2006 蒲谷敏彦CHINA REPOR 
蒲谷敏彦
(ぶたに・としひこ)

 今年4月から3度目の海外勤務。中国蘇州に赴任したビシネスマンの中国レポート。駐在員ならではの現地レポート。
松山では、MPRO、シンシアに乗るヨットマン



蘇州 Map


中国 Map


 

  第5回:CHINA REPORT ('06年5月号)
        ―― これが中国 (国内旅行) だ! (前編) ――

 大型連休も最後の日になりました。こちら中国も4月29日から5月7日まで労働(五・一)節でメーデー・ホリデーとか黄金周とかいって、国を挙げての大型休暇です。中国全土で3億2千万人!が里帰りや旅行で移動したそうです。

 当社工員の銭さんは4月の初旬に2週間のお休みを取りました。生産部長の話では、雲南省昆明の奥地におじさんの紹介で少数民族の女性とお見合いをしに行ったのですが、そこまで行くのに汽車で3日それからバスで1日、お見合いだけで7日くらいかかるんだそうです。そのあと彼女を連れて帰るまでに村総出のお祭りのような宴会(結婚式)があったのかなかったのか・・・ 銭さんは未だ帰ってきません。


     

          麗江でも上演された高倉健さんの映画

 村総出の宴会といえば、高倉健さん主演の中国映画『千里走単騎(単騎千里を走る)』で雲南省麗江の奥地の村で石畳の街路に机を並べて村総出の宴会をする場面があります。この映画は長い間仲違いをしていた日本人親子(高倉健さんが父親、息子は中井貴一)の歯がゆいような和解を主題にしながら、高倉健さんが息子のために会いに行く、刑務所に入れられた仮面劇俳優の中国人の父親と遠くの村に預けられたその息子の愛情を絡めた秀作です。


           
                麗江旧市街の石畳

 またまたご無沙汰してしまいました。凹んでいたわけではありませんが、ずいぶんワープロを休ませてしまいました。日本のゴールデンウィーク皆様いかがお過ごしでしたでしょうか? 私は蘇州勤務になって早1年あまり、昨年は駐在早々反日デモがあったり慣れない中国の生活に戸惑ったり、いろいろ凹んでいたりでまともな中国旅行も出来ませんでした。そこで、今回は思い切って銭さんがお見合いをした、高倉健さんも訪れた雲南省の麗江〜大理〜昆明5泊6日の旅に出ることにしました。

 昆明は『四時如春』と昔から云われる常春の街だそうですが、麗江は後ろに5596mの玉龍雪山を控える高地(標高2400m)です。5月初旬いったいどんな服装で行けばいいのか? ずいぶん悩んだのですが・・・ 上海の旅行会社は飛行機のチケットとホテル、通訳と現地ガイド、移動用の車と運転手を手配してくれて、旅行初日は標高1900mの昆明泊まりの日程を組んでくれたのですが、私の希望で初日から直接麗江に乗り込むことにしました。昆明1泊、それは服装以前に深い意味があったのでした。

 

タイ族のエンさんと納西族衣装の陽さん(実は漢族)


 麗江空港は田舎の小さな空港です。私の持論では出発と到着が1階と2階(またはそれ以上)に分かれているかどうかで、空港の規模(意気込み)が違うと考えています。麗江はそういう意味でも1階建ての小さな空港です。ターンテーブルに出てきた荷物を受け取って空港の外に出ると、通訳のエン(正の下に与える、右におおざと。日本には無い字ですが中国でも大変珍しい姓だそうです。)さんと納西(ナシ)族の民族衣装を着た楊さんが待っていました。


上海や蘇州に1年も居ると、ここが中国だという思いが薄らいできます。何をもってここが中国というべきか? 中華料理? 中国語? 人民服!?(もう人民服着た人をみることは稀になりましたし、チャイナドレスはレストランとカラオケだけです) 中国人? いったい中国人って何? 中華人民共和国は多民族国家で、中国人といっても大多数を占める漢族と55の少数民族からなります。雲南省にはその内、20以上の少数民族が暮らしており中国の中で最も民族が多様な省となっています。


 日本語通訳兼ガイドのエンさんは茶色のとっくりセーターに黒のコートを着ている目の大きいお嬢さんでJICAに勤めています。タイ族出身で何かにつけて雲南省でもミャンマー国境に近い故郷の西双版納(シーサンバンナ)の自慢(野生の象がいるとか)をします。現地(麗江の)ガイドの楊さんは納西族の紅い胸当てに白い襷掛けの綺麗な民族衣装の上に黄色のダウンコートを引っ掛けていますが、実はハルピン出身の漢族小姐です。お父さんが軍人で転勤で16歳のときこちらに来たそうです。

 

 中国製ボックスカーの運転手をしてくれるのは正真正銘の納西族の和(納西族に多い姓だそう)さんで、赤銅色に焼けた肌に深い皺、人懐っこい笑顔は昔の日本人を思い出させます。通訳と現地ガイドと旅行者二人を乗せた車は長江の支流を下に見ながら山岳地帯の曲がりくねった道を行きます。和さんは柔和な顔に似合わず、前の車を見ると抜かなくては気が済まない性格のようでクラクションを鳴らしながら反対車線を走ってゆきます。

       

                 膨らんだ『どん兵衛』

 変な浮遊感があります。天に近いからでしょうか? 4星ホテルに着いても自分でも足元がふらついているのが分かります。エンさんが車の中で体調は大丈夫ですか? と問われていたのはこのことでしょうか? 上海の旅行会社が昆明で高度順応のために1泊させようとしたのはこのためでしょうか? 和さんが運転する車がガソリン臭かっただけでも、荒っぽい運転のせいだけでもなさそうです。

 

 高山病(低酸素症)は体力、年齢、山の経験に関係なく標高2000mからでも起こるらしいのです。初期症状は頭痛、睡眠不足(寝られない)、食欲不振、放屁? 吐き気、胸の圧迫感などだそうです。そう思えばそう思えてくるもので、ホテルのレストランで食べた中程度の中華の夕食も全く美味しくないし、高山病には水分を取ることが大切だと本に書いてあったので、昆明産のビールを2本飲んだところ、ベッドの上で妙な酔い方になってきました。高山病には喫煙と飲酒は最悪だと後で聞きました。

 

 中華に飽きたら食べようと持ってきた『赤い狐と緑の狸』のカップめんのふたが低気圧のためにパンパンに膨らんでいます。私の体の細胞も同じように膨らんでいるんでしょうか? ヒェー!

 あまり気分が優れないし明日は6時起きで玉龍雪山登山(標高4500mコースと3800mコースの選択肢があったのですが、迷った挙句無難な3800mにしました)だそうなので、もう寝ます。

 

                    麗江より 蒲谷敏彦でした。


第6回:

 
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