2006 蒲谷敏彦CHINA REPOR 
蒲谷敏彦
(ぶたに・としひこ)

 今年4月から3度目の海外勤務。中国蘇州に赴任したビシネスマンの中国レポート。駐在員ならではの現地レポート。
松山では、MPRO、シンシアに乗るヨットマン



蘇州 Map


中国 Map


 

  CHINA REPORT (6月号)
―― もうひとつのドイツ戦 ――

 ドイツがコスタリカに4−2で快勝した翌日、正確には同じ日の朝なんだけど、久しぶりの二日酔いで今日は一日ベッドの上で過ごしたいと思っていました・・・が、9時過ぎに無理やりまだふらつく体で太陽の光がやけにまぶしい集合場所のスターバックスの前に行きました。なにしろ昨夜、正確にはつい先ほどまで白と赤のちゃんぽんで中国カラオケ屋内の画面でドイツW杯の初戦を観ていたのです。白と赤といっても赤は中国製の葡萄酒ですが、白は中国製の白酒(バイジュ。決して甘酒ではありません。50度もある中国焼酎です。)をコップであおっていたので胃の中と頭の中をピンクの渦が廻っているような状態でした。


 さて、太湖は琵琶湖の3倍以上の面積を持つ中国3番目の湖です。江蘇省と浙江省にまたがる東西約60Km、南北約45Kmもある文字通り大湖です。その蘇州市側の畔に会員制のマリーナがあり、今日はそこでドラゴンボートレースが開催されるというので何が何でも行かねばならないと、マリーナ専属のバスに揺られて小一時間、よく吐かなかった(失礼)と自分を褒めてあげたい気持ちでマリーナに着くと、そこは中国とは思えない別世界。外人だらけ(西洋人の)のリゾート地でした。


    

もちろん中国人も居るんですが、日頃見慣れているような人々とはどうも違う、お金持ちの匂いがプンプンしています。ベンツやBMWの高級車が所狭しとクラブハウスの駐車場に並べられて、室内プールでは金髪の子供が泳いでいたりします。もちろん、マリーナですから浮き桟橋が太湖の少し茶色い水に浮いています。大型モーターボートやハウスボートがいくつも係留されています。クルーザー(ヨット)が無いのが残念ですが、陸置きでホビーキャットなどのディンギーが何隻かあったりします。ウィンドサーフィンもあるそうな。ヨットのキールが着くくらい水深が浅いんでしょうね。ディンギーのマストには琵琶湖で見たことがある完沈防止用の浮が付いていました。

韓国駐在時代に行った釜山の国営ヨットハーバーより規模は小さいのですが、ずいぶん豪華です。マーキュリーという米国の船のエンジン会社がありますが、その系列会社が経営している私営マリーナで、会員はBOSCHやSIEMENCEなどの欧米企業が多いようです。なので、所有のハウスボートには白地に赤い十字(イングランドかあ?)やオーストラリア国旗や昨夜のW杯で盛り上がったドイツ国旗を腰に巻いたお兄さんが昼飯のドイツ風ハンバーガー(ソーセージの太いのが入って50元)を食べてる図になっています。こんなにドイツ語を聞くのも久しぶり?だなあ。ここはもうすっかりドイツW杯気分。


肝心のドラゴンボートは陸のスロープ横に20隻ばかり置かれていますが、一向に出走する様子はありません。いつぞやの釜山アジア大会(KOREA REPORT 2002年10月号)のように風待ちでもあるまいにと思っているうちにまたまた眠たくなって芝生の上で一眠りしました。

 

湖からの風が心地いいんですが、二日酔いの体には日差しが強すぎます。それにしてもきっとW杯テレビ観戦で昨夜(正確には今朝ですが)さぞや大騒ぎしたであろうドイツ人たちはなんであんなに元気なのか? ドイツ人も日本人に似て寡黙だというイメージが見事に崩れていくような・・・ ドイツ語も中国語や韓国語と同様に分からなくてもうるさい。

 

そろそろ待ちに待ったボートレースが始まるようなので、ハーバーを取り巻く防波堤を歩いてレース海面が見えるところに陣取ると、スタートラインはハーバー内のハウスボートと防波堤の間にロープを張って号砲一発とともにそのロープを下ろすという昔の競馬のような出走です。ドラゴンボートは全長6m足らずの何の変哲もない(といっても船首には龍の頭の飾り物、船尾にも龍の尻尾の飾り物、凝ったチームは龍の足4本を陸に置いていました)木製のボートに7人が乗って赤や青のパドルで漕ぎます。

 


 

7人のうち一人は太鼓を叩いて音頭を取る役目なので漕ぎ手は正式には6人です。その6人のうち一人は船の後部に座って操舵手の役目もします。といってもこのドラゴンボートには舵はないので、自分のパドルを使って右側を漕いだり左側を漕いだり、パドルを舵のように水の中で動かしたり、時には進行方向と逆に漕いでブレーキをかけたりします。


どうもこの辺が素人と玄人のドラゴンボートの違いのようで、毎年この大会に出走している企業グループのエース艇は力強く真っ直ぐに進みますが、今年初めて出てくる俄仕立ての船は練習不足がたたって、スタートラインに着くのも至難の業です。3〜4隻がスタートラインに真っ直ぐ並ぶまで観客も気長に待ちます。

 

やっとスタートしたと思ったら、航路妨害も接触もなんのその(というより自分の船をコントロールできないんだろうなあ)、押し合いへしあいでハーバーの出口に向かい、沖の黄色いブイ2つを廻ってまたハーバー内に帰ってきてスタートしたところがフィニッシュです。早い船は10分を切って帰ってくる変則トライアングル・コースです。赤や黄色や青の頭のドラゴンボートが太鼓の音も賑やかに赤や青のパドルで前に進むのですが、ヨットでもないのにジグザグに航く船が続出です。

 

『ワン、ツー、ワン、ツー』

『イー、アール、イー、アール』

の漕ぎ手の掛け声に岸壁から

『加油(ジャーヨー 中国語でがんばれ) 加油!!』

の応援がかかります。

単純なレースですが、単純だから結構盛り上がって面白い。

 

 

4隻がスタートしてそのまま押し合ったままハーバー出口の岸壁に激突して龍の頭が取れた・・・ 操舵手があんまり下手なので途中で交代しようとして船が沈没しそうになった・・・ スタート直後にハーバー出口ではなく浮き桟橋の奥のほうに向かってしまって棄権する船がでた・・・ フィニッシュラインにもう少しなのになかなか船首をラインに向けられなくて(ラインに並行のまま)いつまでもゴールできなかったり・・・ まあ楽しませてくれます。

 

メンズ6レース、ウィメンズ2レースが行われBOSCHやSIEMENCEやMOLLERの外国企業チームに混じって参加した、蘇州大学龍舟部が男女とも上位で明日のセミファイナルへ進むことになりました。まあ、さすが体育会系のノリで統率されたパドルさばきに太鼓と掛け声もいかにも王者の貫禄でした。中国の面目を保ったというところでしょうか。

 

ところで、蘇州に進出している日系企業は500社を超えたというのに日本人がほとんど居ません。日本人留学生らしき若者と家内の知り合いの奥さまが蘇州外国人倶楽部のメンバーとして、オーストラリア人とアメリカ人とイギリス人とでチームを組んで参加しただけでした。どうも日本人のお父さんは遊び方が違うようで身内でゴルフが多いみたい。家族でマリーナに来るのにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

盆踊りもボートレースも踊る阿呆に見る阿呆で、どうせ阿呆なら出走しないとこの面白さはつまらない。と船を見ると乗りたい病がぶり返してきます。帰りのバスの中でドイツ人たちが楽しそうにレースの自慢をしているのを聞くにつけ、来年はBOSCHやSIEMENCEや蘇州大学相手に漕いでみようかと二日酔いと日焼けでまたまたぐたぐたになった頭で思うのでした。

 

それで高山病でぐたぐたになって3800m登山に挑戦した雲南の旅はどうしたんだ! お叱りの声が聞こえてきそうですが・・・ 今日も疲れたのでもう寝ます。

 

                    太湖より 蒲谷敏彦でした。


第7回:

 
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