと思い外科の先生と相談して今は飲んでいません。今している耳鼻科の治療で良くなるのでしょうか。内科的検査をした方がよいのでしょうか。よろしくお願いします。(南予) 【答え】 半年前症状が強いときに耳鼻科でアレルギー性鼻炎との診断を受けたようですので、普段から鼻の過敏症のような慢性鼻炎の素因があるものと思われます。
アレルギ−性鼻炎は、鼻粘膜が過敏な体質の人が、ほこり、ダニや花粉などのアレルギ−の原因物質を吸った時に発症します。花粉症のような季節性の鼻炎の人でも、普段から体質的な粘膜の過敏症があることが多く、気温、気圧の変化、ストレスや、本来は軽い風邪でも鼻水が多くなったり、鼻づまりが強くなったりします。 恐らく鼻粘膜の萎縮などの年齢的な変化もあって、二年前から慢性鼻炎の体質になったものと思われます。こうなると、以前は自然に治ていた鼻風邪が治りにくくなり、その上に細菌のニ次感染を起こすと、鼻の奥の副鼻腔(くう)に炎症が残り副鼻腔炎=蓄膿(ちくのう)症=を起こします。軽度な場合は、後鼻漏,(こうびろう)と呼ばれる粘液状の鼻水がすこしすつ鼻の奥からロに落ちてきて、鼻、のどの粘膜が慢性的に荒れてきます。 正常な人でも自律神経の日内変動からみて夜からら朝にかけて鼻もつまりやすくなり鼻水も出やすくなりますので、鼻炎の人は夜間の鼻づまりのために、就寝中に口で呼吸することが多くなって、朝、ロの中が乾燥したり、後鼻漏による痰(たん)が多くなります。また、鼻の粘膜の委縮が強くなると、粘膜にかさぶたがつきやすくなります。 鼻の粘膜は細かな血管が集まってできていますので、炎症が続くと血管が浮いてきて鼻血がでやすくなります。特に、鼻の入りロの皮膚と粘膜の境目は刺激を受けやすい部位ですので、ティッシュで刺激すると,血がつきやすくなっているものと思われます。 鼻の中の一番上方ににおいを感じる部分があり、鼻炎で粘膜がはれるとにおいの粒子が到達しにくくなりますし、においを感じる神経の働きも落ちてきます。また、抗がん剤などの薬物を長期に服用すると、貧血やビタミン不足のほかにも、お茶やカキに多く含まれている亜鉛という栄礎分の取り込み不足などから、嗅覚の低下をきたすことがあります。 今後の治療ですが、アレルギー性鼻炎の状態が現在も続いているのか、細菌感染を伴うような副鼻腔炎を併発していないかを、レントゲン検査やアレルギー反応の有無をみる検査で見た上で、ます鼻炎の治療を行ってください。耳鼻科では、においを感じる部分の粘膜の状態を直接確認できますので、必要に応じてにおいの検査や治療も行います。 内服薬による治療以外にも、鼻の吸入や洗浄、手術、アレルギーの体質改善など各種の治療法がありますので、鼻炎の状態に応じてどのような治療法がもっとも効果的か耳鼻科のかかりつけの先生とよく相談してください。急性の鼻風邪ではなさそうですので、少し根気強い治療が必要となるように思われます。 乳がんが鼻に転移する頻度は低いため過度に心配する必要はありませんが、頭痛やしびれなどの他の神経症状が出たり、鼻からのどにかけての痛みや違和感、首のはれ、鼻血の持続などがあれは、外科、耳鼻咽喉(いんこう)科、脳神経外科等で皿液検査以外の精密検査も必要となってきます。このような症状があれば、まず手術を受けた外科の主治医の先生に相談してみてください。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |
1997年 | イヤー・ケア・グッズの被害調査 | |||
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2月にイヤー・ケア・グッズの被害調査の結果が通産省製品評価技術センターから出ました。この製品は15センチの円錐形の筒の中に蝋(ろう)が入っていて、円錐筒の広い口の方に火をつけて、口の小さい方を耳に差し込むというものです。「耳垢が大量に取れる」という噂がたち、爆発的に全国に広まりました。同時に被害も続出しました。 「耳が塞がった感じ、かゆい、聞こえにくなった」などが訴えです。診察した結果は、外耳道の中に「ロウがこびりついていた、けがをしていた、火傷をしていた、アレルギーを起こした」など様々な 状態でした。 この噂の商品に真っ先に飛びついたのが若い女性でした。噂を聞いて商品を手に入れ、仲間で集まって「イヤー・ケア・グッズごっこする」がトレンディーだったようです。 流行は終わったようですが、この種の民間療法は根拠の無いことが殆どです。気をつけましょう。 |
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1996年9月 | 耳なり | |||
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耳鳴りは実に不快なものです。音は,鼓膜,中耳,内耳,聴神経を通って大脳で音として認知されます。この音の伝わる道筋とその周囲の血管,筋肉,骨の異常や,鼻の異常(耳は耳管で鼻の奥とつながっています)によって,耳鳴りを感じることになります。 耳鳴りを診断する上で基本となるのが聴力検査です。聴力障害を伴いそれに見合う耳鳴りがあれば原因の推定が可能です。聴神経にはバランス感覚を感じる機能もあるので,めまいの合併があれば内耳,聴神経の異常を疑います。また,頭痛,視力障害,しびれなどの他の脳神経症状の合併があれば脳内の異常を疑います。検査で原因が特定できれば,それに対する治療を行うことになります。 しかし,最も多いのが無難聴性耳鳴と呼ばれる,聴力に異常がなく他の神経症状もない耳鳴りです。最近の研究では,内耳細胞の中でも一般の検査で測定できない高い周波数を感じる部分の障害や,神経の異常放電によるものも報告されています。しかし,精神的なストレスに伴う一時的なものもあり,原因となる障害部位を特定できない場合も少なくありません。 今回は,特に慢性の無難聴性耳鳴の治療につい述べてみます。 一般的にはまずビタミン剤や脳代謝や循環の改善剤などの神経を活性化する薬剤と,筋緊張の緩和剤,精神安定剤などの薬物治療が試みられます。その他に中耳の換気の改善を計る耳管通気,ソフトレ−ザ−,神経ブロックなどによる内耳の血流改善,局所麻酔薬の注射,耳鳴りと類似の音を聞くことにより耳鳴りをマスクしてしまう装置(耳鳴マスカ−),自律神経訓練,東洋医学的治療と様々なものがあります。 残念ながら無難聴性耳鳴の中にも様々な原因があることから,どの治療も試みながら効果をみていくという方法にならざるをえません。この病気は自覚的なものであることから,様々な民間療法が伝えられるところでもありますが,民間療法の中に科学的な裏付けが得られて一般化した治療法はありません。ストレスを避ける生活を心がけた上で,耳鳴りが日常生活に及ぼす支障度に応じて,かかりつけの先生と治療法についてよく相談することが必要です。 |
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1994年9月 | 小児の中耳炎 | |||
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「中耳炎は耳の穴(外耳道)からぱい菌が入て起こる」と思っている方が多いと思いますが、実はほとんどの中耳炎は鼻の奥と中耳をつなぐ耳管(じかん)という管の機能異常が原因で起こります。特に急性中耳炎の大部分は、鼻かぜの細菌が耳管を通って中耳に入ることにより発症します。軽度の場合には鼓膜が充血する程度ですみますが、多くは中耳の中の膿(うみ)が充満して鼓膜が緊張することによって強い痛みが生じます。このような時には「鼓膜切開」といって鼓膜に穴を開けて膿を吸い出すことによって痛みは消矢します。特に鼓膜のはれが強い場合には鼓膜が膿に押されて裂け、耳だれが出ることになります。
子供は免疫力が十分でないためにかぜをひきやすく、へんとうせんや鼻の奥にあるアデノイドも炎症を起こしやすくなっています。また耳管自体も短く、耳に対して水平に位置しているために鼻の炎症が容易に中耳に伝わり、中耳炎になりやすいのです。特にちくのう症やアレルギー,性鼻炎、へんとう炎、アデノイド増殖症などで鼻、のどに慢性炎症があると、かぜをひくたびに急性中耳炎を繰り返す反復性中耳炎になりやすくなります。また、耳管の機能が慢性的に低下し、中耳の換気がうまくいかす、細菌の毒素や炎症産物が刺激となって中耳に水がたまる滲出性(しんしゅつせい)中耳炎も子供に多く見られます。この中耳炎では軽度の難聴が続くものの、小児の場合は自覚症状に乏しいため、家族も見過ごしやすく心身の発育に悪影響を及ぼすことにもなります。一時的に中耳に膿がたまっているからといってことさら神経質になることはありませんが、難聴が続いたり、鼓膜に変形をきたすような場合は、中耳に空気を入れる耳管通気、鼓膜切開、鼓膜チューブ留置術などの治療が必要になります。中耳炎が慢性化していくと、難聴や耳だれの続く慢性穿孔性(せんこうせい)中耳炎、癒着性中耳炎や時には骨破壊を伴う真珠瞳性(しんじゅしゅせい)中耳炎になるこ ともあり注意が必要です。
かぜをひいた後に鼻炎がなかなか治らない時や、音への反応が鈍いと思われた時は耳鼻咽喉科で耳、鼻、のどに慢性的な炎症がないかどうかを確認してもらうことが望まれます。 |
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松山耳鼻咽喉科会 |